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前立腺レクチャー10:小線源療法

放射線治療には大きく体の外から放射線をあてる外照射と前立腺の中からあてる小線源があります。 小線源は比較的新しい治療方法ですが、既に日本でも定着し、この治療を年間多くこなす施設も沢山あります。 私も東京医大時代、放射線科の先生と一緒に立ち上げ、小線源室長でした。小線源は英語でBrachytherapy(ブラキセラピー)と呼びますが、その意味は小線源が挿入された写真が樹木のような形から来ている様です。
 長所は3泊4日、あるいは4泊5日の比較的短い入院期間で済むということ、さらに重度の副作用が少ないことが挙げられます。東京医科大学で放射線科の先生とこの治療を立ち上げ、多くの患者さんを治療しましたが、極めて有効な良い治療であると実感しています。一般に言われるように低リスクであれば手術と匹敵する結果が得られます。また中リスクの結果も良好でした。短所としては、前立腺そのものは存在するままであるので、尿が出づらい、回数が増える、トイレに間に合わない感じ、尿の漏れなどの排尿障害が出る可能性があることです。これは放射線による副作用である放射線性の膀胱炎によります。ひどい時には痛みと出血を伴ったりします。さらに放射線の特性として、実際に入院し、治療をしている間だけではなく、治療後何年たってもこの副作用が起きることがあります。また、前立腺が40グラム以上に肥大している場合、治療がやりづらく、さらに放射線量が過剰になってしまうので、前もって内分泌治療を数ヶ月実施して前立腺を小さくしてから実施します。50グラムくらいの前立腺であれば大抵の場合、内分泌治療で40グラム以下になりますが、60グラムを超えてくるとやってみなければわからない、という不明瞭な点はあります。また、個人的な印象としては、仮に内分泌治療で40グラム以下になっても、もともと大きい前立腺の方は治療後に排尿障害が出やすいと感じます。 
 実際の治療の流れは、入院翌日に全身麻酔あるいは部分麻酔をかけた後に、直腸へ超音波の器械を入れ、前立腺を見ながら、肛門のすぐ上の皮膚から長い針を前立腺に刺します。その長い針の中を通して、チタンのカプセルに包まれたヨード製剤を40個から最大100個前立腺に挿入します。麻酔をかけた後に実際にかかる時間は40-50分くらいで、短時間で終わります。翌日には尿道に入っていた管を抜き、病室で放射線量を測定し、その翌日には退院となります。退院後は約1ヶ月後にCTをして放射線科の先生が実際に入った小線源の場所から放射線量の分布を描き確認します。後は定期的にPSAを見ていきます。施設によってやや異なりますが、中・高リスクの場合は小線源だけでなく外照射も加えているところが多いです。

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