死ぬまで一生カルビ食えると思ってたよ

俺は変わってしまった。

焼肉の食べ放題で、サラダを頼むようになってしまった。

あの頃の俺は、白米を頼むことすら
せっかくの食べ放題なのに、白米で腹のスペースを埋めるのは頭悪い、と思っていたのに。
というか、そもそも生野菜が嫌いなのに。

せめてもの意地で、
サラダを頼む際店員さんに
サラダを食べたいんだけど、一皿全部は食べ切れないから
半分で提供してもらえるか、と確認した。

せっかく焼肉食べ放題に来たのに
腹のスペースをサラダ一杯分もの分量を野菜で埋めてたまるか。

店員さんからは
半分での提供できないけど、全然残して良いよ、
とありがたいお言葉。



いざ提供されたシーザーサラダ。
ベーコンとクルトンがトッピングされている。

店員さんから許可をもらったけど、
残すのも申し訳ないので、友達に少し分けて食べてもらった。

自分でもビックリしたんだけど
俺は友達に少量と野菜と、トッピングされていた全てのベーコンとクルトンを渡していた。

自分でもびっくりしたというのは、
そもそも自分で頼んだサラダを友達に少し押し付ける、(しかもクルトンとベーコン盛りだくさんで)という、自分の性根の腐り方では無い。

俺は今自らベーコンやクルトンよりも
野菜を食べようとしているという事実の方だ。

さわやかのハンバーグを頼んだ時
付け合わせで出てくるブロッコリーやにんじんさえ
友達に食べてもらってた、あの俺が。

今自らの意志でサラダを頼み、
しかもベーコンやクルトン等を友達に渡し、
純粋に野菜を食べようとしている。

しかも健康のためではなく、自分の食の好みとして、だ。


この姿を、いつもさわやかでブロッコリーを食べてくれる友人Fに見せてあげたい。




その後、肉を食べ進める。
ベタ過ぎるから、アレだけ大好きだったカルビが
脂っこ過ぎて5切くらいしか食べれなくなった話はしない。

俺がしたいのは、タンを頼んだ、
そして、そのタンをレモン汁で食べた
という話だ。

今までタンなんて、
きんぐの食べ放題の最初の一皿目で
何故かタンが表示されて、
頼まなきゃいけない物だと思い、とりあえず一皿頼む以外で頼んだ事がなかった。
(ちなみにアレ頼まなくても良いみたい)

そして、そのしゃーなしで注文したタンも
とりあえず米にワンバウンドさせて
タレの味をつけるための道具
としか考えておらず、

レモン汁ではなく、普通にタレにベチョっとつけて食べていた。


しかし、今回頼んだのは
最初の一皿で不本意に頼んだ訳ではない。
まだお腹空いており、肉を食べたいけど
カルビやロースはもう食えないからどうしよう…
と思い悩んだ末に頼んだのだ。

レモン汁をかけて食べたのも、
少しサッパリ食べたかったので、自ら望んでかけた。

初めてレモン汁で食べたタンはとても美味しかった。

美味しかったけど、頭では
「美味しく食べれるのであれば
本当はもっとカルビやロースを、焼肉のタレベチョベチョにつけて食べたい」と思っていた。


俺は、年上のおじさんが
何故カルビやロースではなく、
タンを好んで注文し、それにレモン汁をかけて食べる理由が分かったような気がした。

今までは、年上のおじさん達がタンを食べてるのを見ては
タンとは、サザエのキモみたいな感じで
大人になったり、美味しい物を色々食べると美味しく感じる食べ物で
皆好んで食べているのだと考えていた。

しかし、多分きっとそうではない。
俺のように、本当はカルビやロースを食べたいけど
油っこくて美味しく食べられないから、
と、消去法的に選んでいた人達も沢山いたんだろう。


この気付きが正しいのかは分からないが
てっきりタンという食べ物は
世にいう「大人の味」みたいな感じで
年をとると好んで食べるようになる物だと思っていたので
目から鱗だった。





アンチエイジングなんて全く興味がない。
おじさんになったら、カッコいいおじさんになれれば1番嬉しいし
なれなくっても、それはそれでしょうがない。
年齢を気にして、若く見られようとする方が
よっぽどダサくて気持ち悪いと思ってる。

でも俺は30歳になって、若返りたいと思い始めた。
別に外見はどうでも良い。もう一度
腹一杯「美味い、美味い」と焼肉でカルビを食べ続けられるようになりたい。

例えば生活習慣の改善等で、あの頃みたいな胃に戻れる物なのか。
それとも時間の流れの不可逆さと同じで、
もうどう足掻いても元には戻れない物なのか。





P.S
タンが1番サッパリしてたけど
ハラミはまだしばらくは美味しく食えそうでした。

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