拝啓 ~大切なあなたへ~②
病院に着くと、お母さんはすごく辛そうにしていたんだ。
実は、あなたにはお兄ちゃんがいるんだけど、
お兄ちゃんが生まれるときは、あんなに苦しがってなかった気がするんだよ。
お母さんがなぜか知らないけど焦ってるように感じたんだ。
理由は聞いてないからわからない。お父さんの勘違いかもしれないしね。
あなたが生まれる2か月前、
お父さんたちは家族旅行したんだ。
そこでずっと聞いていた歌がある。
ミセスグリーンアップルの「僕のこと」
この歌をエンドレスで聞いてた。
あなたも知ってるよね。
だって、お父さんは今でも毎日聞いてるんだから。(笑)
その歌を病室でお母さんととにかく歌ってた。
分娩室に行くまで、ずっとずっと。
6時過ぎに分娩室に移動したかな。
そこでもお母さんには笑顔がなかった。
女性が出産するのは命がけだから、
笑顔なんてないとは思うけど、
そうだけど、
お母さんは顔が真っ白で、すでに疲れ切っていたと思う。
あなたは、
とっても微弱な陣痛だったんだよ。
とにかく弱かった。
お母さんと、頑張れ頑張れってたくさん声かけたんだ。
ただ時間が過ぎていくようなそんな感覚だったのを覚えてるよ。