ＩＴ🎈 Chapter1、Chapter2考察メモ～ヘンリー・バワーズ編

この記事では、ITの登場人物のうちヘンリー・バワーズについての考察を執筆します。最初の記事、および分岐はこちらのページをご参照ください。

🎈ヘンリー・バワーズとは

ヘンリー・バワーズは、デリーの不良集団のリーダー格の少年です。攻撃的でサディスティックな性格で、ポケットナイフを持ち歩いています。いじめっ子ではありますが、彼自身も父親に虐待されていて、ペニーワイズにそそのかされ父親を殺してしまいます。Chapter2では精神病院に入れられていましたが、ペニーワイズの駒となりルーザーズを襲います。

ヘンリーは上下関係を異常に意識していて、自分が支配する側に立っていないと気が済まないといった性格が見られます。人種、ジェンダー、性的指向、体型、差別できることは徹底的にする差別主義者です。

彼がそういった支配に拘る性格になったのは、やはり父親との関係でしょう。デリーの警察官であるヘンリーの父親は、息子に向かって発砲することも辞さない、サディスティックDNAの強さが感じられる親です。出かけるヘンリーに酒を買って来るよう命令する描写もカットシーン（未公開シーン）にはありました。未成年なのに。
つまりヘンリーは、デリーにおける加害者でもあるが、被害者でもある＝彼もルーザー（敗者、被支配者、弱者）であるというふうに捉えられます。

そうした暴力による支配、抗えない暴力への恐怖をそのまま受け継ぎ、家庭以外で被支配に回らないように努力する一種の自己防衛が、彼をいじめっ子にさせたと言えるでしょう。ある意味で、マイクと同じ「やられる前にやらなきゃやられる」という思考が、ヘンリー、そしてバワーズギャングのメンバーの共通認識であるとも言えます。

🎈バワーズギャング

ヘンリーが1人で行動せずバワーズギャングという仲間を作って、グループで行動していたのは、やはりルーザーズと同じく家庭に居場所が無いため、居場所を欲していたからかな、と思います。とはいえそこでも上下関係は意識されていて、Chapter1でキスの橋にてベンをいじめたシーンで、反撃されてナイフを失くしたときに、仲間がヘンリーの指示待ちみたいな状態でした。ヘンリーが指示・支配し、仲間が従うことでヘンリーに守られる、ウィンウィンな関係になっているように見られます。
（単に何かあったとき複数のほうが便利だから、とも考えられますが。）

そのため、絆で繋がり、お互いを尊重するルーザーズとは異なる繋がり方をしていたことには留意すべきと思います。

ペニーワイズは、バワーズギャングの1人、パトリック・ホックステッターを誘拐（？）します。普通、ペニーワイズが子どもを連れていくときは食べられちゃうことが多いのですが、パトリックはChapter1,Chapter2の端々でゾンビ姿で登場するので、食べるために連れていかれたのではないと思います（そもそもパトリックが子どもかどうかも微妙なラインです）。

パトリックは他のメンバー（ヴィクターやベルチ）と比べても、スプレー缶とライターという武器を持っているキャラですし、いなくなった時の喪失感は1番大きいかもしれません。

そのため、ヘンリーを囲い込むためのペニーワイズの戦略なのではないかと思います。ヘンリーの居場所と仲間を奪って孤独にさせ、襲おうとしていたか、もしくは当初からヘンリーを駒として使おうと思っていたのだと思われます。

パトリックは、Chapter1でヘンリーが父親を殺すところをテレビの中で見守る他、Chapter2ではゾンビ姿で大人になったヘンリーを迎えに行きます。その点では、やはりヘンリーの「仲間」、そしてヘンリーが1人で戦わなければならないときに精神的に支える役目という側面が強そうです。

🎈ペニーワイズとの関係

ペニーワイズは、なぜヘンリーを駒としてえらんだのか。
それは第1に、ヘンリーがルーザーズにとっての現実的な恐怖で、物理的かつ現実的な暴力であるからだと言えます。支配する努力をしていたので、デリーの子どもたちを服従させやすく、本人にも素質があります。弱者を怯えさせて支配する、という点では、ペニーワイズと気が合うとも言えます。

第2には、ヘンリーにとっての恐怖の対象（父親）を排除する手伝いをするかわりに、ペニーワイズにとっての恐怖（ルーザーズ、中でもマイク）を排除する手伝いをしろ、という交換条件のもと支配できる都合のいい子どもだったとも考えられます。
失くしたポケットナイフをヘンリーに届け、親殺しを助けることで、ヘンリーは恐怖から解放されたのです。父親の支配から解放されたところで、皮肉にもペニーワイズがヘンリーの支配者となるわけですが、ヘンリーがペニーワイズを崇拝ともとれるほどに忠実であることは、もしかするとはじめて「善意」を向けられたからじゃないかな、と思います。ある意味で恩返しです。親から解放してくれた救世主が、ペニーワイズなのです。そして共通の排除すべき対象がルーザーズとなります。

🎈思い出の品

ヘンリーは1989年の精神状態のまま大人になっているっぽいので、青春を忘れていたわけじゃないと思いますが、ヘンリーが青春時代に戻るためにペニーワイズが用意したのは、ゾンビパトリック・ホックステッター、ポケットナイフ、そしてトランザム（車）です。
彼の青春は、仲間、弱者への暴力と支配、そして親殺しの快感なのかなと思います。また、バワーズギャングという仲間や、彼らと乗ったトランザムは、ヘンリーの家ではない「居場所」の思い出だと言えます。

Chapter2にて、ポケットナイフをゾンビパトリックから受け取ったヘンリーは、すぐさま精神病院のスタッフたちを殺します。精神病院が大人ヘンリーの家だとすると、スタッフは親であり、第2の親殺し（自らを支配する存在との逆転と解放）が行われ、ヘンリーは新たに自由になったと言えます。

以上が、ヘンリーに関する考察です。