10年前と変わらない?プリントの整理ができない問題
MNHの小澤です。
MNHでは創業当初から障がい者の労力を取り入れてきた。さらに、社会にうまく適応できないために、働く場が持てない若者にも目を向けてきた。
そんな礎がある我々だが、発達凹凸の子のための事業を検討していた時期がある。
2013年の秋ごろだ。
今でこそ細かく分類されてきた発達凹凸だが、大まかにみて注意欠如・多動、学習障害、対人関係が苦手などの特性が多いと言われている。
例えば、発達凹凸の子どもが、不注意により学校からプリントを持って帰ってこなかったとする。学校の引き出しの奥でぐしゃぐしゃになっている時もあれば、家には持ちこむけど整理ができない場合もある。
その家庭では子どもを叱ったり、子どもと親が喧嘩したりするかもしれない。しかし、喧嘩をしたところで何も解決しない。本人に悪気はないし、特性なのだから。
そこで、「そのプリントを電子化して整理してあげるサービスがあればいいんじゃないか」と思いついたのだ。つまり、プリントを整理できない子の家庭から、ファクシミリでMNHへ送ってもらい、こちらでPDFファイルにして、Googleドライブにアップロードしてあげる。そんな事業だ。
実際に発達凹凸の子の家庭に協力してもらい、スキャナーを渡し、なにか送付してもらうという実験も行っていた。
ちなみに2023年の現在では、紙をデータ化して、連携するクラウドサービスに直接データ保存までできるといったスキャナーが続々と登場してきている。そして、「子どものプリントが多くて整理できないお母さんへ」という触れ込みも目にする。
技術の進化を感じるとともに、「10年経った今でも悩みはあまり変わっていないんだ」と驚いた。プリントを配布する学校側も少しは検討していただきたい、と思うのはぼくだけだろうか…
一方、MNHではその実験の過程で、どのような学習障害があるのかを、当事者らにヒアリングしていった。それを通じて、学習障害に対するわれわれ自身の解像度が、ずいぶんと高まった気がする。
たとえば、ある発達凹凸の子は、視覚認知が苦手だった。
ひっ算などで数字を「縦に合わせて」書くことが難しい。しかし、そこに罫線を書いてあげると取り組めるという。つまり、計算ができない訳ではないのだ。
このようにヒアリングをしていくと、問題と思っていたことが実は問題ではなく、別の所に本当の問題があることにも気付くのである。
これが後の、引きこもりの人などの働く場を創出するためのコミュニティ工場に繋がっていく。つまり、「引きこもりの問題の本質」を見極めるための学びとなったのである。