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社会人Dから退職D進しました

理系修士卒で民間企業に就職したのち,社会人D進→退職→ピュアDになりました.経緯や金銭的問題を記録として残したいと思います.私もネットの海の中で見つけた先人たちの肩に乗らせて頂いてきた為,同じように誰かの参考になれば嬉しいです.

社会人Dから退職Dの経緯

社会人D進学

「研究面白い,けど知らない世界に飛び込むことも面白そう,働くかあ」という感じで修士から民間企業に就職しました.前職は収入も環境も良く,期待以上に恵まれた職場でした.ただ仕事に慣れるうちに段々と,平日は「早く金曜日にならないかな~」と会社のコーヒーマシンの前で嘆き,日曜は「明日から仕事か~」とサザエさんを見ながら涙を流すというサラリーマンらしい感情を抱くようになりました.
そんな中で,研究をしていたときは曜日なんか気にしたことがなかったし,夢中になると時間も忘れて延々と研究し続けるみたいなことが当たり前の日常だったことを思い出し(サザエさんも論文とビール片手に元気よく見ていた),”本気で夢中になれることに人生をかけて挑戦したい”と思うようになりました.ただいきなり退職する準備も勇気もなかった為,一旦社会人D(会社を続けながら博士課程学生となること)として進学しようと思い,思い立った日の会社帰りの電車で「今日夜話せますか」と修士までの指導教員に連絡をとり進学を決めました.
指導教員には元々博士課程の進学を勧めて頂いていたこともあり,快諾して下さりました(連絡がいきなりすぎて「え?マジ?」となりましたが笑ってokしてくださりました,深謝).そんなこんなで入学手続きをしたり会社に説明したり色々と事務手続きを済ませ入試の面接に挑み,無事社会人Dとなりました(すぐに大学生特権で受けられる各種サービスを登録した).

退職からピュアD

社会人Dになってからは平日業務後と週末に研究に取り組みました.研究から離れていた期間で忘れた知識もあり勉強し直す大変さはありましたが,それも含めて知りたいことを学び,やりたいことに挑戦できる研究はやっぱり最高に面白くてD進してよかったと感じました.
ただ会社の残業や長期出張もありなかなか思うように研究できない期間もあり,そして何より仕事が始まる時間には,研究を無理やり中断しないといけないことにとてもストレスを感じていました.上述の通り自分が研究に感じた魅力は,夢中になれたとき(ゾーンに入ったとき)は,時間を忘れてとことんのめりこめることでした(逆にやる気がでないときはとことんだらける).日曜の夜に面白い研究展開を迎えても,月曜からの仕事の為数時間でストップしないといけません.もっと自由に全時間と全エネルギーを使って研究をしたいという気持ちが強くなりました.
ただし退職には経済面の不安が大きく,それを解決する手段のひとつとして学振に申請しました.つまり学振の申請段階では会社で勤務しており(学振は申請条件として社会人も可,受給の為には3/31までに退職する必要あり),結果をもって退職の選択を考えることにしました.
結果無事に採択され退職を決めました(ただし後述の通り学振だけではカバーできない負担があり研究室にも色々相談の機会を頂いた,深謝).社会人で博士課程進学を考えている人で同じように経済的不安がある場合は,就職中でも申請可能なフェローシップに出してみるのもひとつの手かもしれません.また経済面だけでなく本気で自分が研究を楽しめるのか(会社イヤイヤバイアスではないか)を確認する期間としても自分にとっては有効でした.社会人Dの期間を経て,気持ちの面は自信をもってもう一回研究だけの世界に飛び込むぞと思えました.

D進にかかったお金

次にD進を経てかかったお金問題についてです.色々事前にネット情報を調べていましたが,それよりも多くかかっており苦しんでいます.まだ修了していない為「なんとかなった」とは言えませんが,いつかなんとかなったをこの記事に追記できるように頑張って生き延びたいです.また支出は,収入や大学毎の制度によりますが,退職D進において貯蓄や収入はあればあるほどいいのは間違いないです.

  • 入学金 282,000 (円/回):免除申請不採用

  • 授業料 585,800(円/年):免除申請不採用

  • 国民年金 0(円/年):学生納付特例制度

  • 健康保険 500,000(円/年):任意継続

  • 住民税 650,000(円/年):控除等不可

  • 引越し初期費用 300,000(円/回):家具購入等は含まない

合計:2,317,800 (円/年)

費用別詳細

  • 入学金・授業料
    弊学では,修士から継続で進学した場合は入学金免除,学振採択者以外は博士課程学生の授業料免除制度がありますが,どちらも対象外でした(ネゴったが不可だった).普通に大学全体の免除申請もしましたが不採択でした.退職後収入は激減,税負担は普通の学生の何倍も(何十倍?)大きい,学振により独立生計者となる,にも関わらず免除申請は前年度所得も提出する為「お前稼いでるやん」ということで不採択になりました.社会人からの出戻り歓迎をうたいながら現状の制度はこんな感じです.働きながら社会人博士課程の授業料をサポートしてくれる企業のニュースも聞くようになったので,そういったキャリアの方が大学よりずっとサポートが充実していると思います.

  • 国民年金
    学生納付特例制度で猶予申請をしました.退職証明書が必要なため会社からの発行を待って申請しました.

  • 健康保険
    退職すると,”国民健康保険”に加入するか,”会社の保険に任意継続(最長2年)”するかを選択することができます.ただ任意継続の場合も,会社に勤めている間は会社が半分負担してくれていた分も含めて全て自分で支払う必要がありぐんと負担は増えます.どちらが安いかは個人によるので,退職の際に会社と自治体に確認することを勧めます.私は双方に電話で確認し,国民保険が年間80万越えると自治体から言われ泡を吹いて倒れたので任意継続を選択しました.また2年目については,任意継続の保険は金額据え置き,国民保険は前年度年収に応じて決定するので年度末に確認して安い方を選択するといいと思います.

  • 住民税
    ある日ポストを見ると封筒が入っていました.中をあけると住民税の納付書があり,その額を確認してそのまま溶けて水となり蒸発してしまいそうになりまいした.なんとかなりませんかねと泣きながら電話しましたがなんともなりませんでした(自己都合退社なのでそれはそう.勉学に勤しまれるのを応援したい気持ちは山々ですが..と言われた.頑張ります).ただこういうときに社会人してよかったと思うのは,まあ最悪またどこかで働けばいいとうメンタルになることです.最悪働きます.

  • 引越し費用
    これは個人によると思いますが,私は引越して新しくアパートを借りたので初期費用でこれくらいでした.ただ引越し業者や家具購入がこれにプラスされもっとかかっています.

  • その他
    以上は単発的にかかった費用で,これにプラスして日々の生活費がかかります.学振は月20万×12月=240万,なので上の支出を差し引くと10万も残りません.さらに学振は日本学生支援機構(JASSO)との併給は認められていません.大学はこの辺も理解の上で制度を作っているのか疑問ですが,私は現状社会人の間の貯蓄を削って生きています.ただほぼもう削り終えているので,本当にマイナスになるタイミングがきたらまた就職するしかないと覚悟しています.

最後に

退職してからは,好きなときに好きなだけ研究ができること,世界中の想像できないようなすごい人たちを身近で感じられること,研究が好きな人であればこの上ない充実した環境だと思います.研究に疲れて平日の真昼間にただただゆっくりを散歩したり(犬や赤ちゃんが沢山いる),知らない学部の授業に潜らせてもらったり,性別も国籍も年齢も全く関係なく突然知らない人にお前のテーマ面白いねと声をかけてもらったり,面白いアイデアが浮かんで夜眠れなくなったり,この瞬間がゆっくり過ぎてほしいと願うような時間に沢山出会えています.
ただ上述の通り学振をとったとしても経済的負担はかなり大きく,一度就職しまとまった収入を獲得してしまうと,それ以降大学の制度でも税制度でも厳しくなります.収入の目途と貯蓄の確保が重要だと感じます.

経済的課題は残りつつ(投げ銭の懇願ではありません,いや懇願です),とりあえず思い切り限界まで研究に挑戦したいと思います.「なんとかなった」と言えるように頑張ります.一度就職しようがしまいが,アカデミアがどんなキャリアパスにも開かれた世界になるといいなと思います.それくらい研究は魅力的で未知でぶっとんだ世界だと信じてこれらも挑戦を続けていきます.誰かに少しでも参考になれば嬉しいです.

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