だめ日記
30代後半、NY在住、だめ人間。
今月はお金をいただける仕事をほぼしていない。来月の家賃も苦しい。
アートを作っている。作っているが売れない。
アーティスト歴=売れてない歴。
作らないという選択肢がない、それが現実。
公園
絵に使う資料用に近所の公園に写真を撮りに行った。
中学生くらいの男の子が一人だけバスケットコートで練習している。
「君を撮っているんじゃないよ」とわかってもらえるように、最大限にカメラを彼に向けないようにする。
必要なのはフェンスの写真。広々とした土曜日の公園で、私は暗がりになっている、汚い民家の壁と公園のフェンスを、中学生男子に怪しまれないように撮っている。
白と黒の大きな犬を連れた家族連れがバスケットコートにやってきた。
(あの子、あんなとこで何撮ってるのかしら)ってきっと思われてる。自意識過剰。
バスケットコートをぐるり、テニスの壁打ちのフェンスとブランコの近くのフェンスも撮って、家に帰った。
*カモフラージュ用に撮った民家の壁とフェンスの写真を確認したら、奇跡的に玉響現象が写っていた。加工なしで、この色。
プリント
撮ったものを確認すると、使えそうだったので嬉しくなって、そのまま絵の制作に取りかかろうとした。が、デジタルカメラで撮った写真を一度出力する必要がある。だがうちにはプリンターはない。
画像の調節後、近所でプリントできる場所を探した。(マンハッタンまで行けばすぐにできることは知っている。)
駅近くのCVS、なんだこれなら徒歩圏内。USBにデータを移して、徒歩圏内に出る準備をして家を出た。ほこほこ歩いて、着いたらLatino系のおばさんが自分の携帯から家族写真を続々とプリントアウトしていた。
よく見てみるとCVSにあるのは写真紙にプリントアウトされる、4x6とかよくある「写真」のサイズのプリントアウトのみだった。一番大きいのは「ポスター」のサイズになってしまい、20ドル以上もした。
これじゃないぞ、とその場で他の場所を検索。大きい通りの先にあるカフェの中と、その間にもプリンター屋さんがあると携帯が教えてくれる。
カフェを目指すつもりで歩けば、どちらかではプリントできるだろうと軽い気持ちで歩き出した。
途中のプリンター ✖️ウェブサイト上では6時までだったが、4時で閉店。
カフェのプリンターサービス ✖️プリントしたいものをプリンターの会社にEメールし、その会社にクレジットカードの番号等送るという謎の遠隔サービス。最初に4ドル払わないとできないとのことだったので、レターサイズ1枚が必要な私には適当なサービスではない。
また携帯先生に聞きますと、プリンター屋さんはその道の先に1軒と、違う大通りにもう1軒。
その先の1軒は6時までだが5時閉店パターンで、既に閉店。
もうここでできなかったら諦めようと、思った最後の店に到着。電気はついている。PUSHと書いたドアを押してみるが開かず、よく見るとドアに手書きのメモで "Be Back in 15min"(15分で戻る)と、電話番号が書いてある。
風がぴゅうぴゅう吹く大通りで、そのまま少し待ってみる。隣のヘアサロン&ネイルのお店のおばさんたちはぬくぬく携帯をいじって、私の方をチラチラ見ている。ああ、そうです、寒いけど待ってるんです。
その電話番号に(嫌だけど)電話してみた。アラビック系のアクセントのおじさんが出た。その店主らしきおじさんは、焦る様子もなく、10分後には戻るよ、何が必要なの?とのこと。白黒で一枚だけプリントアウトしたい、と伝える。OK, OK, 10minutes.
黒いダウンジャケットを着た高校生らしき大きな男の子が同じようにプリント屋さんのドアを開けようとして、開かなくて、ドアのメモに気が付いていた。彼にも、今この番号に電話したけど10分後に戻るって言われた、と伝えた。その彼は、あ、そ、って感じでどこかへ行ってしまった。
外で待っているには寒すぎたので、近くのお店に入ることにした。入りやすそうな中国系のダラーストア。さっきの高校生らしき男の子がそのお店にいた。同じ目論見か。絵で使うペーパータオルを$1と小銭で買う。手袋を外したり付けたり、お財布を出したり入れたり、ペーパータオルを入れたり、がさごそした。
もう10分経ったかな?と思って店に戻ってみたが、まだドアは開かない。アメリカ人の10分は30分だと誰かに言われたのを思い出して、もう諦めて近くのカフェに行くことにした。
近くのカフェは歩いて3分。歩いている時に嫌な予感がした。
手袋をなくした。
なくした予感がすぐにしたので、その場で持ち物を全て確認。やっぱりない。低血糖の時に起こるような心のざわざわが治らないので、諦めてカフェに行った。
もう夕方だし、コーヒーはそんなに好きではないので、コーヒー以外の適当な飲み物を探したが、みつからないので一番安い$2のコーヒー。だらんとした若い女性店員は、だらんとした手つきで一番安いコーヒーを注いでくれた。もちろんミルクと砂糖をがぶ入れ。
座ってコーヒーを飲みながらたまたま持っていた本を読む。暖かいカフェに座るためだけのコーヒーはやはりおいしくない。本は読んでるが、気になっているのは時間だけ。もしこのまま本に没頭してしまって、プリント屋さんが閉店になったら元も子もない。無駄に待っただけにはなりたくない。
文字を追ってはいるが、そわそわが止まらない。
右側には学生と思われる一人の金髪女性。医療系の教科書っぽい本を広げながら、見ているのは携帯画面。
左側はカップル。ラップトップを開いて勉強をしている風だが、たぶん二人でいることが楽しいお年頃。
落ち着いてもう一度手袋を探してみるがやっぱりない。悲しいことこの上ないのは、2018年のクリスマスに日本に一時帰国した時に親友にもらったものだったから。右側だけ、なくしてしまった。
私は左手を贔屓する癖があり、いつもは右手には手袋をしない。
今日は寒すぎて単純なる防寒のために右手にも手袋をしていた。家を出た時はすぐに帰ると思っていたこともあり、こんなことになるとは。友達に申し訳ない気持ちと自分の馬鹿さにがっかりが止まらない。
もうここまで歩いたので、仕方がない。悲しい気持ちを引っ張りつつ、プリント屋さんに戻る。道中手袋を探してみるが、カフェからプリント屋さんまでの道には落ちていない。
ドアが開いた。店主も先客のおじさんもいる。
モハメッド、また明日ね、なんて挨拶されている。顔なじみ、常連さんのやりとり。初めての私はおどおどと、一枚プリントしたいんだけど、と伝える。
あれだけ待っていた、プリント屋さんのモハメッドと私とのやりとりは1分未満。
「USBからプリントアウトするのは、一番安くて2ドルから。」
…じゃあ、いいや。
・・・
なくした手袋、悲しい気持ち、増えた1ドルのペーパータオルを引き連れて、風が吹く中また家に帰る。
家に帰って携帯の歩数計を見たら、18000歩、12.5kmだった。
キャンバスは真っ白のまま。
本当にだめだと思ったので、noteに書くことにした。
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