進研ゼミの話
小学校3,4年生くらいから進研ゼミをやっていた。
みんなもそうだったか知らないけど、子供がいる家庭には月に一度進研ゼミからの封筒が届く。
中身は進研ゼミで人生が成功する漫画の小冊子と、たまにおまけみたいなものもついていた。
入会すると時々付録のおもちゃが届く。
算数のゲーム機だったり、理科の虫眼鏡みたいなキットだったり。子供の頃の私にとってそれはとても魅力的だった。
あるとき、いつものように届いた進研ゼミからの封筒の中に、入会するともらえるおもちゃを入れるためのバッグが入っていた。
「これに入れるものが欲しいから」
私が母に進研ゼミをやりたいとねだった建前がこれである。もうちょっとマシな理由なかったんか。
かくして進研ゼミを始めさせてもらった私である。
小学生の頃の付録や各教科の漫画の冊子は全部とても気に入っていたし、小学生のための情報や漫画やお便りが載った月刊誌も大好きで、絵を描いたりしてお便りを送っていた。
もちろんテキストもしっかりやっていたし、赤ペン先生の問題もちゃんと提出していた。
提出するとシールがもらえた。そのシールを集めて色々な努力賞をもらった。ペンケースとか、キラキラのペンとか、ハンコを作れるキットとか。小学生が喜ぶものばかりだった。
中学に上がっても進研ゼミを続けていた。しかしこの頃から記憶が怪しい。でも恐らくちゃんとやっていたはずだ。赤ペン先生に送るテストがファックスで送れるようになったような気がする。実際に使用したかどうかは定かではない。
高校受験向けに、普段の授業用とは別の問題集もあったし解いていたと思う。ピーズが言う、中学まではマトモだった、に深く頷く。
高校は進学校だった。勉強にぜ〜んぜんついて行けなくなった。特に数学が壊滅的だった。
学校の授業では優しさのかけらもない「オリジナル」とかいうムズすぎ問題集が使用され、毎回のように宿題が出た。(名前が全然思い出せなかったので検索した。)本当に分からなくて、分からないままで徹夜してやろうとしたけど全然終わらなかった。
解き方を見ようとしても「青チャート」とかいう分厚すぎ参考書には呪文しか書いていなかった。
私は勉強を諦めた。特に理系科目は。
それと同時に、毎月届いていた進研ゼミを開かなくなってしまった。
どんどん溜まっていくテキスト。赤ペン先生への罪悪感。そういえば大学受験の頃、思い出したように問題集をやったような気もする。
なんせ私は高校を卒業するまで進研ゼミを続けていたが、ほとんどのテキストが新品のままで眠っていた。
その間はずっと進研ゼミのことが頭の片隅にはあったと思う。それだけじゃなく、学校の宿題もほとんどしていなかったので罪悪感は日々積もり続けた。
自分から進研ゼミをやりたいと言い出したのに、という親への申し訳なさとか、中学まではできていたのに、という自分への失望とか。そういうものもあった。
それから10年が過ぎた今でも、何をしていても「こんなことをしている場合ではない」という感覚に陥ることがある。
きっとそれは新品の進研ゼミのテキストの亡霊が見えていて、私はこの先もずっとそいつを心に背負って生きていくのだと思う。
日々の焦燥感の正体がわかった。それならば、これからは未来の自分のために心残りは残してはいけないな、と思いつつ、今日もツイッターとYouTubeを行ったり来たり、部屋は汚いまま、楽器もろくに弾かず、未来の自分の心の亡霊を増やしていく。
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