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高度な技術力で、他では真似のできないステンレス加工を確立

※この記事は、2020年2月12日に取材した内容です。

今回インタビューした社長はこちら!

オーエフ工業株式会社 代表取締役社長 小川 正一 氏

■創業者から受け継ぎ高めてきた技術力を世に広めたい

普段、何気なく目にしたり触れたりしている、階段の手すりや滑り止め、扉のレール、エレベーターの足下部分などに使われているステンレス部品。
それらを製作しているのが、オーエフ工業株式会社だ。

現社長の小川 正一 氏は、30数年前に海運会社から転職してきた営業担当者。

「最初はステンレスのことなんて全くわからなかった。でも仕事をしていくうちに、この会社の技術のすごさに魅せられ、もっと広い分野に知ってもらわなければ!という気持ちが強くなっていったんです」と、会社への思いを明かす。

その技術とは、創業者の吉川 芳晴 氏が1948年に日本で初めて発案した、ロール引き抜き式のドローイングベンチによる加工方式である。
ステンレスの板を折り紙のように折り曲げていろいろな形にする「ロールフォーミング(冷間ロール成形)」は、通常、フォーミングマシンによるロール押し出し式が主流なのだが、ドローイングベンチによるロール引き抜き式ができたことで、板金の板曲げ加工では不可能な複雑な形状、また最大12mの長尺成形も可能となった。

さらに同社では、ドローイングベンチに冷間ロール圧延技術を加え、板厚6mmのものを部分的に4.5mm厚にして成形するといった、他では決して真似のできない高度な加工、および大幅なコストダウンも実現した。

「おかげで業界では『難しいものをやる会社』という評判がたち、『なんとかやってくれないか』と最後の砦として頼まれることもあります」。そう語る小川社長の表情は誇らしげだ。

成形に必要な金型はすべて社内で設計・製作していて、製作可能な型数は1,000種類を超えているという。
規格品はもちろん、個々の要望を図面におこすことから始める製品作り、小ロット生産にも対応している。

職人が作る金型によって、何百種類もの形状が製作可能。
複雑な形状と精度の高さは、70年にわたり蓄積された技術力のたまもの。

■自社の技術に誇りを持ってアピールできる営業担当者を育成

オーエフ工業が持つ技術力に魅せられた小川社長だが、その一方で、「いくら技術力があっても、それをアピールできる営業担当者がいなければ話にならない」とも言う。

そんな現社長の小川 氏が専務時代から力を入れてきたのが、既存の取引先にとらわれず、営業の枠を広げて同社の技術をアピールすることだった。
時にはアルミサッシのメーカーへ営業に行き、「アルミ屋にステンレスを売り込むなんて馬鹿じゃないか」と笑われたこともある。

しかし、アルミでは摩耗しやすいレール部分にだけステンレスを使うという案によって、その営業は見事に実を結んだ。
現在、アルミサッシのレールをステンレスにすることは定番になっている。

また、それまで主体としてきた建築分野以外に、新たな営業先として機械分野にも目を向けた。
量を多く発注する代わりに低価格を求められることの多い建築分野と違い、機械分野は多少値が張っても、小ロットで多種類の形状が必要とされる。
温かみのなかった機械にデザイン性を加えたいというニーズにも、同社の製品はマッチした。

「建築と違って厳しい公差をクリアするのは苦労しましたが、我々の特殊な技術を新しい分野に広めていくということに、私の営業魂は燃えました」と小川 氏。
その功績によって利益も上がり、小川 氏は2015年、社内外から請われて代表取締役社長に就任した。

では、小川社長が考える優秀な営業担当者とは、どんな人材なのだろうか。
その答えは、「できのいい、悪いは関係ない。自社の技術に興味を持ち、それを広めたいという意欲を持っていることが大事」とのこと。

そのため、「現場に興味があれば現場へ行って学べばいい。イヤなら現場へ行かずに他の方法で学べばいい」といった具合に、研修スタイルも一人ひとりが意欲を持って取り組めるやり方を尊重している。
社員の意見を聞くために、アンケートを実施することもあるそうだ。

そのような環境で育った同社の営業担当者は、営業力だけでなく、図面を見て断面係数の計算もできれば、どのくらい金型が必要なのか等、技術面における知識も備え、よりよい加工法を提案できる力を身につけている。
顧客の要望をしつこいほどに聞き出し、クレームにすら前向きに立ち向かっていくのも、自社の技術で世の中に貢献したいという気持ちの強さの現れだ。

もちろん仕事への意欲を重視するのは、技術職も同じ。ノウハウを持った貴重な存在であるベテランは、やる気があれば定年を過ぎても残ってもらう。
一方で、近年は意欲を持った若者も積極的に採用している。「それがお互いの刺激にもなっているようです」と小川社長は語る。

長年培われた技術を持つベテランと、若手社員が刺激し合って働く職場。

■次なる目線は海外。新しい営業スタイルにも挑戦。

高い技術力と意欲を持った社員に加え、同社にはもう1つ強みがある。
それは、商社を通さず、独自に材料を輸入して仕入れのコストダウンを図っていることだ。

ただ、輸入が多い分、為替の影響を受けることは避けられない。
そのため、「今後は為替変動によるリスクをなくすためにも、輸出を伸ばしていきたい」と小川社長は考えている。

すでに韓国には独占的に取引を行っているメーカーもあり、今後さらなる拡大も見込んでいる。
バブルがはじけたときに会社を縮小するのに苦労した経験から、これからは会社の規模を大きくせずに生産数を増やすべく、上海にOEM工場も開設した。

営業面では昔ながらの直接訪問だけでなく、展示会にも出展するなど新しい試みにもチャレンジしている。
創業者から受け継いだ技術力に甘んじることなく、挑戦を続けるオーエフ工業の未来にますます期待したい。

新たなPRの場として展示会に出展
意欲を持った人材の集まりは会社の財産

■MOBIO担当者 村井のコメント

異分野であった機械装置業界への営業進出が、加工技術のノウハウを持った意欲ある営業社員の成長。
金型製作現場での熟練社員と若手社員との熱い技能伝承風景。
数十mと思われる機械装置で加工されている社員の誇らしげな表情。
営業・金型製作・加工設備の「三本の矢」は小川社長が取り組んでこられた成果でしょう。


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