【書評】AIゲームチェンジャー シリコンバレの次はシアトルだ

今回読んだ本はこちら。

1、次はシアトル

巨大ハイテク企業、デジタル化の最前線、AI市場、スタートアップの聖地などとして名高い「シリコンバレー」。

しかし、最近では「シアトル」が第二のシリコンバレーとして注目を集めているそうです。

2、シアトルがなぜ今ホットなのか

本書ではその理由として5つの理由を提示していました。

① 元来、親日的なエリア
⇒スタートアップマッチングイベントを20回弱実施、日本人居住者が多い。州政府も親日的。
② シリコンバレーより生活コストが安価
⇒賃貸相場が比較的安い※今は昨今の賑わいも手伝い、上昇傾向。
③ AIエンジニアを育てるエコシステムの存在
⇒Amazon/MS/ボーイング/ワシントン大などが出資・支援などの連携で人材エコシステムを確立
④ ビジネス分野に強いスタートアップが比較的多い
⇒GAFAMを中心に起業する人も多く、ビジネス色が強い
⑤ エリアの全体が狭いため、情報交換が比較的容易
⇒シリコンバレーよりも、地理的規模がコンパクトなため、活動しやすい。つまり、情報収集やビジネス活動がしやすい。

恐らく、①と②はエリア特性として普遍的に存在しており、そこに目を付けた企業が集中的に進出し、③や④のような結果が徐々に実りだし、⑤でさらに活性化という流れだと推測しています。

 “産学連携”の強さ、スケールの大きさは非常に感じました。

シリコンバレーではスタンフォード大学、シアトルではワシントン大学がその起点となっています。

例えば、ワシントン大学の年間予算は72億5198万ドル(8,050億円、2018年度)で東京大学のそれと約3.5倍分の開きがあります。R&Dの支出も桁違いなど、膨大な予算が組まれています。

これらの内訳としては、企業との研究契約(2割)や市民への医療提供(3割)、あとは寄付などです。つまり、それだけ皆がシアトルに期待している証拠だとも言えます。

3、日本はこのホットな流れから置いていかれる?

ここまでだけ読むと、なんだか「ふーん・・」で終わってしまいそうですが、私たちが持つべき視点についても考えていこうと思います。

本書では、

① 日本はPoC(Proof of Concept:概念実証)の文化が薄いので、実装できるまでに時間がかかる。
② 例えばアマゾンは「プレスリリースファースト」という考え方が主流で、それゆえにプロジェクトの推進が非常にスピーディでダイナミズムですが、日本は「プレスリリース=完成している」という考え方が根強い。

この2つって、みなさんの日常でも思い当たる節があると思うんです。僕が仕事をしていても社内で感じますし、お客様の社内の雰囲気としても感じます。

今までは、この風潮が「日本人らしさ」「勤勉さ」「真面目さ」などと言って評価されてきたわけですが、どうもその文化“だけ”を愚直に実行してきた結果、世界的に見ると日本は「ただの真面目な作業屋さん」という位置づけになっているのではないかと僕は感じました。

作業屋さんは便利なものですが、実はAI業界やハイテク企業にとってこの存在はそこまで必要では無いともいわれています。(もちろん必要な場面はたくさんありますよ)

なぜならば、海外の考え方として、『料理人(プレイヤー)は、レシピを考え⇒調理⇒味付け⇒味見⇒完成』という一気通貫こそがGood Solutionを生み出すと考えているようです。

ある工程だけをどこかに任せるという感覚が基本的に薄いと考えたほうが賢明ですし、もっと言うと、ある工程だけしか貢献できないプレイヤーは「良い料理(プロジェクト)を完成させることができない」という評価なのだと理解しています。

4、日本が考えなければいけない視点

ここまで聞いて、どう考えるかは人それぞれだとは思いますが、日本にとってシリコンバレーやシアトルで根付いている考え方や連携の姿勢は大いに参考になると僕は感じました。

その理由として、日本は今後さらに少子高齢化・労働人口の減少が加速し、それがもたらすものは、国家としての競争力の低下だと思っています。そういった状況を補完し、武器に変えていくには、グローバリズムを一刻も早く受け入れ、それを普遍的なものとして浸透させ、活性化を図ることが1つの手段になる得ると考えているからです。

前述の①~⑤も日本の地理環境を活かせば十分に検討の余地はありますし、もっと言うと大学の存在意義を再定義する絶好の機会にもなりうるのではないかと個人的には感じています。

そういう僕も、何事も慎重に石橋を叩いて渡る(叩きすぎて壊れることもある)タイプの人間ですが、変化を恐れず大胆に動く勇気を持ちたいと思いました。

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