赤いマフラーの男
今日は私の恐怖体験をお話ししよう。
と、始まるとまるでホラー小説のような感じがするけれど、タイトルの赤いマフラーの男は脚もあれば影もある。信じられないが正真正銘の人間だった。
3年前、友人と「出会いが欲しい!!!」という衝動から街コンに参加した。
街コンは彼氏がそこまでできるわけではないことは知っていたが、行ってみたい好奇心とほんの少しの期待をもって参加した。
参加した街コンは二部生になっており、一部では参加した男性全員、だいたい15人ほどとお話しし、二部ではその中でも気になった異性と話すフリータイムで構成されていた。
私は人見知りはしないし、どんな話でもある程度聞き続けられる。初対面としては話しやすいタイプだと思う。このタイプの良いところは、どんな人ともある程度仲良くなれるところで、悪いところは変なやつに気に入られてしまうところである。
今回は悪い面が出た。
第一部が半分くらい終わったところだろうか。
「それでは、またひとつ隣の席に移動してくださーい!」
という司会者の声がし、目の前の男性が隣へずれ、次の男性がやってきた。
「はじめまして」
やってきたのは、チャコールグレーのスーツに赤いマフラーを巻いた男だった。11月とはいえ街コンの会場はもちろん室内である。この男はクロークにコートは預けたはずなのに、なぜかマフラーを、しかも赤いマフラーを巻いたままで参加していた。
「はじめまして」
人見知りしない女は一応にこやかに返した。
そしてお互いのプロフィールカードを交換して話題を広げるのが通例。この男は私の出身地と、どうして今の地にいるのか、学生時代はどこで過ごしたのかに食いついてきた。
男「へぇ、大学は〇〇だったんだ。俺のおじいちゃんがその辺に住んでてよく行くよ」
私「あ、そうなんですね」
男「○○大だったらそこそこ賢いじゃん。あの辺の他の大学はほとんど馬鹿だからな〜。」
いきなりの学力マウント。
しかも私の通っていた大学の地域に住んでるのはあくまでもじいちゃんなのに知ったかぶりして話してきた。
あ、このひとやばい
と思ってそのあとの話は辛うじてにこやかに振る舞っていたものの大いにスルーしていた。
それなのに。それなのに、だ。
第二部が始まって「それではフリータイムです!フリータイムは3交代です。」のアナウンスと同時に赤いマフラーが私の元へ駆け寄ってきた。
「もう少し話したくて!」
ありがとう、でも私は話したくないな
話し始めたのは相変わらず延々と学力マウント。でもそいつの学歴はよくわからないし赤いマフラーだしなんだかもう意味がわからなくてずっと聞き流していた。
まあ1交代の辛抱だ、と思ったのに移動時刻になっても移動しない。結局貴重なフリータイムのうち2/3の時間を赤マフラーと共にしたところでやっとどこかへ消えた。
すべてのプログラムが終わったところで、気になった相手の番号を3つ書いて、マッチングしたら番号を発表。解散後は男性陣はぜひお相手を外で待って食事にでも誘ってください〜!というノリになったのだが、わたしはなぜかある男性とマッチングしていた。
15名近い男性の中で唯一気軽に話せた相手ではあった。相手が良ければ食事に行っても良いと思っていた。
しかし、女性陣が退出をはじめ、わたしも出ようと思ったところ、なぜかマッチングもしていない赤マフラーが私を待ち構えていた!!!
え?!ん?マッチングしていないよ?と思ったけれど、私を見つけるなり駆け寄ってきて
「このあとラーメン食べに行かない???」
、、、?
赤マフラーとはラーメンが好きという話もしていないし、マッチングもしていないし、たいして盛り上がってもいないのに誘ってきた。
「あー、、友達いるんで、すみません」
「あ、じゃあLINE交換しようよ」
「あー、、いいっすよ」
そしてLINEを交換して、これ以上話したくなくて友人とトイレへ逃げ込んだ。
申し訳ないがLINEも即ブロックさせてもらった。
結局せっかくマッチした人とは話せもせず、私と友人はお気に入りの日本酒居酒屋で呑んだくれて帰った。
こうして赤マフラーの男は私の中で伝説の男となった。
彼にもう一度会ったら、人の話は聞くこと、初対面でマウントをとらないこと、仲良くもないのにラーメンに誘うのは控えるようにと伝えたいと思う。