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ビートルズから考える、マネーの話

The Beatles(1962-1970)のお金にまつわる曲をリリース順に見ていったら、お金持ちの苦悩がみてとれた話。

Can't Buy Me Love(1964)

ビートルズがデビュー前から持ち曲にしていたカバー「Money(That’s What I Want)」へのアンサーソングです。

ブルース調でありながら、初期のビートルズらしくポップで爽やかなロックに歌い上げられています。

イントロがなくサビから始まる構成は当時のプロデューサーによるアイデアだそうですが、サブスク世代の現代っ子たちにも通じる1曲ではないでしょうか。

▶︎お金じゃ愛は買えない期

前作「I Want To Hold Your Hand」が発売日全英シングルチャート1位、翌月には全米で初の1位を取得。

下町の不良少年が「アイドル」になったわけです。
いつまでもMoney(That’s What I Want)、金をくれとは歌ってられません。

Can't buy me love, love
Can't buy me love

(お金で愛を買うことはできないんだ。)
Can't Buy Me Love

何度も繰り返される主題、思わず自分も歌いたくなるような気持ちのいいフレーズ。
お金よりも愛なんだと歌う姿は、まさにアイドルです。

Say you don’t need no diamond rings
And I’ll be satisfied
Tell me that you want the kind of things
That money just can’t buy

(君がダイヤの指輪なんていらないと言ってくれたら満足さ。お金で買えないものが欲しいと言ってくれ。)
Can't Buy Me Love

曲の後半になると、このように彼女にも自分と同じ価値観であることを求めるようになるのがおもしろいですね。

単なる上辺の恋愛ソングではなく、愛そのものの本質を歌っている曲だと思います。

Taxman(1966)

Taxman(税務官)を揶揄した力強いロックです。
社会風刺や皮肉めいた曲はジョンのイメージが強いですが、これはジョージによる作曲。ポールは、この曲をジョージの義憤と表現しました。

インドテイストのギターソロがたまりません。なんと、弾いているのはジョージではなくポールです。
本職のベースラインもカッコよく、ポールの天才っぷりが感じられます。

▶︎高額納税者は辛いよ期

この曲には、イギリスの政治も関係してきます。

Don’t ask me what I want it for
(Haha, Mr. Wilson)

(税金を何に使うかなんて聞いちゃダメさ。ウィルソン?笑)
Taxman


このウィルソンとは、当時の首相ハロルド・ウィルソンのことです。彼は、高額所得者の税率を一気に引き上げました。

Let me tell you how it will be
There’s one for you, nineteen for me
‘Cause I’m taxman
Yeah I’m taxman

(税金がどうなっているか教えましょう。あなたが1で私の取り分が19です。だって私は税務官、そう税務官ですから。)
Taxman

当時のイギリスでは、1ポンド=20シリング。1ポンド稼いで19シリングを納税しなければならないとなると、働くのがバカらしくなります…。

社会保障のためとはいえ、税率95%は生活に支障をきたしますね。実際、ビートルズのメンバーも会計事務所に破産寸前と言われていたようですし。

You Never Give Me Your Money(1969)

名盤「Abbey Road」のB面に収録された「ロング・ワン」と呼ばれるメドレーの1曲目。
バラード調で物悲しい雰囲気から始まり、終盤にかけてロックへと移行していき、次の曲にタスキを渡します。

▶︎正当な対価(お金)をよこせ期

マネージャーのブライアン・エプスタインが死んだ後、ポールはビートルズというチームのまとめ役でした。
そんなポールが直面していた悩みを書いた曲ではないかと思います。

You never give me your money
You only give me your funny paper

(あなたは私にお金を渡さない。あなたはただおかしな紙切れを渡してくるだけ。)
You Never Give Me Your Money

ビートルズは税金対策も考慮して1968年にアップル・コアを設立しました。
が、まあすぐに財政難に直面します(いろいろ手広くやろうとしてましたからね…)。

彼らが悪かったのか、時代が悪かったのか、他に原因があったのかはわかりませんが、ポールは当時のアップル・コア経営陣のアラン・クレインに非があると考えていました。
契約書類だけでお金が入ってこないことへの恨みが歌われています。

Out of college, money spent
See no future, pay no rent
All the money’s gone, nowhere to go
Any jobber got the sack
Monday morning, turning back

(大学中退、お金は使い果たした。お先真っ暗、家賃だって払えない。お金は空っぽ、行くあてもない。労働者はクビになる、月曜の朝は変わらずやってくる。)
You Never Give Me Your Money

この辺りはもう愚痴というかなんというか…。歌詞が重すぎて、心が痛くなります。

One sweet dream
Pick up the bags and get in the limousine
Soon we’ll be away from here
Step on the gas and wipe thattear away

(素晴らしい夢が1つ。バッグを持ってリムジンに乗り込もう。もうすぐ俺らはここからおさらばさ。アクセルを踏んで、涙を拭って。)
You Never Give Me Your Money

曲調の変化とあわせて、歌詞にも明るさがでてきます。

しかし、前向きというよりはヤケクソのようにも思えます。ビートルズの解散を示唆しているようにも聞こえます。

まとめ

ということで。

ビートルズのMoneyにまつわる曲をリリース順にたどってみました。

世間に認知されてお金が入ってくるようになった時は周囲にお金目当ての人も多く、ただ純粋に愛せる・愛をくれる人が欲しかったのかなではないでしょうか。

音楽界のトップに登り詰めた彼らに待っていたのは輝かしい栄光だけではありませんでした。

納税や資金繰り、ビートルズですらお金の問題に悩んでいたと考えるとなんだか親近感が湧いてきます(桁は全然違うのですが)。

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