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映画『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』

はぁぁぁ、これはこれは凄いアニメーション。有休取ってまで観に行った甲斐があった。1800円払っても後悔がない、否、払いたい映画だった。開始5分でがっつり心を鷲づかみされてしまったよ。

ストップモーション・アニメとCGが融合し、さらには日本文化をアニメの中で見事に昇華させているのである。これは日本人のアニメ関係の人は悔しいだろうな。私だったら「してやらてたー!」と思ったにちがいない。この絵だけでもすごい力がある。

主人公の少年クボは母と二人で暮らしている。父親はクボが幼い頃、闇の魔力を持つ者から狙われた際に二人を守って亡くなったと聞かされている。クボの片目もその時に失ったのである。さらに母親もその時のことがきっかけで心を病んでしまい、現在に至っている。

クボは不思議な力を持っており、三味線の音にあわせて折り紙を操り、その折り紙に命を吹き込むことができる。母から聞いた冒険譚を三味線の音にのせて語り、民衆の前で披露して生活費を稼いでいる。

三味線の音色にあわせて折り紙が舞い上がり、『何が起きるの?』と思えば、一枚の折り紙が形を変えサムライとなり、戦いを始めたりする。もうそれだけで心が躍る。ワクワクする。折り紙って本当にキレイ!

物語は少年が自分の運命と対峙しながら大人になっていくというもの。いわゆる『よくある話』だ。とくに目新しいストーリーはない。ご都合主義的な部分もある。それなのに心を動かされる。

親子は慎ましくも穏やかな生活を送っていたが、クボは母親から言い渡されていた禁を破り、闇の力を持つ者たちに姿を見つけられ、追われることとなる。クボは自らの運命から逃れることができず、幼き頃に父を殺し、自分の片目を奪われた『闇の力』と対峙することになる。

『運命』というのは、誰しもが背負っているものだと思う。みんなそこから逃れることはできない。『その時』が来た時に、どんな人が自分の周りにいてくれるかで随分変わるなぁとこの映画を観ていて思った。あと、自分の人間力みたいなものも試されるんだなぁと。

クボの側にいてくれたのは、母がいつも持たせてくれていた木彫りの猿が、とあることをきっかけに変身して命を持った猿。口うるさいが、めっぽう強い。クボに身を守る術を教えてくれる。さらには、道中で出会ったおちゃらけでノリは軽いが気が良いヤツで弓の名手であるクワガタ。

二匹ともまだ未熟な少年クボを心配し、ありったけの愛情をかけ、全力で守ってくれるのである。そんな二人の献身的な愛情を受け取って、クボは自らの運命と戦うのである。

まぁ、泣くよね。もうすっかり母親の目線で見てたわ。アタシ、子供いないけどね。心の中で全力で応援したわ。ただ、誰もが誰かからありったけの愛情をもらえるわけでもないし、守ってくれる大人がいるわけでもない。そんなことを考えると切ない気持ちにもなる。トラブルを抱えている子どもたちが、自分の両親や身内でなくてもいいから、誰かまともな大人に出会えますようにと祈るしかない。自分がその立場になったら、それこそ全力でできることをしようと思う。(できるか?自分??なんとも怪しいが、想いだけはあるのよ)

そして、何より映画すべてに日本の文化や四季折々の風景の美しさ、さまざまな風習などが織り込まれており、日本に生まれた人間として嬉しくなってしまった。しかし、今を生きる日本人たちはその美しさも尊さをすっかり忘れている気がする。もちろん自分も含めて。風習とかってめんどくさいことも多いし。それを海外の人からこんなに鮮やかな形で見せられてしまうと、ちょっぴり複雑な気分でもあるね。

この映画の監督さん、8歳の時に父親に連れられて日本へやってきて、その美しさに感動したことからこの映画を作ったそう。しかも、その父親がなんとあのNikeの創設者なんだってー。すっげー。たしかNikeのシューズってオニツカタイガーをモデルに始めたって聞いたことあるけど…。おぉっと、ガセネタだったらごめんなさい。日本の文化や技術が世界に良い影響を及ぼしていると思うとこれまた嬉しいことなのでありました。お後がよろしいようで。

#映画 #コラム #映画評 #050 #KUBOクボ二本の弦の秘密

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