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日々のさえずり 8

朝起きて、部屋に差し込む自然光の中で写真を撮っているとMPが回復する。
昨日のうちに買っておいた季節の果物や、朝食のトーストとコーヒー。夜と同じ空間とは思えないほど部屋中がきらめく。
けど、ここ1年くらいそういう時間をあまりとれなくなった。感染症流行初期はたっぷりあった時間も、数年経った今は仕事や用事などあれこれ予定があってそうはいかない。特に果物たちは食べることと調理することを生活上で計画すると「買ってきてすぐに仕込まなきゃ」みたいなことが本当に増えた。
それでも撮りたいという気持ちは変わらずにあって、その時が朝でなくてもやっぱり撮る。すこし薄暗い自然光だったり、人工光だったりするのだけど、それもまた「今」なのだと写真を見て思う。

すこし前に誕生日があって、仕事は繁忙の真っ只中だったのだけど、どうしても当日に仕事をする気になれず取り漏れていた代休をとった。母が合わせて有給をとると言って、ふたりでひさしぶりにおでかけをした。帰りしにせっかくだからケーキでも買って帰ろう、とあるお店に立ち寄る。ショーケースを遠間から認識した瞬間「あれ」と不穏に思った。14時を過ぎた頃合いにもかかわらずチョコケーキ4つとシュークリーム1つが広いショーケースの真ん中にぽつんとあるだけなのだ。あまりにもさみしい。しかもよく見るとチョコケーキには「おすすめ」というPOPが添えられている。売れ残っているのに…?といぶかしげなわたしと母。そうは言っても買うしかないか、とチョコケーキ2つ・シュークリーム1つを購入した。
夕食後にさあどうだどうだとケーキを食べる。ムースがふんだんに使用されたケーキはあまり好みではないのだけど、このチョコケーキのムースはしっかりおいしくて、POPの「おすすめ」が嘘でなかったことを噛み締めた。

公開初日に『劇場版ハイキュー!! ゴミ捨て場の決戦』を観てきた。そこまですきなのか?と問われると熱量を持って答えることはできないのだけど、「そこまですきな人たち(きっと)」と同じ空間で観てみる経験はありだな、と思い当日になって観ることを決めた。グッズを身にまとう方やオリジナルポストカードがもらえる飲食物を購入する方が犇めく、平日の夜とは思えない盛況ぶりの映画館前広場で待つ時間はたのしかった。

わたしは原作の漫画がすきで、何度読み返してもぐっとくるシーンがいくつもある。これまでのアニメ化においてもそれらのシーンはとても素晴らしく映像になっており、120%くらいのぐっとくる度はあるのだけど、どうしても漫画で読むことでしかぐっとくる度が200%になることがない。白黒で描かれたてのひらに収まる冊子に、これほどまでに感情を揺さぶられる。読者が勝手に補う何かがそこにはあって、自分の心を置き去りにせずに読み進められるからなのだろうか。あと、物語には主題と、主題ではないけど大事な副題たちがあると思うのだけど、漫画という媒体はどれも並列して成立させることができる(読み手が並列されたそれを思い思いに受け取れる)ような気もする。

映画を観終え、つづきを漫画で読み返す。作品に出てくる大人たちの言葉がすきで、やっぱり同じところでぐっとくる。ただひたすらにバレーボールのたのしさを描く作品に、球技がなにひとつできないわたしは何度も救われている。

何事においても過度な表現を避けるようにしている。なるべく気を付けてはいるけど、するっと口をついて出てきてしまうことはやっぱりある。自覚できていないところにもきっと潜んでいると思うので、ひとつずつ拾い上げて、言葉や態度が適切に軽くなりすぎないようにしたい。何かが「過ぎる」ということ、それに大した意味はないのだから。

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