ＩＴ🎈 Chapter1、Chapter2考察メモ～ベン・ハンスコム編

この記事では、ITの登場人物のうちベン・ハンスコムについての考察を執筆します。最初の記事、および分岐はこちらのページをご参照ください。

🎈ベン・ハンスコムとは

ベン・ハンスコムはぽっちゃり体型の男の子で夏休みも図書館に通いペニーワイズについて調べる真面目さ、音楽の趣味を他人と共有しない内気さ、秘密基地・クラブハウスを1人で作る器用さを、そしてベヴを思ってポエムを書く優しさを兼ね備えています。ベヴに恋をしていて、Chapter２では建築士になっていますが、ベヴのサインを携帯しています。

🎈ベン：子ども時代

ベンには様々な特徴と役割があります。5つに分類できると思うので、順に見ていきましょう。

①１つは、クラブハウスの建設です。
ベンはChapter2で、ルーザーズのためにクラブハウスという秘密基地を作っていたことがわかりました。彼が将来建築士となる布石でもあるでしょうが、クラブハウスは、ベヴをはじめ家庭に居場所がない友達のために、みんなの家を作るという意味合いが強いんじゃないかと思います。ルーザーズが愛で繋がった疑似家族である印象も強まります。

不思議なのは、ルーザーズのメンバーはほとんどが両親との関係のシーンがあるのに、ベンだけは一切親の顔も出ず、家庭の様子が描かれないことです。そのため彼自身が家庭に問題を持っているかはわかりかねますが、転校生であるため、親も一緒にデリーに引っ越してきているなら、ペニーワイズによる洗脳などの影響が薄く、まともな両親なのかもしれません。もし家庭に問題が無いとすれば、クラブハウスは本当に友達のために作ったのであり、かなり友達に献身的であることがわかります。

②2つ目は、ペニーワイズについて調べる役割です。
Chapter1において、ベンは独自に図書館などでデリーの歴史やペニーワイズについて調べています。それが、ビルやルーザーズと仲が深まるきっかけともなっています。友達がいなかったせいでもあるでしょうが、夏休みも図書館に通って調べ事をする真面目な側面が見て取れます。大人になると、この役はマイクに引き継がれます。

ベンがペニーワイズについて興味を持ったのは、転校生だからだと思います。外部から来たベンにとっては、デリーの人々に違和感を感じたのでしょう。だからといって歴史から調べ始めるベンは本当に相当暇…ではなく真面目だと思います。ていうかたまたま転校してきた年にペニーワイズがお目覚めとは、運が悪い…。ベヴと知り合えたからいいのかもしれないけど。

③3つ目は、ベヴへの片思い相手という役割です。
ベンはChapter1の冒頭で、ベヴに恋をします。それ以来、ずっとベヴを思い、デスライトを浴びたベヴをキスで目覚めさせます。ですが、ベヴはビルのことが好きなので、あえなく失恋してしまいます。なので、ベンにとって友達でもあるビルのことは嫌いではないけど、大好きでもないと、ベン役のジェレミーも言っていました。

ベンは他の子に比べても怒りや不満を口にするタイプではないですが、ロックファイトでベヴがヘンリーに悪口を言われたときは本気で怒っていました。

ベヴに送る「君の髪は冬の炎」のラブレターは、冬をデリーと捉えると、過酷な生活環境の中での唯一のやすらぎ、みたいな感じに理解できると思います。「残り火」であることから、消えかかっている炎、つまりベヴの弱い面もわかっている、という意図も感じられます。

ラブレターはポストカードに書かれていますが、そのポストカードには給水塔が描いてあります。これは、ベンがベヴと出会ったとき、持っていた工作？が給水塔だったから、ベンだよ～って匂わせたのだと思います。残念ながらベヴは気づきませんでしたが…。

④4つ目は、内気で孤独である性格です。
ベンはあまりむやみに心を開かないタイプに見えます。趣味の音楽も周りと共有せず、ヘッドホンをして1人で聴いています。転校生ということもあるでしょうが、学校では友達がいませんでした。体型も含め、自分に自信がない子なのかもしれません。しかし徹底的に排他的というわけでなく、自分に優しくて接してくれたルーザーズには優しさを返します。

ベンの内気さ、心を開かないさまは、ベンの特徴の1つとしての「部屋」＝「空間」からも見て取れるかもしれません。
最たる例が、Chapter1でベヴがサインするサインページです。ベヴがサインするまで、その空間には誰のサインもありませんでした。そこに、するりと入ってきて、Chapter2になっても居続けるたった一人の存在がベヴなのです。また、Chapter1、湖で遊んだ日の帰り、ベンは自宅の自室にルーザーズを招待しています、自室にルーザーズを上げたのは描写的にはベンだけなので、「ベンがルーザーズに心を開いている」ということの強調にもなっているかもしれません。

⑤5つ目はヘンリーとの因縁です。
ヘンリーにはChapter1、キスの橋でお腹を傷つけられて以来の因縁があります（ところで、キスの橋には名前を彫る習慣があることからのお腹へのイニシャル彫刻なのでしょうが、ベヴのサインとも重なり、名前を描かれることに関する相反する思い出になっているともとれます）。
ヘンリーは単に、ベンがよそ者だから、また体型や性格的にもいじめられる要素があるから標的にしたのだと思いますが、ベンにとっては脈絡もなく精神的に、また物理的にも傷つけられた深いトラウマになります。

🎈ベン：大人時代

他のルーザーズは大人になってもそのまま大きくなった、という感じなのですが、ベンの場合は細身のイケメンに変化しています。

大人ベンについて、上記５つの役割がどう変化したかから見ていきます。

①家を建設することは、建築士というベンの職業にそのまま表れています。居心地のいい空間を作る、という信念は、Chapter2冒頭の、仕事中のシーンにて、大人になっても変わっていないことがわかります。

他のルーザーズと少し違うのは、ビルやリッチーのように仕事が上手くいっていないわけでもなく、ベヴやエディのように配偶者に束縛されていもいない、一番したい仕事をして順風満帆に成功していると言える点です。ベンは勉強家で多才ですから、職業のため、そして初恋成就のためにひたむきにコツコツ努力をした結果だと思います。

独身であることについてはリッチーもそうなので（リッチーの記事を参照）、惚れた側の弱みなのかもしれません。

②のペニーワイズについて調べる役割は、引き継がれていません。ベンが建築士を目指すために田舎町デリーを離れたことが原因であると思います。

③ベヴへの思いは後述します。

④の内気で孤独である点は、独身ということ、またリモートで1人仕事をしていたことからも、変わっていないように思えます。

しかし、見た目が変わって少し自分に自信がついたようにも見えます。⑤のヘンリーとの因縁も、いじめられた思い出は大人になっても残っているが、そんなに大きなトラウマにはなっていないようにみえます。

また、Chapter2では、ベヴだけでなくエディやリッチーなどを守る行動もよく見られます。エディには中華料理屋で、リッチーに対してはホテルで説得をしたり、蟹スタンに襲われたときに助けたりしていました。子どものころだったら考えにくい行動です。それも、積極的、かつ強い男性になった一面であるかもしれません。

🎈思い出の品

ベンの思い出の品は、ベヴにサインしてもらったサインページです。つまり、③のベヴへの思いに直結します。

他のルーザーズが青春時代の思い出の品をデリーに残し、すっかり忘れていたのに対し、ベンだけはサインページをずっと携帯し、初恋と失恋の思い出を忘れないでいました。ベヴを諦めない心は彼の原動力となり、結果として大人時代に痩身と成功を手に入れたとも言えるでしょう。サインページを肌身離さず持っていたことも、この思い出が恐怖でありながら幸せな思い出でもある証拠かもしれません。
リッチーと比較すると、リッチーが初恋を隠して気持ちから逃げたのに対し、ベンはサインをずっと持っていて、それを糧にハッピーエンドを迎えることができたともいえます。

🎈恐怖の対象

このように、様々な役割と特徴を担わされているためか、恐怖の対象は入り組んでいます。ペニーワイズに襲われた時のことと、恐れていることを整理します。ペニーワイズに襲われるのは、子ども時代に2回、大人時代に1回です。

①クラブハウスや建築という側面では、Chapter2、終盤でクラブハウス（＝ルーザーズの家）の崩壊という形で怖がらせられます。
→①から言えることは、ルーザーズが、自分のせいで犠牲になることが怖かったのではないでしょうか。ビルと同じく、自らのペニーワイズへの好奇心でみんなを巻き込んだという自責の念もあると思います。ベンの場合、孤立していたところをルーザーズの友達ができたことで孤独が解消されているので、彼らを犠牲にしたくないという思いは人一倍強いかもしれません。
Chapter2では、ベンはあまり1人でペニーワイズに襲われないので、大人のときに残った数少ない恐怖が、ルーザーズへの思いやりから生まれた恐怖と言えます。

②ペニーワイズについて調べるという側面では、Chapter1の図書館の地下で、エッグボーイと対峙する形で怖がらせられます。
→この時点では、ルーザーズとはまだ知り合っていないので、ただ単に孤独な子どもであること、ペニーワイズについて詮索し始めたことでペニーワイズに目を付けられただけと考えられます。

③ベヴとの片思いでは、Chapter2の回想内で、学校で燃えるベヴ（？）に襲われます。その際、④内気で孤独であることを、ペニーワイズに詰かれます。
→孤独はルーザーズによって解消されましたが、ベヴに嫌われること、失恋も青春時代の大きなトラウマであり、恐怖だと思います。ベヴに告白して嫌われることは、ルーザーズの友情の崩壊も意味するかもしれません。

⑤ペニーワイズはヘンリーに関する事柄でも、ベンを脅かしています。
ヘンリー関連のペニーワイズの動きを振り返ると、Chapter1のキスの橋でヘンリーにいじめられているところを、風船のみのペニーワイズが通りかかった車の中に現れます。また、キスの橋でやられたようにChapter2、ネイボルトハウスで鏡の中でお腹を切られます。Chapter1の最初にネイボルトハウスに入ったときも、お腹を傷つけられています。
ヘンリーとの直接の因縁については、Chapter2でエディを襲った大人ヘンリーを見て、記憶をフラッシュバックさせています。
→ヘンリーがベンをいじめたのは、太っていてひとりぼっちだったからだと思います。そのことは、ベンが自分に自信を持てない要因にもなっていたでしょう。
ですが、大人になって肉体改造し、ルーザーズという仲間もいることで、ある程度自分への自信はつけられていると思います。それが、大人時代にヘンリーに直接襲われなかったこと、そして最後のベヴへの告白に繋がったのでしょう。Chapter2において、ベンだけ1人の時に襲われることが少ないことも、もう脅すネタが無かったからであるとも考えられます。ペニーワイズとしては、弱虫を脱却してしまったベンに自信を失ってほしかったので、ヘンリーを送りフラッシュバックを狙ったと推測できます。

ただし、ヘンリーとペニーワイズに腹部を傷つけられた、というのは物理的な痛みですので、理不尽な暴力へのトラウマは残っていたと思います。

以上が、ベンに関する考察です。