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あぁ 誰にもないものを持っていたいのになあ

 自分のアイデンティティってどこにあるのかなあ。
 なんとなく生きてきてなんとなく楽しくて、今でも十分幸せだと思いつつ、なんとなく物足りない。

 歴史に残る偉人になりたいと本気で思ってるかと聞かれると、そんなに大それたことを思ってるつもりはないし、そんな風に聞かれれば恥ずかしくて否定しちゃう。
 それでも、自分に何か才能はないのかなあ、人の心を動かす何かは自分にはないのかなあと、ちょっとだけ、本気で思ってる。

 何かすごいことをやってみたいなあ、とリビングでアイス食べてスマホの中で踊っている乃木坂46を見ながら、ぼんやり思う。


「ああ誰にもないものを持っていたいのになあ」

 特に何も考えず、いつもの癖で眺めていたスマホをスクロールしたら聞こえてきた歌詞。あいみょんの「愛を知るまでは」。

 あいみょんか。高3の頃は「愛を伝えたいだとか」にハマってよく聴いてたけど、最近は数曲サビだけ知ってるくらいだな。
 それでもなんとなく気になって、まだ左手の中にある小さな機械で調べてみる。


 「愛を知るまでは」は、夢を追うと決心して走り出したけれど、終わりが見えない道の中で不安に駆られ、自信を失いそうになりながらも必死にもがいている様子を歌った曲。


 私は何者かになりたいと漠然と思っているだけで、何も行動を起こしたりはしていない。なのですごくおこがましいが、この曲を知った当時は、すごく共感できると感じてしまった。

 それからこの曲を何度も何度も聴き、調べている中で、この曲はあいみょんがデビュー1年目のもがいていた時期にデモを作っていたものだということを知った。
 等身大の自分を歌うあいみょんを知ったから、もっと他の曲を聴いてみたい、もっと共感ができて背中を押される曲があるんじゃないか、と思った。


 それからNetflixで観てみたあいみょんのライブは、2020年、さいたまスーパーアリーナで行われたもの。
 およそ2時間のライブは一瞬で終わってしまった。すべての曲の中に自分が入れた気がした。知ってる曲も知らない曲も、すべての歌詞を一言も漏らさず聴きたいと思えた。
 合間に挟まるあいみょんのトークからは、有名になってもなお、ファンに伝えようともがいていること、ファンと近くあろうと必死なこと、バンドメンバーと同じ目線であろうとすることが伝わった。歌もあいみょん自身も、ずっと等身大であり続けるんだろうと感じた。

 「愛を知るまでは」は歌っていなかった。けれど、あいみょんが有名になる前の下積み時代を歌った曲もいくつかあり、そのどれもが魅力的だった。

 ライブを観終わると、曲だけでなく、あいみょん自身を大好きになっていた。等身大の曲を作り歌うことで、少しでも聴いている人の心を動かしたいと今でも努力をし続けるあいみょんがすごくかっこよくて、ほんの少しだけ近い存在に感じることができた。
 あいみょんの曲に背中を押されながら、あいみょんを応援することで背中を押したいと思った。


 そして、その後Spotifyで聴いたあいみょんの曲は、すごくすごく良かったけれど、やっぱりライブで聴く曲は特別なんだなあと思った。
 あいみょんのライブ、絶対行こう

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