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『遙かなる時空の中で7』直江兼続ルート感想

『遙かなる時空の中で7』、直江兼続ルートの感想です。

正直、最初に攻略した真田幸村ルートがあまりに感動的で満足感があったので、これほどのものはなかろうと高をくくっていました。しかも、兼続はそれほど私個人の好みのタイプというわけでもなかったのです。
しかし、私の予見は見事に打ち砕かれました。兼続と神子の恋物語、とてもすばらしかったです。

繰り返される詩の美しさ

兼続ルートのよかったところをいくつか挙げたいのですが、まずひとつは兼続の教養の高さ。
自分の思いを有名な和歌などに託してそらんじて見せるような場面がいくつも登場しています。それにならって、兼続と会話する七緒は若干教養が高く設定されているような印象がありました。
私が最初に「兼続との恋愛、ちょっといいかも……」と思ったのも、七緒が「音に聞く高師の浜のあだ波は」と返す「三井晩鐘」のイベントでした。

第四章の茶会での七緒のふるまいも、いかにもしたたかな貴族女性といった感じですよね。そういう意味で、兼続といるときの七緒が好きだなと感じたのが心が動いた最初のキッカケだったように思います。

三成との別れを、ろうそくが代わりに泣いている詩に託す場面が二回出てくるところもまた、深みを与えてくれます。二度目の別れのとき、自然と「ああ、もう三成とは会えないのだろうな」と感じてしまいました。

誰も飢えない国へ

次に、上杉の執政としての、誰も飢えない国を作るという志。
何気なく聞いた兼続の欲しいものに「腹いっぱいの握り飯」と答えられたとき、七緒は最初それを冗談だと思ったようでした。でも、兼続の治める北の大地米沢では、作物がなかなか思うように育たず、農民が食い詰めることが日常的に起きていて、兼続はそのことに頭を悩ませていました。
そんな彼の苦悩を知った七緒は、現代からジャガイモの種芋を持ち込み、兼続に与えます。北の大地で米を作ることが今は難しくても、努力を続ければいずれは米所になる。それまでは、寒さに強いジャガイモを栽培して食いつなごう、誰もがお腹いっぱい食べられる国を一歩ずつ目指していこうと。

このときのことを、兼続は「君は俺に希望をくれた」と表現していて、心が震えました。
国を預かる者が守らなければいけない基本は、食と安全。食べ物を行き渡らせることと、安全を保障すること。
武将としての側面(安全保障)にばかり目が行きがちな戦国という時代のなかで、食について心を砕いている側面をここまで描いてくれるなんてと驚かされました。たとえどんな武功を挙げたとしても、結局戦のあとに民を飢えさせては意味がありません。

敗軍の将となる兼続ですが、それでも彼が農業改革を始めた米沢の地が彼の手元に残ったことで、未来への希望を鮮やかに描き出してくれました。

理性の奥の情の深さ

さらに、石田三成との友情の厚さも彼の魅力のひとつです。
幸村も交えたこの三人の友情については何度も描かれていますが、まさか兼続が関ヶ原の合戦に立ち会って、三成を救い出すとは思いもよりませんでした。
重傷を負った三成を救おうとする兼続の必死な姿には本当に胸を打たれました。龍穴を通って現代に行けるのは神子と八葉だけ。三成を救うため、現代に逃がしたいと思い詰めるあまり「なあ、俺の腹に入ってる八葉の証の龍の宝玉を腹をかっさばいて、取り出して三成に埋めこんだら三成が八葉にならないか?」と言い出す場面では、普段の彼と比べての余裕のなさに私まで動揺してしまいました。

カピタンに三成が殺されたことを知っての彼の悲しみの深さは、計り知れません。「何もできなかった」と苦しむ姿が本当に痛ましかったです。佐和山城の部屋には、三成がむごたらしく殺されたあとが残されていました。最期まで彼は勇敢だったのですね。
そして、やっと石田三成が誰なのかを私は理解しました。

羽衣を失った天女

兼続ルートでは、七緒は天女にたとえられています。
私は先に幸村ルートを終えていたため、七緒はまさしく彼の言うとおりの神秘的な存在であったことがわかっていました。

それでも、兼続は彼女を神の世界には還さず、代わりにこの地で最高の幸せを彼女に贈ろうと言ってくれます。言葉のとおり、兼続は彼にできる限りの力でいつも七緒を守ってくれて、仕事の成果を報告してくれたり、寂しくないようそばにいて、喜びを分かち合ってくれました。その思いやりを感じるたびに、二人の絆が尊く感じられたものです。

SNSでも書いたのですが、兼続との物語では、ただ七緒に甘い言葉をくれるだけではなくて、生活に根差した苦楽を分かち合うような描写が多かったことが非常に好ましかったです。愛の言葉は単に「好き」だとか「一緒にいたい」というだけではなくて、この物語の最後の場面のように、「君にこの光景を見せたかった」と言って彼の仕事の成果である稲穂の波を見せてくれるようなものもとても素敵だと思うのです。

彼の言葉があまりに美しくて、七緒が天から彼のもとへと降りてきた存在として、人の営みのなかで金色の幸福に迎えられるよう願いたくなりました。

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