映画『未来を花束にして』
凄まじい映画であった。女性たちが参政権を求め立ち上がり、戦った物語。今では当然にあってしかるべき女性の参政権が、たった100年前にはなかったなんて、今ではもう信じられない。しかも、それが先進国ロンドンの話である。
1912年のロンドン。主人公のモード(キャリー・マリガン)は24歳。同じ職場で働く夫のサニー(ベン・ウィショー)と幼い息子と暮らしている。劣悪な環境の洗濯場で生まれ、7歳の頃から洗濯場で働いている。彼女の母親も同じ洗濯婦であったが、20代前半という若さで亡くなっていた。
ある日、モードは偶然、カリスマ的リーダーであるエメリン・パンクハースト(メリル・ストリープ)が率いるWSPU(女性社会政治同盟)の”行動”の現場に居合わせた。女性の参政権や権利向上などを求め、50年にもおよぶ平和的な抗議が黙殺され続けたことにより、WSPU主導のもと、"言葉より行動を"と過激な抗争が行われていた。その出会いにより、平凡な主婦だったモードも次第に運動へ参加するようになる。
モードが同じ職場で働いていたWSPUの女性に変わって、下院の公聴会で政治家に意見を述べるシーンがとても印象的であった。
「7歳でパート、12歳から社員で、今は24歳です。洗濯女は短命です。体は痛み、咳はひどく、指は曲がり、ガスで頭痛もち」
「賃金は?」ーーー「週13シリングです。男性は19シリングで労働時間は女性より3割短い」
「あなたにとって参政権とは?」ーーー「ないと思っていたので、意見もありません」
「では、なぜここに?」ーーー「もしかしたら…他の生き方があるのではないかと…」
(公式サイトより抜粋)
ーー心に突き刺さった。言葉にすることでモード自身、自分が心から求めていたものに気がついたのである。気付いてしまったら、知ってしまったら、もう後には引き返せない。何も行動しなければ、虐げられ、奪われ続けるだけ、ということを身を持って知っていたからだ。
そして、モードは近い将来、母と同じように自分も死を迎えることを自覚していた。モードがWSPUの運動にのめり込んでいったのは、この点が大きかったのではないか?と確信している。「自分がいなくなった後、子どもに何を遺してやれるのか?」「今、ここにいるのは息子だけど、生まれたのが娘だったら?」映画の中でも夫にそういった問いかけをしていた。
『VOTES for WOMEN』
『未来を花束にして』そんな生易しいタイトルでまとまる話ではない。かなり骨太なストーリーだ。原題は『suffragette』。どういう意味なのか調べてみた。
大辞林 第三版 - サフラジェットの用語解説 - 非合法的手段の使用も辞さない闘争的な女性参政権活動家が、サフラジストと区別して自ら名乗った名称。闘争的女性参政権活動家。
これは海外の広告用ポスター。胸にしているバッチが”サフラジェット”の証。いいポスターだなぁ。
100年前まで女性に参政権がなかったのである。それは、女性たちが自ら立ち上がり勝ち取ったものなのだ。そして、今ある参政権もずっとあるわけではないのであろう。いつか奪われる日が来るのかもしれない。そんな時、自分は声を上げ、行動することができるのだろうか?
『女性が生きづらい社会は、男性も生きづらい』私はそう思っている。
ちなみに日本で女性が参政権を勝ち取ったのが、調べてみたところ1945年(昭和20 年)ポツダム宣言が発表された年である。今から約72年前。本当に最近だーー。