サーマルクライムスタジオ富士からの成生(後編)
上質な蒸気とアロマ、昇天クナイプで蕩けるとそのまま水風呂、では無く”不感浴”と彼らが呼ぶ大きな湯船に浸かる。そもそも縦250✖️横120✖️深さ100のオールステンレス浴槽って⁉️とか思ってしまうけれど。この32℃くらいのまさに何も感じない浴槽に浮かぶと、クナイプ直後の皮膚たちは音でいうとパチパチ、感じ方でいうとチクチクとも違うのだけど不思議な感覚になる。エアウェーブの中身みたいな長い枕に頭を預けて、いつまでも浮かんでられる。
三たび、ラウンジに戻る。ここで、朝からこの日一食目のサ飯。“ところてん”をすする。食べるというよりはすする。絹みたいに滑らかなところてんにサッパりと甘くないポン酢、青みかんの皮が素晴らしいアクセントになる。静岡市内で50年続く用宗さんのところてん、サーマルクライムスタジオ富士のオリジナルアレンジ。朝昼抜いた“オートファジー”דサウナによる空腹”、さらに一分の隙もなく温められた内臓は、冷たく冷えたところてんが喉の奥からゆっくりと大胸筋の間をすべり落ちて行くのを感じる事ができる。
広大とけんたはもうすでに、口が空いていて焦点もしっかり合ってない(笑)そりゃそうなるよな。これでまだ三合目。ここから、メインともいうべきサウナ、“ケロサウナ”に入る。
ここのケロサウナでは、薪の大きなikiストーブとドイツ製の電気サウナストーブを使う。(そういえばEOSというドイツのメーカーは車に例えるならAMGだと大=ととのえ親方が言っていたけど。)ここでも急激に体温を上げず、徐々に温めていく。温もりがとても柔らかい。
準備は整った。
ここから頂上までは急登する。最初に入ったマウンテンサウナで、アウフグースが行われる。これまでとは全く違う雰囲気とペース。まるでベルリンのLIQUIDROMの様だ。
その先の頂きへと近づく2人は最上段で、構えている。
「イチ!ニ!三ーマル‼️」
ピークに達した僕たちは、この日初めてのご褒美、富士山の天然水、同じくオールステンレスの水風呂に浸かる。開き切った毛穴に、霊験あらたかな富士の伏流水が染み込んでゆく。時間をかけてゆっくりゆっくり温められた身体はこの冷たい水風呂に長く入っている事ができる。水風呂を出たらさっきの“不感浴”に入る。
「解脱」
他に言葉がみつからない。その後、ケロサウナを2セットくらいしてサーマルクライムスタジオを後にしたはずなんだけど、あまり覚えてない。余韻が深く長い。
夕暮れの裾野から、静岡市までは40分ほど。起きてるのか、寝てるのか
α波とθ波の間をゆらゆらしてる間に成生さんへ到着した。正直いうと、僕は天ぷらがあまり得意では無かったのだけど成生さんは全く別。けんたに初めて連れてきてもらって大ファンになった。その後ナオさんの席で来させてもらってさらに大好きに。
何がすごいって、先ず立地。浅間神社に隣接した、由緒ある場所。さらに内装がとてもシンプルで美しい。カウンターのみ八席を照らすライトは影を作らず、自分の目の前だけを照らす。カウンター向かいというか、店主の志村さんが立つその後ろにはその日調理される野菜が置いてある。その先にある障子が開く頃にはカウンターの照明は下がり、太田道灌が作った500年の庭がライトアップされる。マニアックな話なのでスルーするけどこのガラスも実は相当にすごい。
立地、借景、インテリア全てどストライク。気の良さにつつまれるお店で、地の食材をシンプルに、油を使って提供してくれる。お料理は僕がいうまでもない。お土産に頂くおむすびは翌朝も気品を残している。次は5月にお願いする事ができた。1日の終わりに感謝と、思い切りの深呼吸をする。