命中率と「標準的な負け方」理論
特に長年マニュアル対戦をしてきた古参勢に多い「命中率至上主義」。ガッツを溜めて、命中率が高い技で堅実に戦うのが一番勝率が高いという考え方です。しかし、私が執筆した「MF2バトルマニア」では、この考え方に明確にNOを唱えています。
「バトルマニア」では全38種族、すべての技においてコスト、火力、命中率、モーション時間などを多角的に考察して「評価値」を算出し、評価値の高い技で戦うのが最も勝率が高くなると解説しています。
誤解がないようにおことわりしておくと、命中率が高い技を主力にすることを否定しているわけではないんですよ。そもそも「命中率が高い技」と「評価値が高い技」が一致しているのが理想で、その場合はその技を主力に戦って問題ないんです。しかし実際は「命中率が高い技」と「評価値が高い技」が必ずしもイコールではない種族が多いです。その場合でも、命中率が高い技を順調に当てているだけで順当に勝てるような有利対面であれば、無理をする必要はありません。
有利対面に見える組み合わせでも、相手が評価値の高い技を主力にしていれば、その有利が逆転するというケースも往々にしてありえます。よって順当に行けば競り負ける可能性が高い不利対面でこそ、命中率にこだわらず評価値やリード率を重視すべきであると言えます。すなわち、命中率が低い技であっても評価値が高いなら、その技を主力にすべきです。
このように言うと、必ず次のような反論が来ることが予想されます。
「いや、安定しなくなるやん」
「事故率上がるやん」
「攻撃が当たらないと勝てんやん」
まぁ、そうですね。攻撃が1回も当たらず、ボコボコに大敗する確率は、確かに上がると思われます。しかし勘違いしてはならないのは、「安定している」ことと「勝率が高い」ことはイコールではないということです。例として、シロモッチーとパニッシャーが対面したとして、どのような試合展開になるかを予想してみます。
ガッチャーと突きの火力は同等ですが、手数に差がありすぎます。どちらも確率どおりにヒットするなら、パニッシャーは残り15秒までにシロモッチーの倍近いダメージを与え、終盤戦ではこの差はさらに開くことが予想されます。ガッチャーと突きで打ち合った場合、シロモッチー側の命中率がかなり上触れし、なおかつパニッシャー側の命中率がかなり下振れしなければ、シロモッチーが勝つのは難しいと思います。「安定」はしていても、勝つことはできないというわけです。このように「順当に競り負ける」ことを、古参のかいとうプリンさんは「標準的な負け方」と表現しています。
では次に、評価値最高の「もっさま」を初手から打っていった場合はどうか、考えていきます。
もっさまの火力はガッチャーの3倍以上です。つまり、命中すればガッチャー3発分以上のリターンがあります。早い時間帯に当てることができれば、そこから2発目のもっさまに繋げることもできるし、その時点でパニッシャーの突きの命中率が悪くて大きくリードしているなら、そこで改めてガッチャーやモッチ砲などの命中率重視にシフトしても良いわけです。ガッチャー主力で打ち合うよりは、確実に勝機があると言えます。
もちろん、もっさまの命中率はガッチャーより29ポイントも低く、35%前後になることから、命中率が下振れすれば一度も攻撃が当たらず、大敗することは多くなるでしょう。しかし命中率重視でガッチャー主力にしたところで大抵は「標準的な負け方」になるわけですから、大敗することを恐れず、評価値重視でもっさま主力にした方が、最終的に勝てる確率は高くなると言えます。
繰り返しますが、命中率重視の戦術を否定しているのではありません。不利対面にもかかわらず戦術を変えずに「安定」「堅実」にこだわって「標準的な負け方」になるのが最もくだらないという話です。「堅実に」2勝8敗や3勝7敗になるよりも、大敗しながらでも4勝6敗や5勝5敗、運次第で勝ち越しさえ狙える方がはるかに価値があることだと、私は考えています。