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渋谷北斎、これが裸眼没入体験か
先日、渋谷で開催中の
「渋谷 北斎アナザーストーリー HOKUSAI : ANOTHER STORY in TOKYO」
(公式サイト:hokusai.anotherstory.world)を体験してきました。最先端技術で再構築された葛飾北斎の世界に、五感でダイレクトに触れるという新しい体験は、私にとって忘れがたい感動でした。
目次
1. イマーシブ体験への認識
2. XR技術との関わりとその魅力
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わりと近いかもしれない。
1. イマーシブ体験への認識
昨今、モネやミュシャの企画展、映画館の4DXシアター、そしてチームラボなど、さまざまなイマーシブ体験が登場しています。どれも単に視覚や聴覚で楽しむだけでなく、身体全体で刺激を受けることを狙っています。渋谷北斎もその一例で、以下のような要素が融合することで、参加者に深い没入感を与えていました。
映像
シブホクでは、正面・左右・床の4面にプロジェクターが配置され、映像が切り替わるたびに、まるで北斎の世界へと引き込まれる感覚を味わえました。裸眼で見る映像が薄く感じられることなく、色彩豊かで美しい映像表現が、現実と非現実の境界を曖昧にし、強い没入感を生み出しています。
音響
立体音響が採用され、音の位置が絶えず変化するため、まるで森の中で鳥のさえずりや川のせせらぎを感じているかのようでした。固定された音源ではなく、映像と連動して動く音響が、体験全体にリアリティをプラスしてくれました。
光
照明面では、室内照明やスポットライト、液晶パネルの照度が、映像とのバランスを丁寧に調整。特に、壁や床がほぼ真っ黒に統一されているため、映像の明るさが際立ち、現実感が薄れて非現実感が強調されました。
風
北斎の作品に見られる強風の描写に合わせ、風の演出も行われていました。ただ、送風機が目に入りやすかったため、「ここから風が吹いているのだ」と設備が想起され、映像から受ける感動がやや薄れる印象もありました。もし、送風機がもっと隠され、自然な風が感じられる演出になっていれば、さらに効果的だったかもしれません。
振動
今回の体験で最も印象的だったのは、床に仕込まれた接触センサーと振動装置による振動演出です。映像と連動して床が微妙に揺れる仕組みは、たとえば映像上で蟹が動いたときに足元でその振動を感じるなど、参加者が自らの動作で体験に影響を与える「能動的な没入感」を実現していました。この仕組みこそが、ただ鑑賞するだけの体験とは一線を画す大きな魅力だと感じました。
2. XR技術との関わりとその魅力
今回の渋谷北斎の体験は、単に最新技術を駆使した映像や音響の演出に留まらず、参加者が自らの行動で直接体験に影響を与える点が新鮮でした。床のセンサーが映像と100%リンクしている仕組みは、自分が映像の一部になっているという実感を与え、より深い没入感を生み出しています。
こうした「能動的な参加感」は、コンテンツの豪華さや知名度だけでは得られない、心に響く体験そのものです。XR(拡張現実)技術がもたらす新しい表現方法に触れ、今後もさまざまなイマーシブ体験にチャレンジしてみたいと強く感じました。
まとめ
渋谷北斎のイベントは、伝統的な芸術と最新技術が融合した、全く新しい体験の形を提示してくれました。映像、音響、光、風、そして振動といった五感に働きかける演出が、参加者に「自分が北斎の世界の一部だ」と感じさせる、特別な没入体験を生み出していました。
今後も、このような「能動的な没入体験」が芸術とテクノロジーの新たな可能性を切り拓く鍵となるのではないかと思います。ぜひ、皆さんも自分の五感でこの新しい体験に触れてみてください。
レッツイマーシブ!
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各1台ずつ配置されたプロジェクター
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「ああ、風を受けるのはこの部屋か」と設備から想像してしまって映像から受ける感動がちょっと薄れた
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足裏で水の中を歩くような感覚を覚える
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踏むと慌てた様子で逃げていく