もし,映画に関わる仕事しかなかったら
ある日の会話をそのまま。
「ちっちゃい頃の将来の夢の話,こないだしたじゃん。
あの後思い出したんだけど,地球ドラマチックとかのカメラマンになりたかったんだよね。
中学生くらいかな。ああいう番組好きだからさ。」
『へ~!!』
「NHKのカメラマンいいよなぁ。今でもちょっといいなと思うよ。
コンビニ行こうかな。
コンビニ行くだけ行って何も買わないのありかな?」
『ん~…なしじゃない?』
「…なしか。」
『じゃあさ,もし映画に関わる仕事しかなかったら,何やりたい?』
「映画か…そうだなぁ。
ロケ地を決定する仕事かな。ロケハン。
そうだな,裏方だろうな。映像編集とかじゃなくて,カメラマンとか,セットとかそういう体動かす系。」
『へ~~。体動かしたいんだ。』
「そっちは?」
『う~~ん…そうだねぇ。何だろうな。
配役決めるのは絶対楽しいだろうね。現実でも,「この人とこの人,話したらどうなるんだろう…!」とか思うしね。
でも,俳優さん達といちばん距離近いのってヘアメイクさんだったりするんだよね。』
「なるほどね。」
『ヘアメイクさんか,映画会社の人かな。当日上手く回るように動く人たちいるじゃん。その俳優さん達担当かな。
演じたくないわけでもないけどね!
そっちは観客ではないんだね。観るの好きじゃん。』
「観客?それは選択肢になかったな。」
『じゃあ野球!野球に関わる仕事だったら?場内だけじゃないからね。』
「野球?野球っていうと,出ることを考えるね。
あ,じゃあ映画にもっと詳しい人で,役者の役柄とかポジションとか,よく理解してたら,主人公がやりたいですって答えになるのかな…?
俺は野球でやると選手を考えるから。」
『それは自分が野球やってたからってこと?』
「やってたからっていうか…。
いや,違うか,野球は圧倒的に選手が注目されるからかな。」
『映画でもそうじゃない?主人公。』
「いや,でも撮る側もさ,インタビューされたりするじゃん。
こういう気持ちで創りました,とかさ。」
『確かに。
選手のどこがやりたいの?』
「野球だったら…ライトかな。
外野手って,こう,基本暇なんだよね。ボールが来ないと。
でもイチローに憧れてるってのあるかもな。
タッチアップってわかる?犠牲フライともいうんだけど,外野手がボールをキャッチした瞬間に走り始めれば,次の塁を踏めるの。」
『うんうん。なんとなくわかる。』
「肩が強いと,タッチアップで次の塁に行こうとしている選手を刺せるんだよね。
ライトは,そういうたまにしか来ない球を取って,そういうスーパープレーができるの。
イチローは,肩が強くてコントロールがいいから,そうやって刺せて,レーザービームって呼ばれてるの。
だから俺もライトかな。
そっちは野球だとイメージできない?」
『なんか,会場の盛り上がりとか雰囲気を皆で楽しめることしたいんだよね。ビールの売り子とかかな?
そこで一緒に喜んでたいなぁ。』
「重いらしいよ,ビールのやつ。」
『そうなんだ。まぁ今まで重い楽器やってたから,耐えるでしょ。
あと,何かを教えたいわけじゃないんだけど,あの…監督じゃないけどベンチにいる人いるじゃん。』
「コーチってこと?」
『うんうん。教えることは別にしたくないんだけど,
一緒に歩みたいんだよな。
満塁で,今打ったら逆転みたいなときに,ずっと頑張ってきたんだからここで叶ってほしい…!って思ってたい。』
「強豪校のマネージャーみたいだね。」
『そうだね。
次は何がいい?選んでいいよ。』
「なんだろうな。あ,学校の先生。学校に関わる仕事。」
『学校ね。うーん,なんだろう。
まぁやっぱり保健室の先生かな。あとは,音楽鑑賞会とかで来る人達。』
「ずるくない?それ。」
『いいんだよ,学校に関わる仕事しかない設定だから。』
「それならこっちは学校を作る建築家とかいうよ。」
『別にいいけど。
本当になりたいの?それ,今自分がやってるし,って思って言ってるとかじゃないの?』
「う~ん。そうねぇ。
なんか,部活の先生とか面白そうなんだよな。
バレーの先生とか山岳部の先生とか。学校の先生でもあるの。」
『へ~~!なんで?』
「自分だったらこう教えるのにな~って思うからさ。
そっちは?」
「音楽鑑賞会の時に来る人って,一時的なんだよね~。関わりが。
なんかもっと深く関われるのないかな。」
『顧問の先生は深くない?結構。』
「うーん,なんか,固定じゃなくて色んな人と深くなりたいんだよねぇ。」
「そうかあ。人が好きだねぇ。すごいことだと思うな。」
『ええ,ありがと。
今高校で考えてたでしょ?』
「中学高校で考えてた。」
『へぇ…高校だとどうだろう。
…いや!!高校は生徒だな~!!!』
「ふふ,生徒ね。それが一番いいかもね。」
『なんか先生だと寂しくなっちゃいそうだな。
戻りたいって思っちゃいそう。私はね。』
「高校の図書室の司書とかはどう?
ほとんど行かなかったなぁ。中学の時は結構図書館行ってたけど。
楽しそうではないけど,穏やかそうだなと思って。」
『本好きな子は来るもんね。』
「中学の頃はよく司書と喋ってたし。
伊坂幸太郎教えてもらったんだよな,司書の先生に。」
『私もよく喋ってたかも。
なんかもう,景色になっちゃいたい。あの日々を彩る景色になっちゃいたいくらいには,楽しかったんだよな。』
「そんなに青春だったのか。
まぁでもな,俺も部室になっちゃいたいかもな。」
「部室になっちゃうの!?」
「ふふふ。部室いいじゃん。なんかくさかったりするけどさ。放課後あそこでだべったり,夜遅くまで帰んなかったり。キャッチボールとかしてさ。懐かしいな。」
『いいね,なんか。』
「授業サボったな。あそこで。
あと遅刻した時にね,時間が中途半端だから,部室で時間調整をしてから行くの。」
『あはは。でもみんなやってただろうね。』
「皆やってたと思うよ。たまに鉢合わせるもん。」
『景色の中だと何だろうな,私。
色々あるね。夕焼けとかもいいし,古びた校舎の廊下もいいし,新しい校舎と古い校舎のつなぎ目!
というかあの校舎の形も良かったんだよな。真ん中がどこからでも見えて。
校舎かな。』
「相当高校が楽しかったようだね。いいじゃん校舎。」
『ね。
今日はこんくらいにしとくか。』
「うん。楽しかったね。」
「ね。」
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