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日本におけるMMTへの誤解④

レイは00年代終わりに起きた、世界金融危機への政府の対応が間違ったものだと指摘している。

レイの入門書の第8章5節 "就業保障と不平等"のなかで、こう書かれている。

事態が悪化すれば、米国政府が富裕層救出のために飛んでくる。直近の惨事(世界金融危機)の際には、ウォールストリートの上位0.1%を救うために何と数十兆ドル(数千兆円)が支払われたが、実体経済にはごくわずかな金額しか投入されなかった。ほかの研究では、「財政刺激策」が最も苦しんでいる人々に向けられなかったことをパブリーナ・チャーバネが立証し、FRBがウォールストリート救済のために低金利で29兆ドルをはるかに上回る融資を実行したことを、アンディ・フェルカーソンとニコラ・マシューズが示した。

経済が回復し始めたときに、上位1パーセントが回復による全体の利益以上のものを獲得したことは驚くに値しない。

彼らには金も権力もあり、米国政府は彼らのためにほぼ全力を尽くしたのだ。』

つまり、金持ちはデフレだろうが、インフレだろうが、恐慌から復活する際も、どうやったって、富を拡大するってこと。

だが、それ以外の人たちはそうではない。

なぜなら、彼らにはそうするための、権力がないからである。

『2014年、主にトマ・ピケティの有名な著書『21世紀の資本』のおかげで、経済学者と政策担当者は不平等に気がついた。「上げ潮がすべての船を持ち上げるわけではない」とわかったのだ。事実、過去数十年間の経済成長は不平等を拡大させてきた。

実のところ、経済学者と政策担当者は楽観的な連中だと結論づけざるを得ない。はるかケネディの時代までさかのぼれば、経済を成長させられれば、誰もが勝ち組になるというのが社会通念であった。実際には、その考えはあまりにも幼稚で事実に反するものである。権力者は、好況時には利益をむしり取る。不況時には政府に救済してもらう。景気動向に関係なく幸福を守り増進させられないなら、誰も金持ちになり権力を握りたいなどとは思わないだろう。

なぜエリートたちはいつでもどこでも経済成長を叫ぶのか?彼らが提唱するすべての政策は、それが経済を成長させるという主張によって正当化されているように思われる。

富裕層に対する減税ーそれは経済を成長させる!経済成長のために規制をなくせ!自由貿易が成長を刺激する!成長促進のために福祉を削れ!成長促進のための財政を均衡させろ!成長を取り戻すためにウォールストリートを救え!

他方、彼らが嫌う政策ー最低賃金の引き上げ、環境保護、貧困児童のための学校給食、労働者の通常休暇や病気休暇ーはすべて、成長を妨げるといわれている。

このような政策が成長を促進すれば、金持ちは公平な分け前よりも多くを手にするだろう。政策が成長を促進しなければ、その政策が金持ちの分け前を増やすだろう。表が出れば金持ちが勝ち、裏が出ても金持ちの勝ちだ。

これを聞いて驚くのはだれだろうか?もちろん、地球上のほとんどすべての経済学者と政策担当者だ。なぜか?かれらは権力を考えることを拒むからだ。我々の経済は「市場主導」だといわれるが、実際には権力によって、動かされる。注意を払ってきた者はみな、上位1パーセントの権力が、戦後容赦なく増大してきたことに気付いている。経済成長から得る利益をより多く自分の懐に移す能力も、それに比例して強化されてきた。』


これを読んで、レイやオリジナルMMT派の理論、主張が政府支出によって、民間部門の景気を刺激して、好景気を生み出すためのものと考える人はさすがにいないだろう。

要は1パーセントの権力者、それの実質的協力者である政府 VS 大多数の持たざる者たちとの不平等、ひいては強者に圧倒的に有利な社会システムをめぐって、戦うためのツールなんだと思う。

だから、財源は租税では無い。再分配ではなく、事前分配を強調するのである。というより、実際のオペレーションがそうなっていることを解き明かすことに成功した。

仮にもし、本当に再分配しかできないのであれば、圧倒的に権力者が有利なので、それ以外の者はどうしようもないことになる。

日本だと、左派の人ほど、MMTに反対しているような気がする。

はっきり言って、これはおかしい。


なぜなら、どこからどう読んでも、MMTの根幹にあるイデオロギーは左派そのものであるし、実際の政策的なアプローチも左派的なものだから。(アメリカだと極左扱いだろうな。)

3月5日付のフォーブス紙で米民主党のバーニー・サンダースらが毎月国民に2000ドルづつ直接給付するように訴えているらしいと伝えた。(バイデンは穏健派なので、この案は通らないだろうが)

明らかにMMTからの影響である。

そして、それは景気を刺激するためではない。

COVID-19で傷んだ、国民経済、国民の生活を守るためのセーフティネットとしてだ。

日本の左派が反対している理由、それはMMTのことを単なる好景気作成ツールと思っているからだと思う。(幹部連中がガチガチの緊縮派というのもでかいんやろうけど)

もし、ほんとにそうだとしたら、不勉強にもほどがあるし、ほんとにガラパゴスである。怠慢ですらある。

(中道左派系のわりかし影響力のあるツイッタラーの中には、MMTをトンデモ扱いしたりする人もいた。ここに書いたこと全て理解したうえで、トンデモというのならば、それはそれで正しい。)

自分的には左派、特に立憲民主党や日本共産党にこそ、MMTのイデオロギー的な部分を理解し、(MMTのイデオロギーを理解して、なおかつ反対ならば、もはやそれはリベラルとはよべない)与党と超党派的な動きで、財源がどうだなどとは言わずに、国民経済を救済していってほしいと切に願う。





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