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尊い日常をもう一度 #自粛明けにしたいこと

パソコンから目を離し、「うぅーー」と大きく伸びをする。
ちらりと時計を見ると、午後5時をすぎていた。

「ごはん、どこいく?」斜め前の机に座る恋人に話しかける。

パーテションの奥からひょいと顔が出てきて、隣町にあるラーメン屋さんの名前を告げた。

大学の研究室を出て、並んで駅へむかって、当たり前のように電車に乗る。

「おっと」
駅に差し掛かる時に必ず揺れる場所では、ためらいもなく手すりにつかまる。

あっという間に着いた隣駅。

何も言わずに、そろって駅ビルに入る。
文房具屋さん、本屋さん、ロフトの順に、ぐるりとウィンドウショッピングを楽しむ。

隣町へは、なんだかんだで週に一度は行く。毎度毎度、お決まりのコース。
もう店員さんに顔を覚えられているかもしれない。「あいつらよく来るけど、たまーにしか買わないな」そう噂話されても文句は言えない。


駅ビルを出て、ラーメン屋さんへ向かう。いつもラーメンかつけ麺かで迷って、でも毎回つけ麺を頼んでしまう。ここのつけ麺、美味しいんだもの。

「美味しいね」
「うん、美味しいね」

何度も来ているけど、毎回言い合うくらいには、美味しい。人気で、店内にはいつも人で混み合っている。

「ごちそうさま」

「またどうぞ」の声に会釈して、店を出る。

ふくれたお腹をかかえて、また別の駅ビルを散策。
私の「足が疲れた」の声で、散策はおしまい。

「もう、もやしっこなんだから」

いつも彼はむくれている。

電車に乗って、また大学の研究室に戻る。少しだけ作業をして、帰宅する。

そんな当たり前だった日常が、恋しい。

***

自粛期間が明けたら。まず一番は、こんな些細な日常を送りたい。
当たり前すぎて、何の価値も感じていなかった尊い日常を、また送りたい。

あのラーメン屋さんはいま休業中。人気店だから大丈夫だと信じているけど、戻ってきて欲しいな。あそこのつけ麺が、本当に恋しい。

文房具屋さんや本屋さん、ロフトで、ウィンドウショッピングをしたい。店員さんは、「あ、何も買わないあいつらだ」ってまた思うのだろうか。そう思われたって、それはそれで、なんだかいいな。
でも、次行った時は、何か買うのもいいかもしれないな。

この自粛期間中、たくさん歩いている。毎日1時間くらいは歩き回っている。(それでも、1万歩くらいにしかならないのにはびっくり)
だから、きっと体力がちょっとついたはず。もう「もやしっこ」ってむくれさせないぞ。

いつになるかわからないけれど。でもきっと、二度とこないわけじゃないから。
いまは、しばしの辛抱。
あの何気ない日々のきらめきを、そっと胸に携えながら。


***

あきらとさん主催の企画『#自粛明けにやりたいこと』に参加しました。

(あきらとさんの企画力と行動力、ほんとすごい…ほんと早い……おつかれさまです。)

退屈で窮屈で鬱屈なときは、『#自粛明けにしたいこと』のまとめマガジン(下記)を眺めると、きっと少しはわくわくとした気持ちになれるんじゃないかなって思います。そうして、自分でも書いて、この企画に参加するともっと楽しいかもしれない!


あきらとさん、毎度毎度楽しい企画、ありがとうございます!


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あさぎはな
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