2024年読んだ本ベスト15
2024年もたくさんの良い本に出会えた。エンタメ小説を読んで興奮し、純文学を読んでしばらくしみじみした。フィクションを読んで自分を知り、人文書を読んで新たな視座を得た。
私が2024年に読んだ本は69冊。内容は2024年読書ログにまとめています。そのうち特に面白かった本、周りにお勧めしたい本をここに書いておきます。順番は私が読んだ順。トップの写真はもうこれ以上入らない本棚。
小説
九段理江『東京都同情塔』
ザハ・ハディドの国立競技場が完成し、東京オリンピックが行われ、寛容論が浸透した世界線の東京。建築家の主人公が、時代の変化による価値観の変化や生成AI的正しさに葛藤する。言葉への圧倒的な執着に震えた。九段理江のインタビューがあれば読む(見る)ようになった。
オクテイヴィア・E・バトラー『キンドレッド』
奴隷制時代のアメリカ南部にタイムスリップしてしまう黒人女性という鬼設定。目を覆いたくなるけど一気に読んでしまう。当時彼らが死に勝る苦しみを受け続けていたのは事実で、またひとつ視座を持つきっかけになる小説だった。
間宮改衣『ここはすべての夜明けまえ』
2123年の日本。山奥にひとりで暮らす女性による家族史という形で書かれた平仮名ばかりの不思議な文章から、凄惨な生い立ちや100年前に受けた「融合」手術によって不老不死になった事実が判明する。家族とは、人間としての生とは。ラストの彼女の決断に泣いた。
ジョセフィン・テイ『時の娘』
イギリスでは悪人代表として知られ、シェイクスピアにも登場するリチャード3世は本当に悪人だったのか、足を怪我してベッドから出られない刑事が文献を当たって調べ始める、安楽椅子歴史考察ミステリー。1951年発表なのが信じられないくらい面白くて一気読み。
セバスチャン・ジャプリゾ『シンデレラの罠』
火事で顔を焼かれ、皮膚移植をして一命を取り留めたが記憶喪失。一緒にいた友人は死亡。大金持ちの伯母から遺産相続するのは本当に自分なのか、友人と入れ替わっているのか。 主人公が被害者であり犯人であり探偵でもあるという巧みすぎる設定の名作ミステリー。
新川帆立『女の国会』
2024年のエンタメ本ベスト。「自分以外全員敵」の永田町で人たらし達が繰り広げる巧みな交渉と切った張ったの応酬がめちゃくちゃスリリングで息つく間もなく読んだし、三者三様のやり方で男社会を生き抜く、タフでしなやかで根性の座った女たちからは強いエンパワメントを感じた。
乗代雄介『旅する練習』
サッカー少女と小説家の叔父が鹿島アントラーズの本拠地まで徒歩で旅するコロナ禍の数日間。乗代雄介は私の好みのど真ん中なので何を読んでもベスト本に入ってしまう。人が誰かを思うあたたかさが、控えめな眼差しが、違う地平線の私も救ってくれる気がする。
松永K三蔵『バリ山行』
芥川賞受賞ということで読んでみたらハマった。全ての組織人に読んでほしい。誰も自分の代わりに死んでくれるわけじゃないから、自分の人生は自分ひとりの責任で選び取っていきたいと思った。今日もどこかで妻鹿さんがバリをやっている。そう思えるだけで少し光が差す気がする。
野﨑まど『小説』
小説現代で新作掲載と知って慌てて読んだ。昔から「そんなに本読んでどうするの」と言われ続けた、自分でも後ろめたさを感じていた自分が、この一冊で突然救われた。内輪の慰めあいではなく、現実の「読者」「受け取る人」を肯定してくれる小説。何でか分からんけどめっちゃ泣いた。
小野不由美『図南の翼』
友人に勧められて、10月から十二国記を読み始めた。ファンタジー小説は得意じゃないから不安だったけど、文章がうますぎてすぐにハマって、既刊15冊のうち11冊を読んでしまった。なかでも図南の翼は今のところの最高傑作ではと思っています。みんな、十二国記を読んで!
松岡圭祐『シャーロックホームズ対伊藤博文』
松岡圭祐『シャーロックホームズ対伊藤博文』 嘘みたいにおもしろかった。ライベンバッハの滝のシーンから始まり、その後死を装ったホームズは昔の命の恩人である伊藤博文のいる日本に行き、今度はワトソンじゃなくて伊藤博文とダッグを組み、なんとあの大津事件の真相に迫る…
人文書
ダレン・マクガーヴェイ『ポバティー・サファリ』
ブレイディみかこが勧めてたので読んだUKラッパーのエッセイ。貧困層の暮らしを知った気になってもサファリパークで動物を見てるのと同じという、エッジ効きまくりのタイトル。貧困問題、今や海の向こうの話ではない。
森功『地面師』
ネトフリドラマの前に読んだので倍面白かった。誰もが羨む財産なんて持つもんやない。ちょっと目を離したら悪いもんが湧く。
柴崎友香『あらゆることは今起こる』
小説家によるADHD体験。これまで当事者としてここまで言葉を尽くした人っていなかったんじゃないか。言葉にするほどかどうか分からないしそもそも人と違うかどうかも分からない感覚が言語化されていたことで、それが「ある」ことに気づいた。
三宅香帆『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』
2024年の人文書といえばこの本。前半のサラリーマンと読書の歴史も丁寧でおもしろく読んだし、後半のギアの上がり方も好きだった。あれから私は三宅香帆が本を買いまくる動画を見続けています。
以上!15冊も挙げてしまったけど、他にも面白い本がたくさんあって、苦労して選んだ。次点としてはボニー・ガルマス『化学の授業をはじめます。』や白井智之『エレファントヘッド』もすごく面白かった。2025年もたくさん読みたいし、たくさん本の話をしたい。