【趣味記事】『MIU404』で恐らく世界で俺だけが気付いている最終回の意図
株式会社MOBESTの桝本力丸です。
映画を作ったり、漫画の原作をやったりしている、
この海で一番自由な脚本家(自称)です。
僕は『MIU404』というドラマが超超超大好きなんですが、それについての完全に個人の趣味的なノートを書こうと思います。
もちろん、僕が所属しているMOBESTとは全く関係のない記事ですので
悪しからず…。
最初に書いておきますが、こちらの記事は完全なる僕の妄想を書き殴ったものでしかありません。
ただのファン記事なので、きもい文章が載っております。
お気をつけて………。
野木亜紀子さん、LOVEです
『MIU404』の脚本を担当されている野木亜紀子さんを僕は大変敬愛しております。正確に言えば、僕と同年代(いま20代序盤)の脚本家志望は全員、野木亜紀子さんのことを一つの里程標にしていることでしょう。
それだけやっべぇんです。あの方の書くシナリオは…。
特に野木さんの代表作でもある『アンナチュラル』と『MIU404』は、もう本当に異次元に面白いテレビドラマです。幅広い世代が楽しめるエンタメ性の裏に、芯のある倫理観が宿っている。フラットで、パワフルで、優しい。そんな光と情熱と冷静さが織り交ざったようなシナリオが、僕は大好きなんです。
さて、野木亜紀子さんへのラブレターならいくらでも書けるのですが、このノートで僕が伝えたいのは『MIU404』の最終回のとある演出についての僕の解釈です。
もちろんネタバレ注意なので、見ていない人は見てからこの記事を……まあ僕の記事は別に読まなくていいです。ドラマを見てください。時間が溶けますから。
諸君、『MIU404』の最終回は、〇オチではない‼
『MIU404』の最終回を見た人々は、きっと誰もが同じ感想を言ったはずです。
「あ、今のって夢オチなんだ」
僕も、最初…そう思っていました。
ラスボスである久住(菅田将暉)が、伊吹藍(綾野剛)と志摩一未(星野源)に銃で撃たれ、どちらかを殺すバッドエンドを展開します。絶望に染まる物語ですが、突如2020年の東京オリンピックやコロナ禍のフラッシュバックが挿し込まれ、事態は一変。
無傷で目を覚ました伊吹と志摩は、「悪い夢を見た」と立ち上がり、船から脱出し、久住との最終決戦に挑むことになります。
「最終回でかつてないピンチを演出するために、『二人が殺される夢』を視聴者に見せるという凄まじい荒業で盛り上げてきたな!」
と当時は驚きつつも、どこか心の中で「野木さんらしくないな…」と思っておりました。
後方理解者面で恐縮ですが、野木さんの脚本でこのようなパワー重視の夢オチ展開を書くような脚本家ではなかったような気がしたのです。もちろん、僕もシナリオライターの端くれ、例え整合性を無視してでも、ストーリーを盛り上げることの大切さは知っているつもりです。
ただ、僕は『MIU404』の最終回から、若干の違和感を得ていたのです。
怪物級のシナリオライターである野木亜紀子さんが、このタイプの夢オチを自分の中で通すのだろうか…? 通したのだとしたら、何か僕が思い至っていない裏があるのではないか…?
同じように感じた視聴者も多いらしく、ネットには当時こんな記事が上がっていました。
おかしい…。
確かにコロナウイルスによるパンデミックで、当初の予定から大幅に脚本が変更されたという話もあった。
でも、コロナが蔓延して尺が縮んだからと、脚本家が夢オチを書く理由にはならない。
間違いない。
僕はあの方の真意に気づけていないのだ。
何か、凄まじい意図があるはずなんだ。
僕がシナリオライターとして生きていくには、そこをしっかりと汲み取れるようにならなければダメなのに‼
そうして思考の海に潜った僕は、この『MIU404』の夢オチに、一つの仮説を立てることに成功しました。
そう、あくまで仮説です。
万が一、この仮説が当たっているにせよ、外れているにせよ、ただの制作側への営業妨害なのでこうしてノートに書くべきではないのでしょう。
しかし、当時コロナ禍の大学生で、何の結果も出せず悶々としていた僕が、これをどこかに書き残しておきたいと、今になってもどうにもならない欲求を訴え続けているのです。
なので、noteというサイトの片隅にこうして残しておくことにしたのです。
これはただの憶測で、仮説です。
以下、話半分に聞いてください。
世界線の分岐が起きている
この仮説の軸となるのは、伊吹と志摩が久住に敗北したのは、どちらの描写も事実だったという仮定です。
ここで世界線が分岐されたと考えてください。
あれです。恋愛ゲームとかによくある、選択肢で分岐するルートみたいなものです。
Aの世界線=伊吹と志摩が久住に敗北したバッドエンド
Bの世界線=伊吹と志摩が久住を逮捕したトゥルーエンド
このように
久住が勝つか、負けるか、で世界線が分岐していると仮定します。
そして「Aの世界線=伊吹と志摩が久住に敗北したバッドエンド」では、その後のフラッシュするインサートで2020年に東京オリンピックが開催されたことが描写されます。
そしてご存じのように、現実ではコロナウイルスの影響で2020年に東京オリンピックは開催されず、一年延期した2021年に流れ込むことになりました。恐らく放送当時、すでにこの事実は発表されているので、2020年に東京オリンピックが開催される描写を入れたのは、あえての選択だったと思われます。
つまり「Aの世界線=伊吹と志摩が久住に敗北したバッドエンド」では、コロナウイルスによるパンデミックが発生していないのです。志摩が殺され、伊吹が邪悪な久住の手に堕ちるというバッドエンドですが、その世界線ではコロナのパンデミックは起きないIFのルート。
伊吹と志摩が負けた方が、世界にとっては都合がよかった、と言うオチです。
逆に「Bの世界線=伊吹と志摩が久住を逮捕したトゥルーエンド」では、現実と同じようにパンデミックが発生し、オリンピックが延期されております。
作中で何度か取り上げられる「ピタゴラ装置」への言及が表す通り、二人の勝利と敗北が、世界に何らかの影響をもたらしていたのです。
そしてもう一つの仮説の軸となるのが、久住は「Aの世界線」では死んでいなかった。という仮定です。伊吹に銃で撃たれる久住ですが、彼の性格上相手を挑発するのであれば防弾チョッキの一つは着ているでしょうし、そもそも血一滴流さず目を開けて絶望の瞬間を眺めています。
恐らく、久住はこのあと伊吹を出し抜いて、逃走に成功するのでしょう。どちらにせよ、久住が勝利したことに、このエンディングは変わりありませんが…。
バッドエンドではコロナのパンデミックは発生しない。
トゥルーエンドではコロナのパンデミックが発生する。
バッドエンドでは世界は平和で、トゥルーエンドでは世界はカオスの中にある。酷くシニカルな対立構造が、ここでは描かれています。
では、なぜ久住が勝利するとコロナのパンデミックが発生しないのか。そこにはもう一つ作中で示唆されている情報があるのです。
久住は二人から逃げて、どこへ向かうつもりだったのか。
ドーナツEPという、危ない薬を売りさばいている久住ですが、彼と対峙した志摩はこう言います。
「確か阿片で滅んだ国があったな」
阿片で滅んだ国…そう『満州』です。
そしてこのセリフから、久住がこの後どこへ逃げようと企んでいたのか、なんとなくですが…わかります。
隣国である「あの国」に、彼はその身を隠そうとしていたのでしょう。
ここからは、僕の仮説が憶測である最大の理由になるのですが、みなさんコロナウイルスの発生源とされている国を覚えているでしょうか? これは今や闇に包まれた事象であるので、ハッキリと断言はできませんが、最初にニュースで報道されたのは、あの国だったはずです。
それが噂されるウイルス実験による影響だったのかはわかりませんが、恐らく久住は、あのあと「あの国」に辿り着き、何らかの問題を起こしたのでしょう。それこそ、パンデミックが起こらないほどの絶望的な事態を繰り広げたのかもしれません。
久住を逃がせば、「あの国」で暴れまわり、コロナウイルスのパンデミックを未然に防ぐほどの事態を起こしていた。
しかし志摩と伊吹がそれを止めたことで、世界は混沌の中に落とされた。
『MIU404』で描かれた夢オチと呼ばれた展開は、凄まじい冷酷かつ皮肉的な対立構造で描かれた世界線の分岐だったのではないでしょうか?
ただ問題なのが、この仮説が合っているからと言って、何かポジティブで感動的な真実が浮かび上がるわけではありません。
物語におけるハッピーエンドが、現実の幸福と繋がるわけではないということだけです。
しかし、あの夢オチにこのような裏の意図があったと考えるならば、僕の中で『MIU404』のテーマが、ふっと星座のように結び付くような気がしてしまうのです。
以上が、『MIU404』の最終回における僕だけが気付いている真実、というやつです。
何度も言いますが、これはただの仮説です。
当然、穴もあります。そもそもその設定を示唆したいのならば、伊吹が久住を撃つシーンはノイズになりますしね!
吐き出せてすっきりしました。
とにかく『MIU404』、すごく大好きです! めっちゃ面白いです!
今月の「月刊ドラマ」、野木亜紀子さんの特集らしいです。
みんな買いましょう!
お疲れさまでした。
桝本力丸
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