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「続ける」ことは「成功を目指さない」こと

『ネット小説』という存在を知ったのは、30代後半だった。
そこから私は幼い頃のように時間を忘れて『ネット小説』の沼へと潜り込んでいった。
毎日のように、多くの人たちが、たくさんの物語を投稿している……なんと素晴らしい世界があるのだろう。しかも無料で読めるなんて……と、神様に感謝する日々を過ごした。

しかし、そんな幸せな日々も長くは続かない。
こんなにも多くの物語に囲まれて幸せだったはずの私は、与えられるものに満足できなくなってしまったのだ。
「私なら主人公をこんな風にさせない!」
「私ならこんな展開にしない!」
「私なら……」
もちろん作者様に要望をぶつけることはしなかったけれど、飽食(?)の時間は私を我儘にしてしまったようだ。

四十路になる数ヶ月前、暇を持て余した私はふと「小説を書いてみようかな」などと思い付いてしまった。
今考えるとまさにこれが「地獄の始まり」ではあったのだけど、あの時の私はただ好奇心の塊でしかなかった。
何も成し遂げられず、凡人以下の才能なし、ぼんやりと目的もなくただ生きるだけの自分が書いた物語を「小説」で読んでみたかったのだ。
この時、私の選択は「書く」か「書かない」かの二択しかなかった。
幼い頃から溺れるように物語の世界に入り込む物語中毒者だった私が、今まさに「誰も読んだことのない、しかも自分が読みたかった物語」を読める機会を与えられたとして、それが自分にしか書けないとなれば……。
結果は言わずもがな。
その日の内に「小説家になろう」で、書いた文章を投稿すること数回。
初めて書いた小説なぞ誰も読まないだろうと思いながら、読みたい欲望の赴くまま、私は脳内にある物語を吐き出し続けた。
その日、私が1日書いた文字数は8000文字ほどだったと思う。

あの時、小説を書くことを選択したのは後悔していない。
でも、もし「まわりの評価」や「書籍化」などの「成功」を目的として書き始めていたら、小説を書き続けることは難しかったと思う。

今、私が目的としているのは「自分が読みたい小説を誰よりも早く読む」ことだ。
書き続けることが辛くなる時もあるけれど、それでも物語の世界に飛び込むことは、どうしてもやめられない。
あの時は小説を「書く」ことを選択した私は、今「続ける」ことを選択している。
これからも、何度も私は選択し「続ける」と思う。

#あの選択をしたから


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