拝啓 ~大切なあなたへ~③
分娩室では、
とにかく放置されてるって感じだった。
ご経験ある方々ならわかると思うけど、
産まれる間近のお母さんは、
お尻をこぶしで押してあげると楽になるみたいで、
それをひたすらやっていたよ。
それしかぶっちゃけお父さんがやることないんだ。
頑張れって言ったって、すでにお母さん頑張ってんだから。
たまーに助産師さんが状況を確認するだけで、
すぐその場から離れる。
その記憶が非常に強く残ってるなあ。
その間も、とにかく陣痛は微弱だったね。
しばらくして、
先生から、
薬使うー?って言われたよ。
薬って陣痛促進剤のことなんだけど、
あなたに聞きたいことがある。
あの時、
陣痛促進剤を使うことは正解だった?
そこまでして産まれたかった?
お父さんは、正直に言うと、陣痛促進剤を使うことに抵抗はなかった。
全くなかった。
だって、早くあなたに会いたかったんだもん。
そして、
お母さんのこれ以上辛そうにしている姿を見たくなかったんだ。
そして、午前10時頃。
あなたは私たちのもとへ会いに来てくれたね。
あなたの元気な産声は忘れないよ。
本当に嬉しかった。
めちゃくちゃホッとしたのを覚えてるよ。