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~足りない~映画「愚行録」

人間のイヤったらしい部分をこれでもかーーーー!!というくらいに描ききった貫井徳郎先生の大・大・大傑作(と私は思っている)『愚行録』の映画化!!し・か・も、妻夫木聡、満島ひかり、小出恵介、臼田あさ美などなど、若手実力派俳優勢揃い。これは期待が持てる!というか、持ってしまうけど、あの愚行録を映画化できるのか?大丈夫なの?という気持ちもありで…。

ストーリーは公式サイトより抜粋。

エリートサラリーマンの夫、美人で完璧な妻、そして可愛い一人娘の田向(たこう)一家。絵に描いたように幸せな家族を襲った一家惨殺事件は迷宮入りしたまま一年が過ぎた。週刊誌の記者である田中(妻夫木 聡)は、改めて事件の真相に迫ろうと取材を開始する。殺害された夫・田向たこう浩樹 (小出恵介) の会社同僚の渡辺正人(眞島秀和) 。 妻・友希恵 (松本若菜) の大学同期であった宮村淳子 (臼田あさ美) 。 その淳子の恋人であった尾形孝之 (中村倫也) 。そして、大学時代の浩樹と付き合っていた稲村恵美 (市川由衣) 。ところが、関係者たちの証言から浮かび上がってきたのは、理想的と思われた夫婦の見た目からはかけ離れた実像、そして、証言者たち自らの思いもよらない姿であった。その一方で、田中も問題を抱えている。妹の光子 (満島ひかり) が育児放棄の疑いで逮捕されていたのだ――。

正直申しまして……期待はずれは否めない。原作では、ページを読み進めていくごとに、人間の暗部を覗き見させられて、そこから抜け出したくても抜け出せない…というか気になって、気になって仕方がない。気持ち悪いし、目をそむけたい。もうこれ以上見たくないけど、見てしまう…というか読んでしまう。人間の性や業を喉元に突きつけてくる作品であったのです。しかーーし、映画では全く足りない…。怖さも、人のイヤったらしさも、何もかも足りない!何が足りないんだろう…覚悟??なんだろう、すべて中途半端。とにかく思いっきりが悪い。もっと来いよ~~~~!!と言いたい。今の日本映画ではこれが限界なのかな~。

映画の中で出てくる全員の「イヤったらしさ」が想像の範囲。「別に~~」というか、よくある感じ。こういう子、クラスや同僚にいたよねレベル。ねとっとした絡みつくようなイヤな感じがほとんど伝わってこなかった。蜘蛛の糸に絡め取られるような、不気味な沼にはまり込んでしまったような……そういった感覚を映画で味わいたかった!!至極残念・無念。いい俳優さんが揃ってたのにな~。もうちょっと骨があるものが見たかったよ。

原作を読んだのがかれこれ10年以上前(…遠い目…)ですが、今も強烈に印象に残っています。犯人が殺人へ至るまでの道筋はもちろん、その謎解きを含めた、サスペンス要素も素晴らしくよく出来ていて、そこに上塗りするように、人間の暗部をあぶり出しつくし、人間不信に陥りそうなくらい描ききってくれています。描写も生々しすぎて「オエーーッ」となる感じ。そのため、読後感はある意味、爽快ともいえるくらいです。イヤな気持ちになってもいいけど、強烈な作品を読みたい人にオススメすぎる一冊です。おっと、映画の感想、どこ行った?(笑)

#映画 #映画評 #コラム #愚行録 #011


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