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『遙かなる時空の中で7』宮本武蔵ルート感想

『遙かなる時空の中で7』、宮本武蔵ルートの感想です。

本作の八葉には武将もいて、攻略対象としては主人公よりかなり年上の男性たちが多いなかで、唯一年下なのが武蔵でした。元気いっぱい七緒を慕っている姿も、剣に打ち込む姿もとにかくひたむきで可愛いのなんの。すごく応援したくなる男の子だと思いました。

努力の少年

宮本武蔵といえば日本一有名な剣豪で、数多くの小説や映画などの題材になった人物。しかし、このゲームでの彼はまだまだ発展途上な剣術少年として登場しました。

剣術が大好きで、毎日修行に明け暮れている武蔵ですが、七緒たちと出会ったばかりの頃はなかなか才能が開花しませんでした。試合では負けが続き、剣を教えてくれた父も、すでに息子の才能を見限っていました。

そのうえ、彼の前には天才・佐々木大和が現れます。幼い頃から修行を積んできた武蔵に対し、大和は異世界に来て初めて刀を握ったにも関わらず、すぐに才覚を発揮しました。
これにはさすがの武蔵もこたえるかと思いきや、彼は瞳を輝かせ、めげることなく大和に勝負を挑みます。自分は努力してもなかなか成果が出ないのに、天賦の才ですぐに己を追い抜いていく大和をひがむことがないのは武蔵の得難い美徳だと思います。しかも、ちゃんと悔しくて、何度やってもなかなか勝てないのに諦めることを知らない。その精神に敬服しました。
最初は面倒がっていた大和も、やがて剣の道に惹かれ、そんな武蔵と無二の好敵手になっていきます。彼らの関係性が羨ましいほどまぶしくて、物語後半では二人の会話の度に嬉しくなってしまいました。

余談ですが、自分の父に受け入れてもらえなかった大和が、武蔵のことを剣士として認めようとしない彼の父親に対して怒りをあらわにするシーンがとても好きです。大和のなかに、武蔵への友情、剣士として好敵手に一目置く心情、父に認められない子どもに寄り添う優しさなどを感じました。彼ら二人の関係は、本当に素敵だと思います。

少年たちの成長

本作で年下キャラクターらしい特性を唯一背負った武蔵。
恋って何なのか、自分は姫様のことをどう思っているのか……と考え込む姿が本当に素直で可愛くて仕方ありませんでした。それを七緒本人に質問しちゃうところとか、他の人にも聞いてみるといいよと言われて大和に相談するところとか、あまりの素直さにニヤニヤが止まらなくなりました。

大和と同じく、天地の朱雀として「成長」というテーマを背負っていたようにも思います。
対比構図としては、天才と努力家、なのでしょうか。なんでもそつなくこなして才能はあるけれど、なかなかひとつのことに打ち込めなかった大和と、幼い頃から剣に打ち込んできたけれど、なかなか芽が出なかった武蔵。
彼らがお互いに敬意を持って、切磋琢磨できるということが本当にすばらしく思えます。

このルートでのみ、修行をした武蔵は背が伸びて体つきがたくましくなるのもいいですね。アップデートするのはその部分のみかと思いきや、さらに途中で二刀流になるのは「おお!」と思いました。大和にもルートに入ったら刀が変わるというグラフィック変更要素がありましたが、武蔵がさらに二段構えで進化するのはすごくグッときます。

「剣豪将軍」足利義輝

様々な剣豪たちを目標としている武蔵ですが、そのなかには「剣豪将軍」と言われた足利義輝の存在もありました。

足利将軍家も、応仁の乱の後、なんとか力を取り戻そうとあれこれ手を尽くしたのでしょうが……。時代の流れというのは残酷ですね。義輝もまた、無念のうちに命を落としました。
それでも、武蔵と語らう彼は確かに武蔵の師匠でしたね。彼が怨霊として呼び出されたことは不幸でしたが、彼が武蔵と出会えたことだけは得難い幸運だったのかもしれません。

怨念にのまれた義輝からの猛攻を受けた際、七緒を守ろうとして武蔵が二刀流を使う場面は胸が熱くなりました。やっぱり少年が何かを乗り越えて強くなっていく姿は本当にいいなと思います。

最終決戦に至る流れは、これまで見てきたルートのなかで一番王道RPGっぽいといいうか、少年漫画のような盛り上がりがあって高揚しました。
関ケ原の合戦の最中だというのに、仲間たちがどんどん集まってくるのはすごく熱い! しがらみが少なく、剣の道に生き、仲間たちの誰からも信頼される武蔵のルートだからこそ、こういう展開が見られるんだろうなぁと思いました。

ついていくか、離れて想うか

恋愛劇の結末として、武蔵ルートでは現代に戻って離れていても彼を想い続けるか、異世界に残って武蔵についていくかのどちらかを選ぶことができます。その作りも、すごく面白いですね!

武蔵も大和も、七緒のこととは関係なく、剣に生きる道を定めているところが興味深かったです。そのうえで、武蔵はついてきてほしいとは言わないのですが、七緒は自ら彼と一緒にいることを選ぶことができます。
武蔵も七緒も自分の人生を自分で選んでいい、というところに、現代の恋愛ゲームらしさを感じました。
もちろん、選んだ先の人生を背負うのも自分自身です。

織田の姫としての身分も、現代で得た家族も振り捨てて、武蔵と生きることを選ぶのはかなり勇気のいることだと思いますが、それでも彼ら二人ならたくましく自由な人生を切り拓いていけるような気がします。


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