『遙かなる時空の中で7』真田幸村ルート感想
『遙かなる時空の中で7』、真田幸村ルートの感想です。
私にとって本作で最初にクリアしたのがこの幸村ルートだったのですが、本当にシナリオが感動的ですばらしくて、何日も余韻が心に残ったままです。愛おしくて切なくて、息が苦しくなるほど泣いてしまいました。
幸村、とにかくカッコいいです。そして可愛い。友情に厚くてめちゃめちゃいい奴。人間ができているのに、元ヤンキーとかちょっと隙があるところもずるいです。可愛い。(二回目)
運命の出会い
現代で突然出会った主人公の七緒に対し、彼は最初から最後までずっと紳士的な態度でした。七緒が若い女性だからと侮ったり軽んじたり、七緒の意思を尊重しない場面が全然ないところに彼の人格が表れていると思いました。
七緒を「姫」と呼ぶようになる過程は非常にスマートでしたね。このシナリオ、天才の所業かと思いました。大絶賛。
兄である五月が、異世界からの来訪者である幸村を警戒して「名前を知ったら縁が強まる」ので名前を教えるな、と言う場面。もうこのセリフが幸村EDに向けての天才的な伏線です。
でも、七緒は二人きりのときに幸村に名前を教えてしまうのですよね。それに対して、幸村は
「やはり、姫……
そう呼ばせていただきたいと
思います」
と、兄からの言いつけを破ったことがわからないようにフォローしてくれるのです。そんな返しあります? 紳士〜〜〜!! そしてそのまま「姫」という呼び方が定着するという流れです。
幸村はそれ以来、ずっと彼女のことを「姫」と呼び続けていましたが、人の身を捨てたあとに神域で、七緒の名前をやっと呼びました。あの日教えてくれた美しい名前。それがもう一度、彼と彼女の縁を結んでくれます。
お姫さまと騎士の恋
「姫」なんて気恥ずかしい呼び名も、幸村と七緒の間だとなんとなくしっくりきます。
もうザ・お姫さまと騎士の恋って感じでずっとニヤニヤできました。王道過ぎるくらい王道の恋なんですけど、二人ともすごく真面目で役目第一なのでそこまでイチャイチャしている雰囲気でもなく、いい塩梅だと思います。
いや、寧ろ共通ルートの第五章までの段階だと、あの、ずっと乱世を鎮めるために頑張ってますけど幸村との恋進んでます? 仲間としての信頼関係はビシビシ感じるんですけど、恋の波動をもうちょっと浴びたい気持ちも……などと思っていたらルート終盤で怒濤の純愛を見せつけてくるところ、さすがでした。
幸村は最初からずっと姫のことが大好きで、姫を慕っている心が全身から溢れているようなところがとても好きでした。七緒も幸村といるとすごくしっくり来る感じというか。幸村が一緒だと安心できているように感じました。本当にずっと仲良しで嬉しいです。可愛い。
恋愛ルートに入ったら、この幸村が恋する男の態度になるのかな、楽しみだなぁとニヤニヤしていましたが、その前から姫のためなら命も惜しまない!みたいな人物なので、とくに態度がはっきり変わったような印象はありませんでした。ずっと前から好きですよね。はい。
愛の告白は七緒から行くのか幸村から来るのかどっちだろうと思っていたら、七緒にこれ以上龍神の力を使うなと求めるシリアスな話をしている場面で、急にさくっと「私をあなたの家族にしてください」と来たので「はぁ!?」となりました。言い出すときの雰囲気も全然照れたり言いにくそうだったりすることもなく、ひたすらあたたかい愛情深さが伝わってきて、とてもすばらしかったです。さすが幸村。高速の攻め。君が天の青龍だ……。
気持ちが通じ合ってからは、態度が大きく変わるわけではないですが、自然と伴侶らしく七緒を支えていて素敵でした。
龍神の運命を示唆する甲賀三郎伝説
神子の運命については、彼から「甲賀三郎伝説」を語られたときになんとなく察しがついたのですが、それを神子の正体が判明する前とあとの両方で話題に出す構成が丁寧だと思いました。三郎が姫にもう一度会えたのは、姫から愛された記憶があったから……と話し合うのも、最後に時空のかけらをよりどころとして呼び合う二人の運命に非常に似合いです。
花の種を植える
幸村の亡くなった弟のために二人で花を植える場面も、七緒の家の庭の花を愛でていた出会った頃からの伏線を見事に回収していく流れが鮮やかでした。幸村は七緒に出会って、彼女と過ごすことで、明日が知れなくても希望の種を撒き、それを誰かが見て笑顔になってくれるような日を信じることができるようになったのですね。
家族と穏やかに過ごす夢
兄とは陣営がわかれる真田家のドラマをどう扱うかと思いましたが、信之との交流には心があたたかくなりました。ここでも最初の贈り物を使って着物を仕立てていたり、とにかく幸村ルートは仕込みが丁寧。主人公には見えないところでも、幸村は彼女をとても大切に想っていたのであろうことが伝わってきます。
真田家を描くことで幸村にとっての大切なものを「家族」という言葉に象徴してくれましたね。
共に天に昇る
終盤の展開にはすっかり感服しました。このゲームでの幸村は、あくまで戦国時代に似た異世界の「真田幸村」とはいえ、やっぱり名前を冠する以上は彼の華々しい最期は欠かせない要素なのではないかと、この物語に触れている間ずっと思っていました。でも、それで彼が死んでしまったらバッドエンドになってしまうのではないか、恋愛劇としてどういう結末を迎えるのかという私のジレンマを見事に昇華してくれました。
龍神になってしまう神子、彼女と神域の世界へと旅立つ幸村。二人で天に昇っていったのだと感じて、その魂の崇高さにふるえるような想いがしました。
七緒と幸村は似た者同士ですね。
幸村ルートのバッドエンドも確認しましたが、彼の物語の七緒は意志を貫くことが大切でした。力を使い続けると七緒は龍神になってしまい、人としての体も心も失うとわかって、幸村はもう力を使わないと約束させようとします。
ここでそちらを選んでしまい、乱世を鎮める志を投げ出してしまうと、それでも幸村は七緒のそばにしてくれるのですが、やがて大阪で秀頼と家康の戦いに参じて一人散ってしまいます。
たとえ自分自身を失うことになっても、志のために戦うことを選ぶのは七緒も幸村も同じ。逆に言うと、同じでなければ二人は天で一緒になることはできないのでした。七緒が人間であることを選んでも、幸村はやがてひとりで天に昇ってしまう。
七緒も幸村も、果たすべき役割を果たして、自分たちが植えた種が花を咲かせるところが見られないとしても、それをいつか見るだろう誰かのために戦うことができる人なのだと思います。
彼ら二人がたどり着いた、一面ネモフィラの花畑は永遠の明日の象徴ですね。そこで人の身には抱えきれなかった二人の愛も、永遠になったのだと思いました。