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特殊な六角穴加工に挑み、存在価値の高いオンリーワン企業に。

※この記事は、2023年12月21日に取材した内容です。

今回インタビューした社長はこちら!

有限会社三喜製作所 代表取締役 三宅 喜夫 氏

■ほかに負けない独自の道を模索し、チャンスを逃さずキャッチ。

「明るく元気」という言葉がぴったりな、有限会社三喜製作所の代表取締役 三宅 喜夫 氏。
同社では六角穴加工をメインに、一般市場では手に入りにくい特殊なねじやねじ回しをオーダーメイドで製作している。

創業は1956年。
もともとは、プレス加工による六角ねじや丸い金属部品を製作していた。

しかし、2001年に父の後を継ぎ2代目社長に就任した三宅 氏は、このまま同じことを続けていても価格競争で規模の大きな会社に太刀打ちできないと痛感。
「何か新しいことで自分たちの存在価値を高めなければ生き残れないと思った」と語る。

そこで新たな方向性を探るべく、展示会に出展。形状・長さ・肉厚の薄さなど特殊な六角穴加工へのニーズがあることを知ると、旋盤に取り付ける刃物を手に入れ、素材を回転させながら六角穴に削る「回転ブローチ加工」を行うようになった。
ただ、この方法だと硬い素材は難しいなど、加工に限りがある。

そんなときに見つけたのが、素材は停止したまま1か所ずつカンナのように削っていく「シェーパー加工」用の刃物だった。

旋盤技術に長けた企業は、わざわざ特殊な六角穴加工に手を出したりはしない。
しかも、シェーパー加工は工業系の学校でも教えておらず、知識のある人が少ない。
つまりは敵がいないということ。

「これなら勝てる!」と確信した三宅 氏は、新聞で見たその刃物を直ちに、購入した。

当時のスピーディーな決断について、「チャンスの神様に後ろ髪はない。これだ!と思ったときに素早く前髪をつかむことが肝心ですからね。」と得意げに笑う。

■一人ではできないことも職人のネットワークで実現。「幸せの和」が広がる。

特殊な六角穴付ねじのほかに、もう一つ同社の特徴的な製品として、非磁性でもボルトが落ちないドライバーがある。
これも、シェーパー加工だから実現できたもの。
六角のそれぞれの辺を斜めに削って奥を細くすることで、ボルトがピタッと止まるドライバーを生み出した。

開発のきっかけになった最初の依頼者は、なんと7年もこの悩みを解決できずにいたという。
ボルトが落ちなくなったおかげで作業効率がアップ。
しかも、シェーパー加工では外径の肉厚が薄く仕上がるため、スパナや他のドライバーが入らない狭い場所にもねじを取り付けることができると、今ではさまざまなところで重宝されている。

こうして特殊な六角穴加工により、自社の存在価値を高めることに成功した三宅 氏。
同社には、ほかでは手に入らず困り果てた人からの「こんなねじ、つくれませんか?」という相談が後を絶たない。

そんなマニアックな依頼に対し、試行錯誤しながらアイデアと技術で応えるのが、社内にいる頼もしい職人たちだ。

加えて、「この辺りには人間国宝みたいな職人がたくさんいる」というように、周辺の六角穴加工のエキスパートたちとネットワークを確立。
それによりスロッター盤による六角穴加工、放電加工機による六角穴加工など、対応できる加工法も広がった。

「一人ではできないことも、みんなに助けてもらうことで可能になる。その結果、お客さんが喜び、働く人が幸せになり、つながる企業が潤い、地域が活性化する…六角穴加工で『幸せの和』を広げることが当社の使命です。」と三宅 氏は言う。

シェーパー加工だから実現できた、ボルトが落ちないドライバー。
極小のものから薄厚、長尺、特殊素材、両面六角穴、
特殊形状(花柄、三ツ矢溝など)まで、さまざまなものに対応可能。
「六角穴で幸せの和を広げたい」と掲げた経営理念

■マニアックなほうがおもしろい。チャレンジするからこそ自分の身になる。

親しみやすい笑顔と巧みな話術で六角穴加工について語る三宅 氏だが、じつは元来は表に出るタイプの人間ではなかったそうだ。

社長になり会社の改革に取り組むにあたり、まずはセミナーに通って人見知りを克服。
展示会への出展も、回数を重ねることで自信をつけていった。
特殊な六角穴加工を打ち出してからは、ホームページに加え、自ら動画に出演しYouTubeで発信することにも力を入れた。

「ねじの世界はとにかくニッチ。特定の分野(例えば楽器やスポーツ用品など)でしか使わないねじや、そのねじが一つ足りないだけで動かない機械などがある。我々は見つけてもらわないことには、どこで何が求められているかわからないんです。」(三宅 氏)

積極的に発信を続けることで、展示会やインターネットで同社を知った人が、遠方からも相談や依頼に訪れるようになったという。

「受け身で仕事をしていた40代のときは、自分の中に何も残らなかった。でも、自ら動いて獲得した仕事は、ちゃんと自分の中に残っていく。」と、チャレンジしたからこその達成感も感じているようだ。

「これからも『何かを成し遂げるために、このねじがほしい』という顧客の熱い思いに応えて、特殊な課題に挑み続ける尖がった会社でありたい。傍から見たらマニアックな世界でも、困りごとを解決して『この会社に出合えてよかった』と言ってもらえたら本望です。」と三宅 氏。

明るいキャラクターの中には、独自の道を切り拓いてきた自信がみなぎっていた。

たくさんの製品が並ぶ2階の展示室で、
三宅社長の熱いものづくりトークが繰り広げられる。

■MOBIO担当者 兒玉のコメント

100回目の社長インタビューは、業界で「穴掘り達人」と言われている企業の社長さん。
就任以来多くの展示会に参加して気づいたことが、ねじ締め付けの悩みを抱えた企業の多いこと。
工程合理化、製品安全性向上などには標準ねじだけでは不可能と判明。
ひらめいた製品が六角穴付き特殊ねじ。
回転ブローチ加工、シェーパー加工など、自社の得意技でそのニーズに対応。
締め付け時にねじが落ちない加工もするなど、まさに中小企業の価格競争回避策だった。
MOBIOでの出会いも積極活用し、締め付けに悩む企業から「出会えてよかった会社」と言われるための企業改革に邁進中。


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