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時代を見据えた改革で鋳物産業を未来へつなぐ
※この記事は、2022年2月9日に取材した内容です。
今回インタビューした社長はこちら!
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■匠の技を継承し、鋳造〜機械加工〜組立〜検査まで自社で完結
赤々と燃える炎によって1200℃まで熱し溶解された金属が、手作業で鋳型に注湯され、さまざまな製品が形作られていく。
――鋳造は、シンプルな原理でありながら、砂型をつくるときの土の湿り具合、砂を敷き詰める技術、また金属を流し込むスピード等、一つひとつの作業に繊細な匠の技が必要とされる。
この道50年以上の職人ですら「鋳物は生き物。同じ条件でやっても、うまくいく時もあればそうでない時もある」と言うほど、極めるのが難しい世界なのだ。
それだけに後継者を育てることが難しく、高度成長期にグンと増えた鋳造会社は、創業者が高齢となった近年、どんどん減っている。
2022年に設立70周年を迎えた共栄合金鋳造株式会社は、主に青銅鋳物(砲金)を製造している。
優れた耐蝕性・耐圧性を持つ銅合金は海水に強く、船舶のエンジンルームに使われるバルブや水面計が同社の主力製品だ。
単重100g程度の小さな部品から、70kgのものまで対応できる。
長年培った鋳造技術に加え、同社の強みは、機械加工・組立・検査まで自社で一貫して行っていること。
「通常、鋳物は鋳物、加工は加工と分業体制がほとんどなので、お客さんは不良が出ても費用は支払わないといけない。うちは加工まですべて自社で行っているので、最終的に納品するのは良品のみ。お客さんにとってはコストや納期のムダが省けて、品質面でも信頼をいただいています」と廣川 明宣社長は胸を張る。
同業他社が頭を悩ませる後継者問題も、4年前に息子の伸弥氏が入社し4代目を継ぐこととなった。
「今までせっかく技術を教えても、使いものになってきたころに辞められたり、苦労はたくさんありました。技術者は育てたいけど、教えた技術を持って他へ行かれるリスクを考えると、やはり肝心な部分は一子相伝のような形が理想です。そういう意味でも、息子が継いでくれることはありがたいですね」と廣川社長。
伸弥 氏は現在、その技術を現場で習得している真っ最中だという。
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■持ち前の営業手腕で取引先が急増!社内の環境・社員の意識も刷新
物心がついた時から、鋳物場が遊び場だった廣川社長。
しかし、祖父が創業したこの会社は、父の代で閉じるはずだった。
そのため、高校卒業後は家電販売店の営業職などを経験する。
結局、家業を引き継ぐことになるわけだが、このとき活かされたのが、それまで培った営業力だ。
1989年に入社し、2015年に3代目として代表取締役に就任した際、取引先の高齢化を危惧した廣川社長は、新しい顧客の開拓に乗り出した。片っ端から飛び込み営業にまわり、名刺は100枚刷っても1か月でなくなったという。
最初はほとんどが門前払い。
時には、その場で名刺を捨てられたこともある。
それがさらに廣川社長に火をつけた。
「見とけよ、コノヤロウ!と、ますますやる気になったんです」
営業の極意はコミュニケーションをとり続けること。
仕事がもらえなくても何度も顔を出す。
呼ばれたらすぐに行く。
それを繰り返しているうちに、だんだん親しくなって仕事に結びついていくのだとか。
この負けん気の強さと地道な営業が後に実を結び、当時20〜30軒ほどだった取引先は80軒に増え、現在では全国から新規のお問合せや、新規注文が入っている。
同時に、将来を見据えて自社の若返りにも着手。
伸弥 氏が入ったことによって若い世代が定着するようになり、平均年齢は60歳から30代半ばまで下がった。
CAD/CAMを導入し、デジタル化も推進。
ISO9001とともに、鋳造会社としては珍しいISO14001の認証も取得した。
「ISO認証の取得に当たっては、職場環境も大きく改善しました。特に、工場内の片付けを徹底。それによって作業効率が上がり、安全性も高まりました。当社を訪れるお客さんからも『こんなにきれいな鋳物屋さんは見たことがない』と言われます」と、その効果は絶大だったようだ。
取り組みを始めた当初は不満だらけだった社員たちも、今では率先してゴミ拾いを行うなど意識が大きく変わった。
朝礼も行うようになり、以前は鋳物部門・加工部門がそれぞれ思い思いに動いていたのが、きちんと伝達・連携がなされるようになった。「今はワンチームとなり、よりよい品質・納期を実現しています」(廣川社長)
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また新たに注文をいただけるのが喜び」と廣川社長
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■息子という後継者を得て、親子で新時代にチャレンジ
ここ数年で取り組んできた社内改革には、伸弥 氏の意見も多く取り入れている。
その親子関係について、廣川社長は「私は基本的に反対はしない。息子にはまずやらせてみることを信条にしています。失敗したらそこから学べばいいのですから。ただ、甘やかし過ぎてもいけないので、時には厳しく指導しています。今や鋳造も機械加工もCAD/CAMも営業もすべて息子がやっているので、私のほうが使われている状態なんですけどね」と笑う。
後継者不足の業界において、なんとも理想的な師弟関係といえるのではないだろうか。
今後は、BtoBだけでなくBtoCを視野に入れてオンライン販売も強化していく計画だ。
さらに、これからは温暖化対策として車と同様に船の燃料も変わっていくことを見越して、それに対応できる新商品の開発も考えている。
ベースである鋳物も銅合金だけにとどまらず新たな素材を手がけていきたい…と挑戦は尽きない。
ただし、そのためには今より工場を大きくして、溶解炉も増やす必要がある。
めざすは100周年!未来を見つめ、夢は大きく、廣川親子のチャレンジは続いていく。
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■MOBIO担当者 村井のコメント
紀元前4000年頃、メソポタミアで始まったといわれる鋳物。
その歴史ある鋳物を連綿と受け継がれ創業70年を越えられた同社。
とりわけ“3K”の代表格といわれる鋳造工場の中で、快適な製造現場へと変貌され、モノづくりの「おもしろさ」「奥深さ」「仕上がりの美しさ」を若いスタッフに伝承されている廣川社長。
ISO取得後も新素材への取り組みや新製品の開発、3K返上と100年企業に向けての熱い思いを語っていただきました。
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