「いろいろ考えずにまずはやってみよう」と言いがちなリーダーが陥る3つの落とし穴
自己紹介
こんにちは。
株式会社エイチームコマーステックの望月と申します。
株式会社エイチームコマーステックは、名古屋に本社がある株式会社エイチームのグループ会社で、私は代表を務めています。
私は社会人経験20年以上となかなかのベテランになってきましたが、3年前に設立されたばかりの若い会社で経営デビューし、日々奮闘中です。
何を伝える記事か
日本企業は2割近くが3月に決算を迎えるようで、年明けから会社やチームとして新しいことに取り組む機会が増えてくると思います。
組織が新たな成長や成果を求めようとすれば、新たな挑戦に取り組むことは必須ですが、そこには多くの落とし穴が隠れており、あらかじめ知っておけば避けられるものもあります。
この記事では、25年近くいろいろな組織で仕事をしてきた私が、自分が実際に経験したケースや、上司や同僚が陥っているのを近くで見ていたケースを抽象化して伝えることを目的としています。
これを読んでくれているあなたが新しい挑戦に取り組む際に、なにかの参考になり、少しでも成功確度が上がってくれれば嬉しく思います。
はじめに
新しい挑戦は判断材料が少ないため、事前にすべての要件を決めることはできません。
世の中のビジネス書を読むと、「考える時間が無駄」「やってみないとわからいこともある」という理由で計画をそこそこに実行にとりかかることを推奨するものも多いように感じます。
はじめにお伝えしておくと、判断材料が少ない状況で「やってみないとわからない」という意見には私も同意します。
それでも、私は新しい挑戦に最低限「目的(なんのためにやるのか」「ゴール(どこで終わりなのか)」の2つだけは必要だと考え、実践しています。
「やってみないとわからない」からといって闇雲に着手してしまうと、その後の挽回が難しかったり多くのコストがかかってしまうような落とし穴や負債をつくることになります。
ここでは3つのケースでそれらを解説していきます。
1. 判断材料が起案者に閉じてしまう
新規性の高いプロジェクトなどでは、起案者に高い熱量や知識量が求められるため、その人を中心にトップダウンで進めることは一定正しいと思います。
一方で目的とゴールを決めていないと、アサインされたメンバーはただタスクを指示され、納品するだけの働き方になり、自身で考えて先回りするような動きや、ゴールに向けたペース配分が機能せず、最大のパフォーマンスを引き出せないといった事態に陥ります。
ただし、目的やゴールをきれいに作ろうとする必要はなく、特に新規性の高い取り組みでは起案者がシンプルに言語化して、関係者に共有すれば十分だと思います。
例えば社内に新たなツールを導入する場合なら、目的を「社員の事務処理効率を上げる」、ゴールを「新しいツールの設定を完了させる」と共有しておくだけで、関係するメンバーは効率を上げるための設定を考えてくれますし、設定を完了させること以外に寄り道しなくて済みます。
2. 取り組みが肥大化してしまう
新しい挑戦に取り組んでいくと、追加の情報に触れたり、よりよいアイデアが生まれたりと、状況を前進させてくれそうなきっかけが増えてきます。
また、メンバーからの問題提起も増えてくるので、一見するとプロジェクトが活発になってきた、と責任者としては嬉しく感じてしまうかもしれませんが、この状態は要注意です。
仕事をしていれば誰しも経験することですが、「やったほうがいいかもしれない」アイデアや、「解決したら誰かが嬉しいかもしれない」問題発見はたくさん生まれてきます。
また、責任者としてはメンバーからの提案は士気にも関わるため、無下には扱えず、つい着手を許可してしまいがちです。
これらを放置すると、取り組みは肥大化し、戦力は分散し、いつの間にか成果に見合わないお金、時間、人手を投じているのに誰も止められない厄介なプロジェクトになってしまいます。
目的やゴールをあらかじめ決める(言語化する)だけで、「やったほうがいいこと」を「やるべきこと」に、「誰かが嬉しいかもしれないもの」を「確実にプロジェクトのゴール達成に近づくもの」に絞り込むことができます。
3. 止める理由がなくなってしまう
個人的には、これが最も恐ろしい落とし穴だと思います。
プロジェクトも新規事業も新しい制度などもそうですが、「新しく生み出すこと」は大変ですが、それよりもさらに大変なのは「生んだものを止めること」です。
新しい挑戦は、定量評価できない成果や進捗の判断材料が多くあり、責任者が効果なしと判断していても立場や役割によっては順調と感じる人も出てくるため、関係者全員の理解や納得を得ることのハードルが高いのです。
そして、狙った効果が出ていないにも関わらず停止できないと、さらに状況は悪化します。
取り組みを一度更新してしまうとそれが前例となり、次の更新のタイミングで止めようとしても「なぜ前回止めなかったのか」を説明する必要が出てきて、回を重ねるごとに難易度が上がり続けていきます。
こうならないためにも、ゴールの設定が重要です。
新しい挑戦はどのような結果が出るかわからないからこそ、「いったんの終わり」をあらかじめ決めておくことで、立場や利害に関係なく、現状を正しく評価して判断できる状態になります。
最後に
冒頭で私は、「やってみないとわからない」に同意するとお伝えしました。
たとえば、生成AIが自分たちの仕事にどのように浸透し、どのように活用していくべきなのかはまだ答えが見えていない会社も多いと思います。
こういった場合、「とりあえずやってみる」ではいけないのかというと、そうでもありません。
「とりあえずやってみる」を目的化し、終わりを決めるだけでいいのです。
例えば、目的は「生成AIを◯◯の職種で具体的に使ってみた事例を集める」として、ゴールを「◯人のメンバーがchatGPT Plusを◯ヶ月使用する」としてみます。
加えて、目標として「活用事例をひとり◯個生み出す」としておくと効果的かも知れません。
これであれば、「とりあえずやってみる」ことに目的とゴールを設定でき、かつ上述した落とし穴を回避することができます。
新しい取り組みは事業や会社の成長にとって不可欠だからこそ、上手にコントロールできるよう、私も改めて意識したいと思います。
長文にお付き合いいただき、ありがとうございました。