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夜道の探し物
3月の終わり、久しぶりに会う友人との楽しい食事のあと。
最寄りの駅近くの駐車場に停めていた車に乗り込んで感じた違和感。
右耳のイヤリングがない。
その日あった友人が以前誕生日プレゼントにとくれたもので、うきうきした気持ちでつけて行ったのに、どこでゆるんでしまったのか。
慌てて車の中、周辺を探してみるも見当たらず。
すでに陽は落ちて暗く、最寄りの駅に戻ったところでその間に落ちたかどうかもわからない。
「探しに行く?」
と提案してくれた母と姉を待たせることへの罪悪感と夜道に弱気になって一度は諦めようとした。けど。
「やっぱり探しに行ってもいい?」
と諦めきれない心に正直に頼むと、二人とも快く受け入れてくれて、姉は一緒に探すと車を降りてくれて。
スマホのライトで照らしながら地面を見て駅までの道を戻る。
見つかったらいいな。無事だったらいいな。
歩き始めて程なく、キラリと光る何かを見て駆け寄ると、確かに自分のイヤリングの片割れで。
「あった!」
と思わず声を上げると駆け寄って来てくれる姉。
人通りが少なかったのか、どのパーツもそのまま、イヤリングは無事に手元に帰って来てくれた。
ああ、まだこの子と人生を歩んでいいんだなって、
少々大袈裟だけど、そんな風に思った。
物ともきっと縁みたいなものがあって、私にとってまだ必要なものは必ず手元に帰ってきてくれるのかなと、そんな風に思った。
諦めなくてよかった。
以前より心なしか輝いて見えるイヤリング。
これからも私の隣で、きっといろんな世界を見る。
えりぴ
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