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決断力・営業力を強みにゴムと樹脂の切削二刀流へ

※この記事は、2021年10月18日に取材した内容です。

今回インタビューした社長はこちら!

株式会社アキツ 代表取締役 楠本 光晴 氏
※2024年1月に「亜木津工業株式会社」から「株式会社アキツ」に会社名を変更

■人との付き合いもものづくりも“真剣勝負”で道を切り拓いてきた

工業用のパッキン、ガスケットといった薄ゴム加工からスタートした株式会社アキツ。

最初はボール盤1台だったところから徐々に工作機械を増設し、20年前からゴムの立体加工に着手。
さらに、2013年からは樹脂加工も開始した。

こんなふうにものづくりの幅を広げていくことができるのは、恐らく高い技術力の成せる技だろうと思いきや、「うちはもともと特化した知識も技術もない。営業力と、それに対応してくれる社員の力でここまで来たんです」と代表取締役の楠本 光晴 氏はいう。

楠本 氏と、同社のナンバー2である専務取締役の小島 一孫 氏は、共に営業畑の出身。
営業は鼻がきく。
営業まわりをしていると、会社に利益を生むためにはどんな機械を入れ、どんな仕事をしていくべきかが見えてくるのだという。

そして営業で最も大切なことは、人と真剣に向き合うこと。

「相手はAIではなく人間。こちらが真剣に話をすれば必ず心が動く。最初は『なんやコイツ』と思われても、何度も日参して真心こめて接すれば、次第に情がわいてくるものです」(楠本 氏)

この作戦で、旋盤を導入する時も懇意にしている取引先の職人に頼み込み、普通なら門外不出の技術を伝授してもらったというからあっぱれだ。

一方、樹脂加工を提案したのは小島 氏である。
ゴムの市場が飽和状態となり会社に閉塞感が漂い始めた頃、「このままではいけない。何か次の手を打たなければ」という楠本氏に、「樹脂をやりましょう。機械を入れて勉強すればできます!」と提言したのだそう。
その言葉を聞いて、楠本 氏は「よし、やろう!」と機械の導入を決断。

それに対し、「設備投資してもらうからには失敗はできない」という小島 氏を筆頭とした社員たちの奮闘によって、新たな市場への参入が成功した。

「ビビッていたら今はない。経営者の決断力と、その指に止まって一生懸命取り組んでくれる社員の力、それに人の心を動かす営業力。この3つが当社の最大の武器です」と、楠本 氏は力強く語る。

強い信頼関係で会社を率いる楠本社長(右)と小島専務(左)
思い切った設備投資で幅広いものづくりが可能に

■相手を思う営業主導で、高品質・短納期を実現

取引先から「アキツに頼んでよかった」と思ってもらうために、人対人の真剣な付き合いはもちろん、製品の品質や対応力にもこだわりを持っている。

「うちで作っている製品は、うちにしか作れないものではない」と謙遜する楠本 氏だが、例えばゴム切削加工一つとっても、硬い金属やプラスチックと違って軟らかな素材を削るのは決して簡単なことではない。

同社ではゴムを削る刃物はすべて社内で手作りし、職人一人ひとりがそれぞれ異なる刃物を操ることで、精度の高いゴム加工を可能にしているのだ。

また、ゴムを削った時に出るカスが静電気でプラスチックに付くのを防ぐため、ゴム加工部門と樹脂加工部門は完全にエリアを分けている。

「なんでもいいから作ればいいのではなく、やはり『アキツの製品はきれいだね』といってもらえるものを提供したいですからね」(小島 氏)

対応力の面では、徹底した短納期を実現。
日数ではなく時間単位で、「今日の●時までに欲しい」といった注文にも日常茶飯事で対応している。

営業の意向に沿って現場が動くのは、営業力の強い同社ならでは。
なおかつ現場がそれにきちんと対応できる力を備えていることも、大きな強みといえるだろう。

ゴムを削る刃物は社内で手作り
大小さまざまなエンプラ製品を加工

■社員がやりがいと自信を持って働けるように…念願の新本社が完成!

新しい技術の習得や、普通なら考えられないような短納期への対応など、現場で働く社員にとっては負担にならないのだろうか?

その答えは、「儲けばかりに集中すると社員が不幸になる。社員の幸せを考えながら、バランスよく経営することが大切だと考えています」という楠本 氏の言葉にある。

実際、長時間労働はなく、労災ゼロを目標に国際規格・ISO45001を取得し、社員の安全を守る職場環境づくりにも力を入れている。

そして2021年1月には、延べ床面積約3500 ㎡の新本社を完成させた。
新本社を建てた理由は、それまでの本社が手狭になったこともあるが、一番は社員が安全かつ快適に働ける環境をつくるため。

トイレ、更衣室、社員食堂は明るく清潔感があり、横になって休憩できる畳スペースや、社員同士のコミュニケーションスペースも設けられている。

何より、周囲に圧倒的な存在感を放つ立派な建物は、「みんなが自信を持てる会社にしたかった」と楠本 氏が語る通り、社員たちの自慢になっている。

ただし、快適な環境を与えるだけが社員のモチベーションを高めることではない。

「仕事をするときも人と接するときも、どうせなら一生懸命取り組んだほうが自分も満足できるし、成果も出る」
これは楠本 氏自身のポリシーであり、社内でもいつも口にしていること。

同社ではトップダウンの伝達系統が確立されていて、社長のこの信念はナンバー2の小島 氏、そこから各部署のリーダー、さらに社員一人ひとりまでしっかり浸透している。
この意識統一によって、まじめでひたむきに働く社風ができあがっているのだろう。

「私も、小島も、社員一人ひとりも、全員がオンリーワンの存在。オンリーワンの人材によって成り立っているアキツは、世界で唯一無二だと思っています。これからも人の心をつかむ営業力と、一生懸命仕事に取り組む姿勢で、ゴム加工と樹脂加工の二刀流ものづくり企業として飛躍していきたい」

そう語る楠本 氏の夢がつまった新社屋では、社員たちが誇らしげに働いていた。

ここで働いていることを自慢したくなるような立派な新本社
食堂や畳のスペースなど社員がくつろげる場所も充実している

■MOBIO担当者 兒玉のコメント

ゴムのように柔軟ではなく、鋼のように固く強い信念で事業をけん引されるリーダーが今回の社長さん。
素材市場の変化に対応し、ゴム切削から樹脂切削もと大きく事業展開。
顧客対応第一がモットーで、多品種短納期は「当たり前」にしたいとの思い。
顧客要望を真剣に徹底的に聞く、「全社員が自社を自慢できる企業にしたい」など、まさに「熱い経営者」からのお話でした。


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