『遙かなる時空の中で7』天野五月ルート感想
『遙かなる時空の中で7』、天野五月ルートの感想です。
最初に幸村ルートを攻略してしまったため、最後に攻略するのは五月にしようと途中で決めました。五月ルートでの展開は、幸村ルートでの彼の言動から察しがついていましたが……。人として七緒と、最も長い時間を過ごしてきた彼らしく、またとても人間らしいストーリーだったと思います。
どこか自信のないお兄ちゃん
星の一族であり、兄でもある五月は七緒にとって本当に頼りになる存在。
戦国時代オタクで知識も豊富、陰陽術にも通じている「スーパーチートキャラ」なのですが、なぜか本人は自分を過小評価しがちなところがありました。
それは幼い頃、何をやっても敵わなかった双子の兄・三鶴を失うという経験をしているため。
彼は、本当は自分ではなく兄が七緒の八葉に選ばれるべきだったのではないか、今の自分の立場は仮初めのものに過ぎないのではないかとどこかで思っていたようでした。
それでも七緒にとって、現代でずっとそばにいてくれたのは他の誰でもない五月です。七緒がすごく自然と五月を慕っていて、五月も彼女をとても大切にしているので、この兄妹の絆は本当に素敵に思えました。
個人的には五月のお兄ちゃんらしい側面がとても好きだったので、恋愛が進行しないまま過保護な兄として七緒を見守っていく姿もいいなと思います。
兄ではなく男として
五月が七緒を妹としてではなく女性として扱うと宣言する「流れ星を見上げながら」のイベントはちょっとドキドキしてしまいました。血の繋がりはないとはいえ、七緒と五月は本物の兄妹として過ごしてきた時間が長いだけに、意識の切り替えが少しずつ進んでいくことに、むずがゆいような気持ちになります。
それでも、後ろから七緒を抱きしめる五月の穏やかな表情が素敵で、とても美しい場面だと思いました。
その後、間接キスについて意識したり、水筒を取り違えないように気をつけたりする場面も、二人の初々しさが非常にこそばゆかったです。
やわらかい感じの彼のしゃべり方や物腰や、七緒との信頼感をとても好ましく感じていたので、ストーリーの途中で徐々に彼が張り詰めていくのは心配になりました。彼持ち前の優しさを失わず、七緒のそばで一緒に平穏な幸せを築いてほしいと思います。
一人の女の子としての幸福
七緒が龍神となってしまっても彼女の意志を尊重した幸村と違い、「普通の女の子として幸せになってほしい、できるなら自分のそばで」と五月は願います。
彼女の正体に気づいた五月は、あらゆる手段を使って彼女を人のまま留めようと必死でした。怨霊を呼び出す陰陽師をボコボコにしたり、七緒を城内に軟禁したり、果ては現代から戻って来れないよう工作したり……。どんな手を使っても、と彼が自分を追い詰めていくのは痛ましかったです。
その努力もむなしく、七緒は戦のなかで怨霊に襲われた人々を守ろうとして力をふるい、龍神になってしまいました。
それでも諦めず、もう一度龍神を七緒という少女に戻せないか足掻く五月の姿には、非常に人間らしさを感じました。
名前が鍵になり、言霊によって彼のもとに人として七緒が戻ってくる場面は素直によかったと安堵しました。
「言霊」は五月の大きなキーワードですね。「できるぞー!」と自分を鼓舞するシーン、こちらまで勇気付けられるようでとても好きでした。私も見習っていきたいです。できるぞー!
五月の願いのとおり、龍神としての力を失った七緒が現代に戻り、普通の女子大生になるという結末を迎える唯一のルートとなりました。天地の青龍で、本当に結末が大きく違うなぁと感慨深くなります。
石田三成という人物
石田三成の正体こそ、かつて現代から異世界へと消えてしまった五月の兄・天野三鶴でした。
異世界に迷いこんだ三鶴は秀吉に拾われ、居場所を与えてくれた秀吉のために尽くすことを誓ったそうです。
他のルートでは三成と五月の再会は果たされぬままなのですが、ついに双子が対面する場面ではかなり胸が熱くなりました。三成として、今後自分がどうなるか理解している三鶴は、自分の運命に弟を巻き込むまいとしていたのですね。
「三成」という名前を秀吉からもらったとき、彼はどう思ったことでしょう。豊臣の天下が終わっていくことを知っていて、少しでもよい結果を求めようと、ずっとひとりで足掻いていたのかもしれませんね。
白龍に双子が乗って時空を越えるという展開、そして三鶴がやっと生まれた家に戻ってくる光景は、見られてよかったと心から思いました。
三鶴はまもなく、三成として気がかりの残る異世界にやはり戻ってしまったようですが……。もっと彼ら三人が一緒に過ごしているところをたくさん見たかったなと思います。
「いつか、また」という約束が果たされる日を待ちたいです。