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【まとめ】#5-3 リスクコントロール AI技術が拡げる3番目の軸

ハイパー起業ラジオとは、IT批評家の尾原和啓さんと、シリアルアントレプレナーのけんすうさんによるポッドキャスト。起業家だけでなく、すべてのビジネスパーソン必聴のラジオです。


信用スコアがビジネスにもたらす可能性

今回のハイパー起業ラジオは「信用スコア編」第3回。ビジネスにおいて、信用スコアは売上や利益を安定的に得るために欠かせないものだと説明しています。

冒頭、尾原さんがけんすうさんに質問します。

ビジネスにおいて収益をきっちり出すために、ある要素が大事なんですが、なんだと思いますか?

尾原さん

あー、そうですね。やっぱりお金を返さない人みたいな感じで、マイナス要素がある人を「どうコントロールするか」が重要そうだと思いました。

けんすうさん

そのまんまの答えじゃねぇーか(笑)
そうなんです。今日は「デフォルトのマネジメント」ないしは「ノイジーマイノリティのコントロール」という言い方をして、深めていきたいと思います。

尾原さん

デフォルトとは、約束された支払いが履行されないリスクのこと。

信用リスクのコントロール

まず、信用スコアは、顧客や取引先の「信用力」を可視化してくれるという側面があります。尾原さんは、本屋で万引きが起きた場合の損失を例に、信用スコアが重要であることを説明しています。

本屋で1冊の本が万引きされた場合を考えてみましょう。
「本屋で1冊本が万引きをされるっていうのは、万引き1冊分の売上からの利益をぶっ飛ばすでしょうかっていう話があってですね。」

尾原さん

一見すると、1冊分の損失は微々たるもののように思えるかもしれません。しかし実際には、本屋を運営するためには、人件費や不動産の賃料もかかってきます。それを考えると本屋の利益率は非常に低く、1冊の万引きが大きなダメージを与える可能性があります。

(本が1冊盗まれると)
30冊から50冊ぐらい売れないと回収できないんですね。

尾原さん

リアルビジネスにおけるデフォルト

この「デフォルト」は、リアルビジネスにおいて様々な形で発生します。例えば、消費者金融やクレジットカードの分割払いの金利が高いのは、返済されないリスクを織り込んでいるからです。

結局1割ぐらいの人は返さなかったら、15.8%取らないとビジネスになんないよねって話なわけですよ。

尾原さん

つまり、一部の「返済されない」という例外的な事象が、ビジネス全体に大きな影響を与えてしまう可能性があるのです。

7人の、売上でようやく1人分を回収できるって話ですね。
ていうふうに実はこの信用スコアってことを考えた時に、全員が信頼できるから、円滑になってくるよねっていう話があるんですけれども、もっと重要なことは、事故を防ぐ・減らしていくっていうことが、信用スコア的なビジネスの中で、むちゃくちゃ重要だったりするんですね。

尾原さん

ここが最もビジネスにおいては、コントロールしないとやばいところってことですね。

けんすうさん

ITによるデフォルトのコントロール

こうした「デフォルト」のリスクをコントロールする上で、ITは非常に有効な手段となります。

けんすうがスタートアップだったとした時に、どうやって万引きを減らしていきますか?

尾原さん

そうですね。本屋だったらセンサーをつける、とかが考えられますし、「お金を貸す」だとやっぱり今までお金をちゃんと返してきた人には貸すけど、返さない人に、返した経歴がない人には、ちょっとしか貸さないみたいなことをしそうですよね。

けんすうさん

けんすうさんの言葉の前者をfraud detectといいます。
つまり、一部の例外を仕組みを使って防ぐことを指します。

近年注目を集めている「信用スコア」も、ITを活用したリスク管理の一例と言えるでしょう。

信用スコアは、個人の信用度を数値化したもので、金融機関などがお金を貸す際の判断材料として利用されます。

この人はちゃんと今までお金を返し続けてる人だから、次もお金を貸しても大丈夫だよねっていうふうな形で、徐々に与信枠っていうお金を借りれる枠とかが増えてくんですよ。

尾原さん

近年では、AIを活用して個人の行動履歴などを分析し、より精度の高い信用スコアを算出するサービスも登場しています。

あなたのクレジットスコアを上げるためには、こういうことやったほうがいいですよみたいなことをアドバイスしてくれるサービスみたいなのが、あるんですよ。

尾原さん

多様性と信用スコア

信用スコアは、特に多様性が高い社会において重要性を増します。

信用スコアっていう話を、なんとなく皆中国のイメージがあるんですが、実はアメリカは、けんすうが言ったこと(お金を返したことがない人にはお金を大きく貸さない)が基本。

尾原さん

アメリカは

・移民がすごく多い国
・新しいチャレンジをする人の方が多い国

のため肩書だけで判断できないことが多いわけです。

従来の社会では、個人の信用度は肩書きや資産などによって判断されることが多かったため、移民や起業家など、従来の枠組みに当てはまらない人々は、十分な信用を得ることが難しい状況でした。しかし、信用スコアは過去の行動履歴に基づいて信用度を評価するため、より公平な評価が可能になります。

この人は信頼できるのかっていうことを、技術で担保していくっていうことが、多様な社会になってくると、必要なんですよ。

尾原さん

行動データに基づく信用評価

信用スコアの本質は、「行動データ」に基づいて信用を評価することです。

結局、最大のレビューデータは行動なんですね。

尾原さん

従来は、個人の属性情報(勤務先、学歴など)に基づいて信用を評価せざるを得ませんでしたが、IT技術の発展により、個人の行動履歴を詳細に記録・分析することが可能になりました。

例えば、ブログ記事をコンスタントに執筆し、一定の収入を得ているライターの場合、その行動履歴をデータとして分析することで、返済能力を客観的に評価することができます。

コンスタントにnoteに、週に3回記事をアップしていて、1本あたり大体このぐらいの投げ銭が入ってくるから、トータルで考えればこのぐらいの収入が入ってくるじゃないかっていう話が、できるわけですし。

尾原さん

行動データに基づくリスク管理

行動データは、信用スコアの算出だけでなく、様々なリスク管理にも活用できます。例えば、ライドシェアサービスのウーバーでは、ドライバーの運転状況をGPSや加速度センサーなどで記録し、安全運転を促す仕組みを導入しています。

車についてるスマホのGPSとか加速度センサーを見ると、急ブレーキ踏んでないかとか分かる。

尾原さん

また、フィリピンでは、自動車ローンの審査に、飲酒運転や車両盗難を防ぐための装置の導入状況を考慮する事例もあります。

アルコールを飲んだ状態だと、エンジンがかかりませんとか。
スマホと自分のIDをセットにしているので、本人じゃない人が車のをエンジンをかけようとすると、その本人に対して、連絡がいってとか。

尾原さん

これらの例からもわかるように、行動データを活用することで、従来は防ぐことが難しかったリスクを抑制し、より安全で信頼性の高いサービスを提供することが可能になるのです。

「借金」から「投資」へ

従来の金融は、「お金を貸す」という行為が中心でした。しかし、行動データに基づく信用評価が可能になったことで、金融は「投資」という側面を強めています。

本来的に言うと「借金」っていうよりかは、それをきっかけとして、いかに社会の中でより収入を得るっていう風に、本来であれば「融資」として捉えるべきなんですね。

尾原さん

例えば、ウーバーのドライバーが、より稼げる大型車に乗り換えるためのローンを組む場合、そのドライバーの過去の運転履歴や収入状況などを分析することで、返済リスクを低減し、より低い金利で融資することが可能になります。

また、バングラデシュのグラミン銀行のように、貧困層に対して少額の融資を行い、起業を支援するマイクロファイナンスも、行動データに基づく信用評価によって、より効果的に展開できる可能性があります。

テクノロジーと社会の進化

IT技術の進歩は、単に金融サービスを便利にするだけでなく、社会全体の進化にも貢献しています。行動データを活用した信用評価システムは、従来の枠組みにとらわれず、より多くの人々にチャンスを提供する可能性を秘めているのです。

全ての行動がデータになった時に、さっき、Grabとかの運転手が良い運転を行ってるだけでこの人は信頼できるから、お金が借りれるっていう風に、本来的にはコツコツやってれば、それによって、より大きな冒険をするための、事業融資みたいなものが受けれる時代になってきているはず

尾原さん

※Grab(グラブ)とは
元々はマレーシアを拠点にサービスを開始し、東南アジア各国に拡大した自動車配車アプリ。アプリで一般車やタクシーを手配して利用することができます。2018年3月にはUber(ウーバー)が東南アジア事業をGrabに売却し、Grabが東南アジア最大の配車サービスとなっています。

次回予告

次回は、信用スコアと並んで重要な要素である「保険」について、詳しく解説していきます。


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