M3血統タイプ分析~宝塚記念を前に~
前回、新刊の紹介後(『Mの法則×血統ビーム(オーパーツ・パブリッシング)』)、早い時期に更新する予定が忙しくしているうちに半年が過ぎ宝塚記念の週になってしまった。さすがに宝塚記念の血統分析はしておかないと、せっかくフォローしてくれた皆さんにも申し訳ないのでM3血統分析(宝塚記念出走馬を中心に古馬中長距離路線馬)を取り急ぎやっていこうと思う。
そして恒例の実践編では、先週日曜を例にして、遅ればせながら前回紹介した亀谷君との対談本の実際的な使い方も交えつつやっていくので、乞うご期待(ちょっと対談での裏話も交えながら?)!
M3古馬中長距離 血統分析
※各用語は「Mの法則用語集」の記事、使い方は以前書いた記事も参照して頂きたい。以下は毎週予想サイトに掲載しているものをnote用の特別バージョンとして、詳細なタイプとコメントを付加したものになる。
CS(LC) シュトルーヴェ
キングカメハメハ産駒らしく、馬群を割ることが出来るタイプ。前半緩めに入って徐々に加速して最終的に混戦の差し競馬がベスト。道悪だと前半の追走ペースが速くても流れに乗りやすい。量のあるタイプで馬体は増やしたい。
オプション(内・重・ア・開) 距離(25・24・26) 状態(平行)
LC(CS) ジャスティンパレス
ディープインパクト牡馬としてはかなりC要素も強いタイプで鮮度時には馬群でもしぶとく走れる。したがって淀みなく流れて少し上がりの掛かる混戦を馬群で運ぶ形がベスト。
オプション(延・開・中・短) 距離(22・24・20) 状態(不安定)
S(LC) ソールオリエンス
闘う意欲はキタサンブラックの中でも比較的強いが、キタサンブラック牡馬らしく揉まれ弱い。したがって外差し競馬の外目がベスト。量系だけに休み明けで大幅に馬体を戻す形が良い。
オプション(延・開・巻・坂) 距離(22・20・24) 状態(不安定)
LS(LC) ディープボンド
キズナ産駒で揉まれ弱いが、S質も比較的強め。したがってフレッシュならある程度まで馬群に対応する。ただ年齢的にも道悪でもなければブレーキを掛ける競馬は対応出来ないので大胆に乗って一気に勝負を掛けないと苦しくなっている。
オプション(延・巻・中・重) 距離(24・25・30) 状態(不安定)
SC(LC) ドウデュース
馬群に入れてしぶとさを活かすのがベストで上がり勝負も対応するが、タフな展開での混戦の方が良い。前走よりペースアップすると集中しやすいので短縮適性が高い。ショックを好むので、延長もタフな流れや内枠だと対応する。
オプション(短・延・重・開) 距離(20・18・22) 状態(不安定)
LC(S) ブローザホーン
量と体力で走る量系だが、エピファネイア産駒としてはS質も強め。したがってストレスのないときの延長や道悪で追走が楽だと、ある程度タフな状況でもそこそこファイトする。
オプション(延・重・外・坂) 距離(25・24・22) 状態(平行)
LC(SC) プラダリア
ディープインパクト牡馬としてもかなりまとまりの強いタイプ。したがって自分の力は安定して出せる。鮮度時には馬群を割れるので凡走後は内目が良い。延長や道悪で上がりの掛かる競馬がベスト
オプション(重・延・開・中) 距離(24・25・22) 状態(平行)
SL(SC) ベラジオオペラ
S質でかなりのパワーがある。精神コントロールするには位置取りショックが向く。間隔を詰めて使うと硬くなりやすく危ない。 *追記 延長の場合は内目の枠で馬群に入れる方が体力とタイプ的に合う。
オプション(重・開・短・巻) 距離(18・20・16) 状態(平行)
CS(C) ルージュエヴァイユ
ジャスタウェイ産駒らしく精神コントロールが難しいが集中すると強い相手にも頑張る。そのぶん、弱い相手の人気では危ない典型的なC系。もちろん馬群に入れて集中させる形が理想になる。テンションが上がりやすく、入れ込み、発汗にも注意。
オプション(内・重・巻・交) 距離(18・20・16) 状態(不安定)
LC(S) ローシャムパーク
揉まれず自分の競馬をして強い、典型的なハービンジャー牡馬のL系。したがって外枠の外差しや、道悪でばらける差し競馬がベスト。内目なら大阪杯のように一回下げて外に出す形を取りたい
オプション(重・延・外・巻) 距離(22・20・18)状態(不安定)
上記のM3データ分析を書いていた途中で気付いたのだが、過去にnoteで分析した馬たちは、書いてある内容があまりにも的確なので(本当か?早速、読み直してみよう!)、実際その後の戦績も内容の通りに決まっていた。ということで、ドウデュースに執筆が差し掛かったところで前回の内容を書き換える作業が無意味に思え、そのまま書き写した。その後も既出馬は適当にちょちょっと前回を書き換えるに止めた。
今回の宝塚記念出走馬以外も、過去のnoteに書いてる「M3血統分析」を読み直して、その後の戦績と照らし合わせると新しい発見があってより楽しめると思う。
以前に一回掲載した馬が多く、今回は若干新味に掛けるラインナップになった気もするので、note未掲載の芝賞金上位馬を追加付録として、この記事の最後に掲載しておいた。是非、秋競馬も見据えた馬券検討の参考にして頂きたい。
ドキュメントM ~『Mの法則×血統ビーム』 怒濤の実践編・夏~
6月8日 夏開幕!函館スプリントSはやっぱりMが牙をむく
「うーん、これは不味い」
函館スプリントSの馬柱を見つめながら、何度も首をかしげる・・・。
本命は簡単だった。ロードカナロア産駒サトノレーヴ。前走はOP特別で、今回は初の古馬1200m重賞。鮮度は十分だし、単行本にもある通り、「ロードカナロアの相手強化」だ。対談でその話をして以降に単行本が出るまでの期間で、ロードカナロアの芝重賞は、「相手強化時」には単勝回収率312円、複勝回収率133円で、「相手弱化時」には単勝37円、複勝60円と、産駒が私の解説を読んだかの如く、相手が強くなるほどに走ったのだった。
「相手弱化では危ないが、相手強化だと走る」というのを理解出来ないと、永遠に競馬の本質を理解することは出来ないだろう。馬は前走との関係性で走る生き物なのだ。
ロードカナロアなら、「前走よりレース摩擦のある方が集中しやすいタイプ」なわけだ。
それはこのレースに出ている昨年の勝ち馬で、同じロードカナロア産駒キミワクイーンを思い出しても分かる。同馬は昨年弱いメンバーのOP特別で2着に負けた後、相手強化でこの函館スプリントSを勝ったのだ。
ただこのキミワクイーン、今年は昨年ほど走れない。今回は同じ前走GⅢからで、相手強化でもなければ鮮度も薄いからだ。前走との記憶の連続で走る、それがつまりは競馬なのである。
しかもキミワクイーンは外目だが、サトノレーヴは内枠をひいた。
鮮度時のロードカナロア産駒のしぶとさ(MのC質)を活かすには、もってこいの条件が揃っている。
それは良いのだがこのレース、サトノレーヴの相手が全くいない。
新聞を見ると、全ての馬が危ないのだ・・・!
どう危ないのか?単行本の復習を中心に確認していこう。
まず1番人気アサカラキング。これは対談で詳しく話したビアンフェと同じ短距離のキズナ産駒だ。本質的にスプリンターではないが圧倒的なスピードとパワーで1200mを走ったのがビアンフェだった。単行本の解説にある通り(『Mの法則×血統ビーム』 P70)、「根幹距離の流れに異質さを自ら持ち込む」、つまりダッシュはそれほどでもないけど、途中でスピードに乗ってパワーで時空を歪めて突き放す逃げが基本になる。ダッシュが上手くついて揉まれないとパワーを活かせて圧倒的な走りが出来るが、そのダッシュ力自体が安定しないのがキズナ産駒なわけだ。今回は短縮1200m激走後のストレスがあるので、肝心のダッシュがつくかは不透明になる。
3番人気ビッグシーザーは、ビッグアーサー産駒。これも単行本を見ると、種牡馬格言(『Mの法則×血統ビーム』P243)には、「内枠得意」、「叩かれながら上昇する」とある。MのC要素が比較的強いタイプで、叩かれながら馬群に入れる形が一番合うわけだ。ということは、「中10週開いて」、「外枠」の今回は条件が真逆になる。ただ凡走後でストレスが薄れたMの基本形であり、また得意のハイペースも必至なので、相殺してどこまでという感じだろう。
4番人気ジャスティンスカイはキタサンブラック産駒。単行本にあるように揉まれ弱い。前走が大外枠で勝った後の中枠では揉まれて嫌がる。それとキタサンブラックは、短縮やダート替わりなど、S質を補完するショックが掛かると一時的に頑張る特徴があって、それが短縮+初距離の前走だった。鮮度の薄れた今回は危ない。ただこれが1200mを生涯2戦目なので、まだ鮮度は保持している。したがって切り捨てるまではいかない押さえの1頭が妥当だ。
という感じで他の人気馬はどの馬も、切り捨てるまではいかないものの連対するか?というと、かなり恵まれないと厳しい。
では穴は?となると、ゾンニッヒは道悪向きの追い込み馬で、重の外差し競馬なら多少チャンスはあるが、開幕ではこの馬の大外一気が届く馬場になりそうもない。
そうなると、7番人気サウザンサニーが気になる。実は新聞のパッと見では本命か対抗に考えた馬だ。何せ準OP勝ちで3走前は1勝クラスと鮮度抜群なので、ストレス面では買いだ。
ただ、「S質の活性化(用語集参照)」が引っかかる。ずっと追い込みで近2走は道悪。下級条件からの場合、鮮度が高いのは有利なのだが、そのぶん「タイトな経験=S質の刺激」は不足しやすい。したがって、時計の掛かる馬場を後方ばかりという近2走のレース内容は、3走前まで1勝クラスという「S質な経験=タイトな経験」が少ない同馬のステップでは、道中の追走面でかなり辛く感じることになる。忙しい競馬の流れに入った経験が、格上げ戦の馬にしては少なすぎるわけだ。となると、追走に一杯で間に合わず3,4着前後の可能性が高い。
加えて父タリスマニックも、特に相手強化で強いタイプ=前走よりタイトな競馬を好むタイプでもない。
しかし他の人気薄には、ここで突き抜けるようなステップの馬は、全くいないメンバーだった。
本命は簡単だが。・・・これ、八方塞がりじゃない?
完全に八方塞がりだ。
こういうときは、一周回って適性と能力の高さを頼って本来は危ないはずの人気馬が上位に来るか、展開に嵌まり切った超人気薄が激走するのが基本となる。
前者の場合は、配当がつかない上に勝負もしにくくなる。後者の場合は、当日の馬場と騎手の位置取り次第で激走する馬が決まるので、事前に1,2頭に絞り込むのはかなり物理的に困難な作業となる。本命が確実なレースだけに当てたいが、相手がしょうもない幕切れの可能性がかなり高まってきた。
「・・・うん?」
そのときだ。
最初の段階で本命対抗候補からは切り捨てていた馬がいた。他馬より2キロ重い59キロで、しかも海外帰りで状態も把握しきれない馬。
そう、ウイングレイテストである。
さらには先行馬で、このレースは1番人気アサカラキングを含め、逃げ、先行馬が多い。完全前残り想定でアサカラキングを本命にする人以外に、敢えてこの馬を積極的に対抗に買う理由が見つかる人も少ないだろう、そういった馬だ。
海外帰りで鮮度は高いため、仕上がってたら怖さもあるということで、「押さえの最後、5番手評価くらいに入れておけば良いだろう」と、最初の段階で対抗候補としての分析を止めていた馬だ。
「なるほど、いくら考えても対抗が見つからないはずだ。この馬だったか・・・!」
数秒、細部をチェックしただけで直ぐに分かった。この馬がこのレースのブラインドサイドだったのだ。
同馬は、体力がかなり豊富なスクリーンヒーロー産駒。今回はハイペース濃厚で生涯初の1200mなので、逃げられず自然と3,4番手の位置になる。外枠なので揉まれず、スムーズに3番手を追走出来るだろう。そうなれば、ここではパワーが違い過ぎるし、鮮度も高い。アサカラキングが作るハイラップを利して、4角では一気に被せてくるはずだ。
したがって、「ハイペースの3番手に行けば」と予想の解説に入れ、対抗評価とした。
瞬発力勝負だと59キロはこたえるが、ハイペースの消耗戦を外枠で先行なら瞬時に反応する必要はないので、斤量も大きな問題にはならない。
最後に海外帰りの休み明けなので調教をチェックすると、1,2週前にしっかり負荷が掛かっている。慌てて当週に強い追い切りを掛けているわけでもなく、ほぼ仕上がっていると判断して良い。
ちなみに対談本におけるスクリーンヒーローの「買い条件(『Mの法則×血統ビーム』P153)」も見てみると、「短縮1200mでの複勝」とある。「パワーを活かせるけど忙しくて間に合わないので、2,3着が多い」といった趣旨の解説だ。
また本文には、「テンションが上がりやすいので輸送に注意」や、「不器用だけど、根幹距離はタフな競馬にならないと良くない」といった趣旨の話も書いている。つまり、「滞在函館のハイペース1200mの外枠」は、まさにサトノレーヴの相手、2,3着候補にはピッタリ過ぎるわけだ。
ちなみにキズナとスクリーンヒーローは、比較的似た「ブレーキを掛ける競馬が苦手だがパワーがあってS質も強い」タイプになる。
もしアサカラキングとウイングレイテストの枠順とステップが逆なら、結果も逆、つまりアサカラキングが先着していたろう(実際、ウイングレイテストは今回が初の1200mだが、アサカラキングは前走が初の1200mだった)。そのくらい、「タイプに合ったステップと枠順かどうか?」は競馬で重要になってくる。
2頭の違いとしては、共に馬群でごちゃつく形があまり得意ではないが、キズナは揉まれ弱さ、スクリーンヒーローは不器用さが、より強く影響している点が挙げられる。
揉まれ弱さとは「精神」か「肉体」か? ~キズナとスクリーンヒーロー~
揉まれ弱さには、精神面と肉体面、2つの要因がある。つまりM3タイプでは、キズナは「LよりでSもあるタイプ」、スクリーンヒーローは「SよりでLもあるタイプ」になる。この辺りの違いはあまり意識しなくてもだいたい大丈夫だが、強いて言うと揉まれそうなタイミングでも気持ちが乗ってれば頑張る可能性が高いのがスクリーンヒーローで、前走よりスムーズだと激走する可能性が高いのがキズナと考えれば良い(スクリーンヒーローは不器用だが、L質が相対的に弱い為、前走より揉まれない流れで急変するパターンは、逃げ馬でもない限りキズナより少ない)。
ただキズナも、例えばハービンジャー牡馬やシルバーステートのような典型的なL系ほど精神的な揉まれ弱さが強いわけではなく、不器用さが揉まれ弱さに占める割合も比較的大きい。そもそも精神と肉体を厳密に分けて考える事自体、あまり意味のないことだが、どちらがよりその要素を引っ張っているかは、馬の本質を捉えるには欠かせない最重要作業になる(この辺りの話を書くと長くなるので、またの機会に)。
函館1200mから見る、M的馬券の買い方
今回はこの函館1200mを使って、「馬場の移り変わり」と、それに応じた「予想の仕方」と「馬券の買い方」という問題を、ここ1,2週のレースを具体例に皆さんと一緒に見ていこうと思う。
この週の回顧として他サイトで話してあるので詳しくは書かないが(恐らくまだ残っていると思うので「競馬予想GP」等の私が執筆している予想サイトの記事を参考にして頂きたい)、実はこの日は函館1200mを他に2レース予想していた。
まず函館1R。このレースの本命は単勝6.2倍で短縮だったニシノシャミナード。ただ結局、この日は前残り馬場で断然人気に残られての2着で、馬連1点目的中にとどまった。
次が函館8Rで、カレンナオトメという人気薄(単勝47倍)の短縮馬を本命に抜擢していた。だが結局このレースも前残りで、内の先行馬3頭が残る中、最速上がりで大外から猛追するも、タイム差なしのアタマ差で間に合わず4着に終わった。
なぜこの2レースのチョイスになったかというと、この日は天気予報が降るか降らないか分からない微妙なものだったからだ。事前の読みとしては、雨が降れば重い短縮馬有利の馬場に変わる可能性が高いが、降らなければ土曜の前残り馬場継続の可能性が高いという判断が根底にあった。
そして400倍的中!(だがクビ差で670倍は逃げていった)
そんな中、函館スプリントSでは、「内の好位馬を本命で対抗が先行馬」という前寄りの予想だったので、雨が降って追い込み馬場に急変したときの保険として、この2レースでは真逆のレース質、つまり重い差し馬を本命にピックアップしたわけである(2頭とも単勝が好配当で、また仮にフラットでも極端な前残りでさえなければ間に合う可能性が高かったのも本命に選んだ理由だが)。
結局、函館は雨の影響を受けず前日の前残りが継続して、1Rと8Rの差しは間に合わないという結末に終わった。
少し残念ではあるが、この結果でより函館スプリントSの予想は確信へと深まっていったわけだ。
結果は、予定通りサトノレーヴが非L系らしく好位からしぶとく馬群を割って1着。
2着は、ダッシュのつかなかったアサカラキングが強引に追いかけて生じたハイペースを利して、私の指定通りに外の3番手を追走したウイングレイテストが2着(私の事前の指定と違って無理に1,2番手に行ったり、敢えて5番手以降に控えたりしたら2着はなかった)、馬単55倍を◎〇の1点目的中となった。
3着には、合わない外枠もなんとか坂井が上手く乗って持ってきた△ビッグシーザーと、活性化が弱いために追走に苦労しながらも鮮度を頼って馬群を縫ってきた△サウザンサニーの一騎打ちの接戦に。結局タイム差なしで、前残り馬場のためサウザンサニーの追い込みは僅か間に合わず4着となった。これで一応、3連単400倍も的中である。
ただもう少しこの日の馬場レベルが重くなれば、超人気薄だった8Rのカレンナオトメは間に合ったろうし、函館スプリントSのサウザンサニーも3着以内だったろう(そっちの方が3連単670倍3点目的中で、より良かったわけだが)。
この日は、そういう紙一重の馬場状態だったのである。
「タフでストレスの影響を過剰に受けやすい馬場が、もうすぐそこまで迫ってきている」
1200m3レースが終わっての、それが率直な感想だった。
そういった認識を持ったまま迎えたのが、先週末の競馬になる。
6月15日 すぐそこ!ストレスを過剰に嫌がるバイアスの足音が近づいている
まず土曜、予想した函館1200mは1レースのみ、勝負レースに選んだ函館メインSTV杯だ。
本命は、3番人気ドゥラメンテ産駒のレッドアヴァンティ。1400mからの短縮である。先週の結果から鮮度馬が有利な摩擦のあるレース質が近づいていることを踏まえた上での本命だった(「鮮度」は、条件変更や休み明けなどで再充填される。特に摩擦の強い馬場では短縮が有効)。
だが、実はそこまで摩擦のある馬場に予想の舵を切ったわけでもない。というのも、2走前に同馬は今回と同じ1200mを走っていて(これをMではバウンド短縮という)、しかも逃げている。つまり2走前にスピードレースの経験をさせておいたことで、1200mへの短縮に対して対応がしやすいステップなのだ。これなら馬場が予定より軽いままでも対応出来る、馬場がどっちに転んでも良いわけだ。
どちらか両極端にバイアスが振れた場合、その極端に有利な位置にいる馬に逆転される可能性もあるが、どちらの馬場になっても少なくとも崩れない。そういう意味でも、勝負レースに選んだ自信の本命である。
一応血統的な解説もしておくと、ドゥラメンテも先ほどのキズナ、スクリーンヒーローと似たタイプで、「不器用で揉まれ弱くパワーが豊富で闘う意欲もあるタイプ」だ。したがってイメージとしては函館スプリントSのウイングレイテストになる。強いて言えばドゥラメンテはキズナに近く、不器用さよりも揉まれ弱さの比重が大きい。つまりS質よりL質の方が強い。だから、例えばこれが多頭数の内枠ならアサカラキング同様に本命にはしなかったし、恐らく負けたはずだ。
そして自信を持って迎えたレース発走。
・・・え?!
スタートで、先行出来るはずの武豊レッドアヴァンティが後ろに下げていく。
この日のそれまでの1200mが前残りだっただけに、これにはさすがに焦った。
だが、馬の手応えが良いのに鞍上は一向に仕掛ける気配がない。函館スプリントSで武豊はゾンニッヒという大外の差し馬に乗っていた。このときも動かず6着に終わっている。それなのに道中全く動かないということは、ゾンニッヒのタイミングで動けば、この馬のこの手応えなら間に合うという計算があるはずだ。位置取りが私の事前に指定したものと違うときは、スタートした瞬間にほぼ来ないことは分かる。逆に指定した位置を取ればどんな人気薄であっても激走しやすい。それだけ、タイプとステップに応じた位置取りは、競馬では大切なのだ。
しかし私は、道中で武豊の好走をほぼ確信した。というのも、今回前に行くべきというのは馬場からだけの判断で、ステップ面では短縮で差しに回る判断自体はM的に正しい。そしてあれほど抜群の手応えなのに武が動かないということは、既に差しも間に合う馬場になっているということでもある。
結局、武がそのまま外からあっさりと差し切る。
問題は2着だ。
5番人気のニシノコウダイという馬が突っ込んで来たのだ。一応押さえの1頭にしていたので、馬単41倍が当たって結果は良かったが、同時に先週感じた1200mのバイアスに対する自信が、一気に崩壊していくのを感じた。
「レッドアヴァンティが強すぎて早め抜け出しで、相手が無欲の差し馬」というケースを想定して、一応前残り馬場でもピックアップしておいたのが、この差し馬ニシノコウダイだった。
その馬が、差し馬のワンツーで2着に来たのだ。しかもニシノコウダイはなんのショックもなく、今までずっと差していた馬だ。つまり、「鮮度」と「S質活性化」の両面が弱い。プラス要素は、前走の惨敗でストレスが薄れたという、ただそれだけの馬だった。
ということは、早くも単調な差し馬場(L質な馬場)になったのか?ニシノコウダイの父、アメリカンペイトリオットも基本的には揉まれ弱い不器用な血である。そういうタイプの2頭が差してきたわけだから、その可能性は結構高い。
ただそう結論づけるには、まだ2つの問題が残っていた。
1つめは、このレースが少頭数だった点。
少頭数なので、揉まれ弱く活性化の弱い単調な差し馬が捌きやすかった部分が少なからずあったわけだ(少頭数だから、揉まれ弱いこの2頭を予想でピックアップした面もある)。多頭数なら、活性化の弱い2着馬は来なかった可能性も高い。
もう1つは、ペースが2勝クラスとしては遅かった点だ。ペースが遅い方が前残りになりそうだが、馬場によってはスローの方が差しやすいバイアスもある。特に荒れ馬場や超高速などの特殊馬場ではそうなりやすく、ペースが緩んで団子状態になった方が先行馬がキレ負けして、差し馬に捉まる確率は上がるのだ。今の函館のバイアスがそれに近い可能性は結構高い。
つまり、このレースだけでは前が残るS質な馬場か、単調な差し馬が来るL質な馬場か、あるいはその2つが交錯する馬場なのか、判断出来なかった。
6月16日
さぁ、単勝爆弾編隊の出撃だ!
そしてこの文章を書いている前日、6月16日を迎えた。
私は函館1200mを、1レースのみ予想した。
前日土曜の感触がなんとも微妙な馬場だった為だ。それと他の競馬場に面白いレースが多かったこともあった。実際、6レースで本命が連対して、勝負レースに選んだ東京メインのスレイプニルSでは馬単98倍と、ほぼ万馬券も的中させている。それらの話もしたくてムズムズしているところだが、今回は「馬場の推移と、予想と、馬券」についての議論を深めたいと思うので、残念だが割愛する。
その読み切れない紙一重の馬場状態の中で、敢えてこのレースをピックアップしたのは、何を隠そう危ない人気馬が多かったからである。断然人気ドレッドは、前走休み明けで「前に行く位置取りショック」を仕掛けて同じ1200mを2着に好走した後。かなりストレスがきつい。休み明けのフレッシュな状態で前走より前に行く位置取りショックは、馬にはかなり気分良く感じる競馬になる。しかも前走はスローだったので、余計に気分良く走れた。今回はそれよりペースアップするのはほぼ確実なので、前走より馬が辛く感じるのもほぼ確実だ。
3番人気ヴィーケンも危ない。前走は1400mから延長の1600mを逃げの位置取りショックを仕掛けて3着。逃げのショックは、最も馬には道中が楽に感じる形で、それで激走した以上は、次走が辛く感じる。しかも揉まれ弱いトーセンラー産駒が内枠の短縮では、前走より揉まれて辛く感じない方がおかしい。
残りの4番人気以降は、既にして単勝12倍以上もつくレースだ。ほぼ高配当になるのは約束されていたわけで、予想したのだった。
恐らく昨日のSTV杯から、馬場は開幕週より少し重くタフになっている。それを補うステップ、ショック療法を施している馬に有利なはずだ。
ただSTV杯の結果から、S質なのか?、L質なのか?、馬場が判然としない。どのショック療法がより有効で、前か後ろ、内か外、どの位置取りを取った馬が有利なのかも判然としない。
「どのショックが有効かは分からないが、馬場と枠、展開が噛み合えばショックが炸裂して勝ちきれる馬」が今回は5頭だけいた。内から、ダート1400mからの短縮で単勝25倍の1番イロンデル、芝1600mからの短縮で単勝28倍の2番モリエヌス、ダート1700mからの短縮で単勝13倍の4番テリオスソラ、地方のダート1500mからの短縮で単勝36倍の5番ヘキルリ、前走追い込み不発で前に行く位置取りショック期待の単勝87倍14番ココモローズというラインナップである。
どの馬も高配当なので、単勝の5点買いでも元手の5倍くらいは儲かる可能性が高い。だが一体そのどのショックが嵌まるのかを、馬場が読めない段階で推理するのは物理的に難しいラインナップでもあった。
1,2番の2頭は単行本にもある通り、内枠で強いビッグアーサーだ。仮に内目が伸びない馬場になっていると、良さが発揮されない。テリオスソラは13着、9着と惨敗後の休み明けで状態が戻っているか読めない。ヘキルリは前走地方で3.4秒差負けで2走前も中央で1.9秒差負け。果たして走れる状態なのか読み切れないといった具合だ。だが人気馬が走れないわけだから、この中で当日普通の状態で展開が嵌まった馬が勝つ可能性は高い。
こういうときは単勝爆弾が馬券的には正解になる。「単勝爆弾」とは、人気馬が走れそうにない(勝ち切れそうにない)レースで、惨敗もあり得るが展開や馬場さえ嵌まれば勝てる人気薄を、展開や馬場に応じて数頭買っておくという作戦になる。
これだと展開や馬場を読む必要は全くない。ただ当日の状況に嵌まった人気薄のどれかが勝つだけで、自動で払い戻しが受けられるという作戦になる。当日雨が降ろうが槍が降ろうがカラカラだろうが、ハイペースだろうがスローだろうが、一切関係ないのだ。その極端なレース用に、それぞれ勝てる馬を買っているわけだから・・・!
例えば内伸び馬場になっていれば、単行本にある通り、内枠が向くビッグアーサー産駒の1,2番のどちらかが勝つだろう。だが、もし内が荒れて伸びなければこの2頭はまず勝てない。本命を1頭に決める場合はどっちの馬場か、一か八かヤマを張らなくてはいけないわけだが、単勝爆弾の場合はヤマを張る必要がないのだ。
どんな馬場、流れになろうが、自分の買った人気薄のどれかが勝つ、それが単勝爆弾最大の魅力である。
ただ予想ともなると本命を決めないといけない。どのステップが有効な馬場か決めきれないでいた私は、ここで人気馬の1頭モズマサニャンをピックアップした。同馬は前走が初の1200mでまだ鮮度があって、致命的なストレスもない。枠も中枠だからどっちが伸びる馬場でも対応出来る。またここ2走が中団差しなので、あとはそのまま中団差しならどの馬場でも対応しやすいし、武豊騎乗で追い込みに回る位置取りショックなら更に面白い。
ただ、特段ショックはない。故に単勝勝負するには微妙だが、他の人気馬が軒並み全馬危なく、しかも嵌まれば激走する人気薄は全てピックアップ済みという自負もあった。ということは、無難に武豊が乗ってさえくれれば馬単はどうか分からないが、そのどれかを連れてきての高配当馬連的中はほぼ間違いない。
つまり本来単勝爆弾的なレースのはずを、送りバントに切り替えたのだ。
結果、何故か差し馬のモズマサニャンが前走より速いペースを先行して失速。もちろん、他の人気馬も全て消えて、勝ったのはヘキルリだった。馬券的には単勝爆弾も仕掛けていたので単勝36倍は拾ったが、馬連勝負だった為、元返しにも届かなかった。送りバントをしてはいけないという、典型的な結末になったわけだ。
ただ、送りバントでない場合、5頭いる嵌まり待ちの人気薄、単勝爆弾編隊の中で、このヘキルリを本命にピックアップしないと当たらないわけで、振り切って予想してもこのレースの場合は失敗したろう。
これが単勝爆弾レースの怖さであり、また醍醐味でもあるわけだ。
「あ、それ僕も送りバントでした」
ちなみに、余談で送りバントの話を最後に1つ。
私が権藤さん以上にプロ野球でのバント嫌いなのは、これまで何度となく書いていたからご存じとは思う。
あるとき、亀谷君との連載対談の最中に私が、「あのレース(6月1日東京12R)、3番人気のハッピーロンドン本命で送りバントにしちゃったんだよね~。まぁそれでもなんとかなるかと思ったんだけど」と話したら、
「あ、あの馬は僕もピックアップして、『これは送りバントの予想なんだけど』って解説してましたよ」
「えっ、わざわざあのレースを選んで予想して、表現まで同じだったんだ(笑)」
という事件があった。送りバント予想の話なんかしてなかったのに、期せずして同じ表現をしていたのは面白い。
「他に人気馬が消せる良いレースがなくて仕方なく予想したんですけどね」という話までが、全く同じだった。
で結果はというと、いつも差している本命が何故か前に行って、8着以内を本命以外は差し馬が独占する極端な差し競馬になった為、先行馬で最先着も3着。対抗のランタナヒルズが勝って単勝19倍付けたものの、1着3着で馬連ではなくワイド11倍の1点目に終わってしまった。
「騎手が余計なことしないで、いつものように差してくれてれば来てるんですけどね~」
という解説通りで、差していたら連対間違いなしという内容だった。恐らく勝ちきれない競馬を続けていたので騎手が一工夫必要だと、突如前に行ってしまったのだろう(さっきの函館2Rの武豊も、恐らく同じ理由で突如前に行った)。
送りバントに潜む、これが罠になる。
陣営自体、というかその馬を取り巻く世界自体が私たち観察者も含めて既に鈍く澱んでいるのだ。
その為、「差し競馬で差し馬が前に行く」などという、よく分からない世界の歪みが発現してしまう。これは偶然の結果ではなく、予め決められていた、予定された世界ということになる。
「いや~、だから結局巨人の送りバントも責められないんですよ(笑)」
1点を取りに行く野球でなにが悪いのかって話にもなってくるわけだ。結局ワイド1点目で11倍当たれば悪い話でもない(だからといってバントで1点さえも遠のく可能性もあるわけだが)。
ちなみに格上げで鮮度の高い単勝19倍だったランタナヒルズを、本命でなく対抗にしたのは、未知数が2つあったからだ。
1つめは、前走減っていて2走連続馬体減の3歳馬でかつ体力の要るダート戦なので、もう一度馬体が減ってくるとMの馬体重理論からはほぼ凡走する点(ただこの場合、逆に当日増えてくると好走確率が上がる。つまり馬体重にしてかなりのギャンブル馬だ)。
2つめは、前走よりかなり速い上がりを要求される可能性がそれなりに高く、高速上がりの対応力が不透明だった点になる。
この2つを同時にクリアする可能性がどれだけあるのか?事前に読み切れないので、ストレスが薄れて、外枠に入った揉まれ弱いグレーターロンドン産駒ハッピーロンドンの安牌に行かざるを得なかったのである。ただこの馬は、かなり淀んでいた=リズムの躍動感がなかったのもまた事実だ。
ちなみにこういうときは、馬券においてはワイドでなく、単勝爆弾で勝負するのが基本になる。私はワイドは買わずに2頭のプチ単勝爆弾を仕掛けていた(単勝はマイナーレースの場合はオッズが下がるので勧めてないが、数頭買う単勝爆弾なら影響が少ないので問題ない)。比重を3:4にして、単勝19倍のランタナヒルズを3、単勝4.4倍のハッピーロンドンを4に配分する形をとったのだった。
普通、この手のプチ単勝爆弾の場合、比重は1:4ないし1:5くらいにする。それは単純に単勝4倍と19倍で、オッズに4~5倍近い開きがあるからだ。当日3:4にしたのは、ランタナヒルズの馬体重が2キロ増と、馬体減りという最初にして最大の関門をクリア出来たからに他ならない(ランタナヒルズが想定以上に当日人気薄で、単勝期待値が一気に上がったこともあるが)。
さらには3番手評価にした、前走太めだった2番人気馬が当日絞れてこなかったので、人気馬の勝ち切る可能性がさらに下がった為、単勝爆弾レースの色彩は一気に強まっていた。
このように、当日のオッズ、馬場、馬体重から単勝比重を変更していくのも、単勝爆弾の醍醐味の1つとなる。
馬場の推移が読み切れないが、ストレス馬が危なくショック馬が来やすい馬場状態になってきたら、「一気に単勝爆弾」。
これは是非覚えて、新しい武器にして頂きたい。
4歳馬 M3データ分析 芝特別付録編
*4歳の芝戦線賞金上位馬をピックアップして収録しています
LC(S) オオバンブルマイ
硬さのあるディスクリートキャットなので、使い込んだストレス時には馬群を嫌がる。道悪などクッションがあって鮮度があるレース向き。通常時は揉まれないように乗りたい。
オプション(開・巻・重・内) 距離(14・16・12) 状態(不安定)
L(SC) ドゥレッツァ
闘う意欲は強いが揉まれ弱い、体力と量がかなり豊富なL系。延長やフレッシュ時向き。硬くなりやすく、間隔詰めて馬体が減ったり、激しく揉まれると厳しくなる。
オプション(延・開・外・巻) 距離(25・24・30) 状態(不安定)
LC(S) マスクトディーヴァ
牝馬なのである程度は馬群にも対応するが、揉まれず自分の競馬をして強い、基本的なルーラーシップ産駒。超高速馬場や道悪などの特殊馬場を目一杯走って強く、外枠や延長が合う。
オプション(重・特・外・延) 距離(22・18・20) 状態(平行)
SC(L) ブレイディヴェーグ
ロードカナロア産駒だけに闘う意欲が旺盛で、相手強化の方が頑張る。揉まれ弱くはないが不器用なので、内枠の場合は延長や外回りでブレーキを掛けない方が競馬しやすい。
オプション(開・延・短・特) 距離(20・18・22) 状態(不安定)
SL(CL) エルトンバローズ
闘う意欲は強いが精神コントロールの難しいタイプ。したがって特殊馬場で馬群に入れて気持ちを抑える競馬が理想。硬さが出やすく、使われていって入れ込むと危ない。縦長の変則ペースは合う。
オプション(延・短・巻・内) 距離(18・16・20) 状態(不安定)
SC(S) ウンブライル
ロードカナロア産駒で闘う意欲は強いが精神コントロールがかなり難しい。したがって思い切った位置取りショック、特に後ろに回る位置取りショックがベスト。酷すぎない程度に適度に湿った馬場もコントロールしやすい。
オプション(短・多・交・坂) 距離(16・14・18) 状態(不安定)
LS(SC) レーベンスティール
リアルスティール牡馬で体力とパワーを前面に出す競馬で強いがブレーキを掛けると脆い。したがって縦長の消耗戦や広いコースが向き、特に非根幹距離で目一杯走って強い。中でも延長での一貫した流れがベスト・
オプション(外・巻・重・延) 距離(22・18・20) 状態(不安定)
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