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~悲しい、あまりに悲しい~映画「シシリアン・ゴースト・ストーリー」

喉元にナイフを突き立てられたような錯覚に陥る映画であった。とはいえ、映画では残虐なシーンはほぼ出てこない。……なのに……だ。
この映画は実際にあった一人の少年が殺害された事件を元に構成された映画である。
イタリアのシチリア島を舞台に、13歳のルナとクラスメイトのジュゼッペの淡い恋の話からスタートする。

勝気で自分自身の世界観を持つルナはクラスメイトのジュゼッペに夢中。ジュゼッペは穏やかで自然を愛する男の子。もちろん年頃の男の子らしくマンガやゲームも大好き。(余談。作中にドラゴンボールの悟空、しかも超サイヤ人の時のフィギュアが出てきて日本人、なんだかうれしかったー。さすが、世界の鳥山明先生!)

その想いをジュゼッペに伝えるべく手紙をしたためるルナ。その想いはジュゼッペに通じ、二人は交際を始める。ルナは両親、特に母親から彼との交際をきつく禁じられていた。

しかし、親の小言など恋するルナには馬耳東風レベル。二人の恋は加速していく。デートの最中、ジュゼッペはルナにひと言も告げずに姿を消したのだった――。

ジュゼッペが消える寸前まで一緒にいたルナは心配でたまらず、またジュゼッペの突然の失踪に疑念を抱く。
ジュゼッペの家に行っても追い返され、自身の両親に言っても取り合ってもらえず、警察にもあしらわれてしまい13歳のルナには打つ手がない。

街のみんなが口を閉ざし、手をほどこしてくれない理由――。

それはジュゼッペがマフィアのドンの息子だからである。ジュゼッペはマフィアの抗争に巻き込まれて監禁されたのだった。

ジュゼッペを探し続けるルナ。そこからは、現実なのか空想なのか虚構なのかわからない世界が広がっていく。それ故にルナの精神がおかしくなったと見なされ入院させられることにも発展していく。
それでもジュゼッペを想い、探し続けるルナ。見ている側はいつの間にかルナと同じようにジュゼッペが必ず生きて戻ってくると信じ一縷の望みをかけ続ける。

それと同時にジュゼッペもルナからもらった手紙を繰り返して読み、なんとか正気を保とうと奮闘する。その姿を見るにつけ、マフィアでもなんでもない普通の13歳の少年がどうしてこんな目に合わなければならないの?と、怒りがこみ上げてくる。

「執拗に」と言ってもいいほどルナとジュゼッペのシーンが交互に繰り返される。それにより、見ている側も二人の気持ちにのめり込んでいく。生きて戻ってきてほしい――。切に願うが、もちろん結論は変わらない。血も流れないし、暴力的な映像もないラストシーンには言葉を失うしかなかった。思い出しただけでも鼻の奥がツーンとする。

「大丈夫だよ。ルナは僕を探し出すことが上手だから…」ジュゼッペの言葉が今も胸に突き刺さっている。

#映画 #コラム #感想 #シシリアンゴーストストーリー #005


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