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これからの旅人へ

自転車でアメリカを横断して9ヶ月がたって、色んなところでこの話をするとき、すごく興味を持って聞いていだける方がとても多くいらっしゃいます。

そういえばこの記事は当初、「いつか誰かが同じようなチャレンジをするときに、少しでも参考になれば」という思いで始めたものでした。

それがいつの間にかただの日記になっていたので、ここで旅を振り返って、これからアメリカを横断する方に向けて、タメになりそうなことをいくつか紹介していきます。

・持ち物
・野宿
・お役立ち情報

〈これがなかったら横断できなかった!持ち物5選〉

これについてはテントとか寝袋とかそういう必須品じゃなくて、持っていったらものすごい役立った!というものを紹介します。

①スペアタイヤ
シュワルベ マラソン

完成車についていたのはWTBというメーカーのタイヤでしたが、グラベルを走行するのに特化したもので、超長距離+大荷物には少し向いていませんでした。
そこでスペアとして持参したのがこのタイヤ。世界中の自転車旅人に愛される、抗パンク性能がとても高いものです。
タイヤを交換するまで、後輪は8回パンクしましたが、これに交換するとゴールまで1回もパンクしませんでした。ちなみに交換したのは後輪のみ。前輪はそのままで、全行程で1回だけパンクしました。荷重バランスはとにかく後輪にかかるので、後ろだけで十分です。
いつパンクするかわからない状態で走るのはストレスなので、絶対的にこれをオススメしたいです。

唯一の難点は、新品に交換するときハンパなく硬いことです。ずっと使っていたパナレーサーのタイヤレバーが2本お釈迦になりました。
結局シカゴの自転車屋さんにお願いして交換してもらったので、難しい人は無理しないで頼みましょう。

②小型スピーカー
Anker  Soundcore mini

手のひらに乗るサイズの小さいスピーカーです。ライド中は正直とにかく退屈だったりします。僕はスピーカーでずっと爆音で音楽を流していました。どうせ周りに人とかいないし。
トップチューブバッグにぴったり収まったので、自転車の中心からずっと音楽を聞くことができました。
旅前半の荒野とか、4時間登りが続いたり正気でいられないときが来るので、音楽で気を紛らわせるのはだいぶデカかったです。

③石鹸ネット 100均のやつ

写真とかありません。本当に100円費やすだけで入浴生活が劇的に変わります。
僕が泊まった宿は8割がモーテルでしたが、モーテルのバスルームってほぼ100%固形の石鹸です。そして石鹸単体だと、どれだけ頑張っても泡立ちません。

日本人ってただでさえ湯船が欲しい人がほとんどだと思うので、せめて石鹸の泡立ちさえよければ、スッキリ具合が向上しまくります。絶対に持って行きましょう。


④ヘッドライト

Amazonで、2年前に登山のために1000円くらいで購入しました。ブランドとか何でもいいと思います。
宿泊の半分を占めた野宿生活では、明かりはほぼこれしか使っていません。
後述しますが、キャンプ用のランタンなんて不要です。要は自分が向いてる方向さえ明るければいいので、ヘッドライト1つで十分です。


⑤サーモス 山専用保温ボトル

めちゃくちゃ保温効果の高いボトルです。
朝お湯を沸かして入れておくと、夕方くらいまで保温できます。
後半の寒い地方を走るときは必須品で、休憩で味噌汁やコーヒーを飲むことが楽しみで走ってました。

カナダで1日だけ寒さがとんでもない日があって、寒すぎて路面の跳ね返り水が瞬間冷凍されブレーキ、シフター、クランクが凍結したときは、このボトルがなかったら立ち往生してました。ある意味いちばん無かったら完走できていなかった、そんなアイテムです。


〈これからの人は絶対置いていってください!持ち物3選〉

商品の質がどうこうではなくて、そもそもの用途的にいらなかった、そんな持ち物を紹介します。

①ナイフ

Amazonで2000円くらいで買いました。超重かったです。
元々は調理のために買いましたが、僕はキッチンハサミを持っていたので、全て出番を奪われました。

ただ、もし野宿中に野犬や暴漢に襲われることもあるかもしれないので、護身用にならアリかもしれません。

②テーブル

野宿の食事で使うかと思い、ソロキャンプ用のミニテーブルを1000円くらいで購入しました。
結果として、本当に1回も使っていません。袋から出してもいません。
野宿で料理するときは、地べたが一番安定するし、色々広げてやるので、文句なしで不要でした。

③ランタン

いつもキャンプで使っているランタンを、野宿用に持って行きました。
しかし前述の通り、全てヘッドライトで代用したので1回も使っていません。しかも筒状で嵩張ったので、2ヶ月間ずっとジャマでした。

※繰り返しますが、商品の質がどうこうじゃありません。
あくまで用途そのものが、僕にとって不要だっただけです。


〈野宿について〉
アメリカ横断生活は、とくに今の物価高&円安の時代だと、すぐに資金が枯渇します。そんななか、宿代を削減できる野宿は必須スキルです。
ここでは、僕が野宿していたうえで皆さんに役立ちそうな情報を共有します。

①野宿する場所について

野宿場所を考えるにあたって大事な要素は、1.水場(トイレ)、2.壁と屋根です。
これらを兼ね備えた完璧な場所があります。ガソリンスタンド(GS)です。

壁と屋根付きの5つ星物件

アメリカは超車社会。どんだけ街がなくても、100kmに1つはGSがあります。そしてこの交通の要たるGSは、日本のそれと比べると遥かに立派です。必ずコンビニがあるし、場合によってはテーブルとベンチ、または敷地の端に公式で寝てもいい場所があったりします。旅の中盤は、1日のスタート前にGSの場所を調べて、その日の目標を決めるくらいでした。

これもガソリンスタンド

人様の敷地内にテントを張らせてもらうは以上、野宿交渉が必須になります。ちなみにこれは自分の体験に基づくデータですが、アメリカの西部に比べて東部は野宿交渉の勝率が格段に下がります。具体的に言うと、西部時間帯と東部時間帯でくっきり反応が分かれました。西は勝率100%に対し、東は20%です。理由は分かりません。

GSに次ぐ第2候補は、公園です。選び方は、東屋があるかどうかです。屋根があると雨が降っても濡れませんし、あと何故か安心感があります。僕はずっとGoogleマップの航空写真とストリートビューを使って、狙いの公園に東屋があるか確認していました。

もう1つ、テントを設置するのはコンクリートの上にしましょう。芝生の上でやると朝露がものすごいのと、アメリカ特有のスプリンクラーの餌食になります。特に後者はどこにあるのか分かりませんし、やられると雨の比じゃないくらいテント濡れるので。

こんな日もある

GSに比べて公園が劣るのは、無許可野宿になるということです。GSで店員さんに許可をもらえば朝まで安心して寝られるのに対し、公園は許可を得てないので、常に追い出される可能性が伴います。
僕は横断中に2回、警察に起こされて午前2時とかに立ち退きをくらいました。こういうときは大人しく笑顔で、なんやったらハグしてインスタ交換するくらいフレンドリーに対応しましょう。無法者は自分なので。


②野宿交渉について

先述の通り、GSで野宿をする場合は交渉が必須になります。さすがにいきなりテントを張るわけにいきません。僕が身につけたノウハウについてお話ししましょう。

◯英語で「野宿してもいいですか?」
→Is it possible to sleep outside with a small tent ?

野宿交渉の基本です。お店の外で小さいテントを使って寝てもいいか。野宿を訳するとこうなります。ちなみに寝袋はsleeping bag、テントを張るはmake a tent です。

◯交渉のポイント
ポイントは、いかに相手にとって邪魔にならないかです。まず、テントは小さいことをアピールしましょう。キャンプじゃなくて野宿だよということを伝えます。
また、必ずお店で買い物しましょう。日本のコンビニでトイレを借りるときのように、店員さんは買い物客には優しくなります。あと買い物をしながら、店員さんが話ができそうな人かを見極めます。

1回渋られても諦めてはいけません。店が閉まってからテントを張るから、店が開く前には出ていくから。ここで寝るしかない!という思いを前面に出しましょう。

あともう1つ、自分がどんな人間かを伝えるのも大切です。アメリカは旅人をものすごい応援してくれる国です。野宿をしていたらビールを奢ってくれたり、チップをもらったりすることも珍しくありませんでした。
「アメリカを自転車で横断していて、寝床を探している」最低限これくらいのバックグラウンドは伝えましょう。

以上の点を踏まえて、僕が使っていた野宿交渉の基本構文は以下の通りです。よかったら参考にしてみてください。

(GSで買い物をしたその流れで)
I'd like to ask you a favor. I'm crossing this country from Los Angels to New York by bicycle. I'm looking for somewhere to sleep outside since I don't have enough money. Is it possible to sleep outside with a small tent ?

アメリカにいると忘れがちですが、大切なのは日本人の謙虚さです。とにかく野宿"させてもらう"という気持ちを持ちましょう。

〈その他お役立ち情報〉

①買い物をするなら
アメリカにも数多種類のスーパーがあります。横断中いろんなスーパーで買い物をしましたが、その中でオススメのものをご紹介します。

◯Walmart

アメリカ最強スーパーです。とにかくデカい。食品以外にも衣服、さらに自転車の空気入れとかグローブとかも売ってます。
肉類も意外と小さいサイズがあったり、お菓子やビールの種類も豊富です。

僕の中でウォルマート最強商品はこれです、オリジナルパイシリーズ。何が最強かというとコスパです。
わずか84セントにして330kacl。物価高のアメリカにおいて、常にカロリーを消費するチャリダーにとっては心強い味方です。
しかも味も10種類くらいあって飽きません。個人的にはチェリーパイとブルーベリーパイが好きです。横断したらぜひご賞味ください。

◯SAFEWAY

ウォルマートより生活に近いスーパーです。サイズがちょうどよくて、ちょっとした買い物に適しています。
個人的に刺さったのが、トラベルコーナーです。歯磨き粉とかコンタクトの液、洗濯用洗剤など、ちょうどいいサイズが売られています。荷物量に制限があるチャリダーにとってはこのコーナーはもってこいです。

◯DOLLER GENERAL

元々は100均のようなものでしたが、物価高すぎて今はディスカウントショップくらいになっています。
でも色んな商品が地味に安いのは変わりません。夕食に使うソーセージやベーコンはだいたいここで買ってました。

特筆すべきはお菓子。お菓子はかなり安いです。最初、ポテチ2袋で900円とかどこがセールやねんとか思ってましたが、あとから考えるとこれめちゃ安でした。


②水を節約する

散々アメリカは物価高と書いてきました。本当に恐ろしいくらいなんでも高いです。
水もそうです。海外の水道水って避けたほうがいいので買うべきなんですが、いかんせん毎回買ってたら財布が終わります。

そこで活用すべきはウォーターサーバー。国でエコやクリーンを謳っており、スーパーや駅でよく見かけます。僕はだいたい見かけたら2ℓくらい汲んでました(砂漠では5ℓ)。
あとはモーテルで朝食があったら、スタッフの方に許可をとって汲ませてもらうのもアリです。だいたい笑ってウェルカムしてくれます。

あとこれもアメリカ中で見るのですが、アリゾナドリンクというシリーズがあります。500mlで99セント。ジュースなのに水より安いです。
野宿するときは、よく交渉材料でこれを買ってました。味も10種類以上ありますので色々試してみてください。ただしだいたい美味しくないです。


③雪道について

出発前、真冬アメリカの積雪ってどんなものか全く分かりませんでした。自転車は雪があったらもちろん危なくて乗れません。

結論、全然大丈夫でした。気温はよくマイナスになって路肩には雪も見られましたが、写真のように車道だけはキレイに雪がありません。やはり超車社会なので、道路が途絶えるとインフラも終わるということでしょうか。除雪車とか見たことないので、道路そのものの融雪機能が優れているのだと思います。


〈結びに〉
だいぶ長々と書き連ねましたが、以上が僕が見つけた、どうでもよくて知ってたら役立つアドバイスです。

ここまで読んでくださったのはきっとこれからアメリカを横断される方でしょう。人生最高の思い出になりますので、思いっきり楽しんでください。

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