在宅勤務だけではやっぱりダメだ…な3つの理由
LINEヤフー社が社員のリモートワーク(在宅勤務)を縮小する方針を発表したのを受けて、在宅勤務の是非をめぐる議論?が改めて盛り上がっています。
フルリモートワーク。
ひとりの従業員としては、とても助かる制度だと思っています。
子供をすぐに病院へ連れていける。
仕事の合間に家事ができる。
そして何より、満員電車で通勤するストレスから解放される。
プライベートの生活へのメリットという点では、在宅で仕事ができたほうがありがたいのは間違いありません。
しかし…仕事で成果を出すという観点では、在宅勤務だけだとかなり厳しいと思います。
先日、猫山課長の「リモートでいいって人は人間舐めてんすよね」というポストにリポストさせていただきました。
「他者との関係」を十分に保てない…
これこそが、在宅勤務の致命的なデメリットだと思うのですよね。
では、なぜ、在宅勤務ばかりだと、他者との関係が疎か(おろそか)になってしまうのか?
その理由を掘り下げてみたいと思います。
理由は3つあります。
理由1: ユーザーを十分に理解できない
どんなサービスや製品も、利用するユーザーは「生身の人間」です。ユーザーが求めるサービス、支持されるサービスへと磨き込むためには、ユーザーである「人間」を深く理解することがとても重要になってきます。
ユーザーを理解するには、実際にサービスを利用してもらってその様子を観察したり、サービスを利用した感想や要望を対話を通して聞き出す取り組みが不可欠です。
で、在宅勤務しながらユーザーと対話を行うとなると、ZoomやTeamsなどのオンライン会議ツールを利用することになるわけですが…PCの画面越しに相手の言葉を聞いただけで、目的は達せられますかね…?
例えば、サービスを使ったユーザーが「使いやすいです」と答えたとします。でも、実際にはどこか不満がありそうな表情を浮かべているかもしれない。
このような微妙な表情の変化、機微をとらえるのは、zoomだとムリですよね。見落としてしまうでしょう。
「あのボタンを探しているときに、ちょっとイラっとしていそうだったな」…とか。
「とくに要望はないと言っていたけど、いろいろ不満がありそうな表情だったな」…とか。
私もあなたも同じだと思いますが、人間って、思ったことや感じたことを全部言葉にして正直に言うことなんてありませんよね。
言葉に出てこない部分まで含めて観察しないと、本当のユーザーの姿をとらえるのは難しい。
在宅で仕事をしていると、そのようなユーザーの機微を感じ取ることがなかなか難しい。
…にも関わらず、オンラインでちょっとユーザーにインタビューしただけで「ユーザーを理解できた」と言い張るのは、傲慢ではないでしょうか…?
理由2: 仕事仲間を十分に理解できない
職場での仕事におけるコミュニケーションについて考えてみましょう。
在宅勤務であっても、オンライン会議ツールを使えば、日々の仕事の進捗状況を共有しあったり、サービスの仕様について議論することも、できることはできる。でも、画面越しでは、相手の細かな表情や声のニュアンスまで把握するのは難しいですよね。
例えば、重要なプロジェクトの方向性についてステークホルダーを召集して議論を行い、いったん結論が出たとします。会議の最後に、形式的には全員の了承を得られたとして…誰が本心から納得していて、誰が不満を抱えていそうなのか?zoomの画面越しに、ひとりひとりの感情を感じ取れますかね…?誰かが、腕組みをしながら密かにムスッとしている様子を、見逃さずにとらえられるでしょうか…?
もうひとつ。
例えば、負荷の高いタスクをプロジェクトメンバーに依頼した時。相手から「大丈夫です」という返事が返ってきたとします。本当に大丈夫かどうか、PCの画面越しに分かるものでしょうか?
相手は、もしかしたら残業続きで疲れがたまっているにも関わらず、ムリをして「大丈夫です」と答えてくれたのかもしれません。本当は疲れた顔をしているかも…。
その言葉を本当にそのまま受け取ってよいのか?
どこかに問題が隠れていないか?
オンライン会議ツールで話をするだけでは、相手の表情や仕草、わずかな間の取り方から、相手の本当の様子を感じ取ることが難しいのですよね。
仕事の職場に限らず、人間関係は、画面越しに伝えられる「ロジック」だけでは不十分で、「感情的なつながり」なしでは構築できない部分が多々ありますが、在宅勤務ではここにも大きな限界があります。
こんな状態では、チームメンバーとの一体感、信頼感もなかなか生まれようがありませんよね。
理由その3: 上司の「背中」から学べない
新卒社員の教育について考えてみましょう。
社会人としての仕事の進め方や、プロフェッショナルとして仕事に向き合う姿勢といったものは、座学で学ぶというよりは、実際の体験を通じて学ぶものですよね。
中でも、上司の「背中」を見ながら学ぶことはメチャクチャ多いはず。
例えば…
顧客との商談中、上司はどのような話し方、態度で相手に接しているか?
顧客からの厳しいクレームの電話を受けた時、上司はどのように対応しているか?どのような表情をしているか?電話を切った後の様子はどうか?
納期直前のプレッシャーの中で深夜残業をしている時、上司はどのような態度で仕事を進めているか?どのようにストレスに対処しようとしているか?
このようなことって、リアルの場で上司をそばで観察するからこそ学べる、マネできることですよね。
ても、在宅勤務だと、(当たり前ですが)上司はその場にはいないので、上司の「背中」を見て何かを学ぶ機会がごっそり奪われてしまいます。
リモートワークか出社か?…の論争が盛り上がる中で、「在宅勤務でも問題ない」派の方も、少なからずいます。
「在宅勤務だと生産性が上がらないというのであれば、定量的なエビデンスを見せてほしい」
「在宅勤務だとコミュニケーションの観点で問題があるというのであれば、根拠を教えてほしい」
個人的には、このような突っ込みに対して定量的に反論できるデータがはたして存在するのかどうか、分かりません。
(以前、米国企業での研究結果の記事をXで見かけてリポストした記憶があるのですが、詳細を失念してしまいました)
ただ、それにしても…
フルリモートで在宅勤務を続けた場合、「他者」との関係性に対する感度がどんどん鈍っていってしまうのだよ…ということだけは、間違いなさそうです。
そう思いません?