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栞になった一つの出逢い

読みかけの文庫本を久々に手に取ったら、ハラリと1枚のかわいらしいメモ紙が出てきた。
私は”あの日”のことをじわじわと思い出した。

それは、出張でエチオピアに渡航する前日(或いは本来行く日だった日)のこと。その日、私は松戸駅の近くのお気に入りのカフェに来ていた。直前までビザが出るか出ないかの瀬戸際にいて心ここにあらずという状態。ここまで来たらもう出ないでくれ…という思いも少なかずあった、いや大半を占めてていた状態から解放され、コーヒーを片手に優雅な時間を過ごしていた。

1週間程前に、そういえば依頼していたビザ申請のために必要な書類が届いてないなとふと気づいた。そこから催促をし、無事にネットでE-ビザを申請したのだが、なかなか発行されず出発予定の前日を迎えてしまった。システムが正常に動かないこと(予期しないことが起きることはデフォルトなの)はエチオピアあるあるなので、そのこと自体には「まぁエチオピアだしな~」と寛大な心持ちを示していたのだが、前日になっても私のメールの受信フォルダに変化は訪れない。飛行機が夜の10時半とか遅い時間なので、当日の朝までは待てる、という状況で、上司も「午前中までに出なければ出発を遅らせましょう」というのんびりモード。スーツケースは数日前に郵送済みで、一足先に空港入りを果たしている。

どうなるの、どうなるの…。こんな状況ならもういっそのことあと1日日本にいさせて!



晴れて、ビザが出なかった。
その日はもう何もする気が起きなかったので、獲得した日本での貴重な1日(半日)でやりたいことをしよう、そしてこのフワフワとした状態に惑わされ疲弊した精神を癒そうと、お気に入りのカフェに来たのだ。

少し肌寒い日が続いていた秋の日のことだったのだが、その日は少し汗ばむ天気だった。着ていた長袖から、適当なTシャツに着替え、家を後にした。

そのカフェは2人の女性が営む小さなお店だ。コーヒーはもちろんのこと、スイーツ、そして何より毎月替わるスパイスカレーが人気で私も数回食べに来たことがある。


この日はケーキをいただき、お会計をしようとしたときに、片方の女性に「お姉さん、◯◯(アーティスト名)好きなんですか?」と声をかけられた。そう、私がたまたま適当に選んだTシャツは◯◯のライブで買ったTシャツだったのだ。ファンクラブに入ってるほど愛してやまない◯◯、ライブ一人参戦とかお手のものだったので、まさかのその店員さんも大好きとのことで、とっても盛り上がってしまった!

最近どのライブ行きましたか?
いつから好きなんですか??
次のライブ参戦予定ありますか???

これまで、同じくらいの熱量の人が周りにいなかったので、それはもう弾けるほどに嬉しかったのです!松戸にお友達ができた…♪そんな気持ち。

それから何回かこのカフェに来ては、そのアーティストの話をしていた私たち。発覚したその日に、「今度好きな曲リスト作ってきます!」と言われたので、まず私が作って渡し、その次会った時に、彼女の好きな曲が書かれたメモを渡してくれたのだ。その日はお客さんが多く忙しいようだったので、サッとテーブルまで来て渡してくれて、まるでラブレターの交換でもしているかのようだった。(笑)

それが、栞代わりになってたかわいいメモ紙。

同じものを大好きな人が近所にいて、その素晴らしさを共有できる、感情をわかってもらえる
そんな些細な幸せが、この上なく幸せなのです。

〜君という素敵な生き物の、素敵さが
今2回出た素敵はわざとだからね

あ、これは違うアーティストだよ!笑


今朝、その読みかけの本を読み終えて、そのメモも役割を一旦果たした。でもこれからも栞として持ち歩きたいくらい、素敵な出会いを思い出させてくれる大切な紙なのです。


この出会いの嬉しさ、大切に保存。 
人生という本に挟んだ栞。

そろそろまた、スパイスカレー食べに行こうかな。

おわり

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