野球どアホウ未亡人〜知らないからこそ生まれるカルト
『野球どアホウ甲子園』という漫画があったのであり、主人公は甲子園と阪神しか知らない坂田三吉でありながら、堂々カンニングで東大入試を突破してしまい、阪神のエースとなるあきれた水島ドリーム漫画だ
『ドカベン』に代表される手を替え品を替え輪廻転生的に主人公たちがスケールアップする大河ドラマは漫画のお手本だと思う
作者が文字通り『野球狂の詩』を地で行く人であってこその偉業だが、真逆に野球のルールすら知らない人だから描けた荒唐無稽に過ぎる名作、人気作も数多い
この映画もまた、野球を知らない監督たちがつくったらしい
元高校球児の草野球ファンタジスタに洗脳された挙句殺された夫に代わって仇の弟子となり、眠っていた野球の才を遺憾なく発揮、そして復讐を果たす物語ということでよいのだろうか
正直何がしたいのかよくわからない、ひとつ思い当たるのは平成生まれが昭和四、五十年代のちょっと猥雑な空気に魅せられ、大映、日活、国際放映(←新東宝)、大映テレビの路線を踏襲したいのかなと思った
私が子どもだったころ、映画はとうに斜陽していて、テレビの黄金期である
たとえば大映出身の増村保造が基礎をつくった大映テレビドラマなどは、高血圧高速度な演出を旨とし、不条理のかたまりだった
一回二回まわって、このあたりのノリを好む若い人たちがいるのだとしたら、エイジハラスメントを恐れずに言うと、ちょっとどうかしてる
しかしながら、ショット、カット、シークエンスはものすごく計算されていて(勘違いかもしれない)、能天気なテーマ曲とともに焼きついている
映画館に行ったら重野という野球狂師匠役の人がそのままの姿で出迎えてくれて、なんだかとてもうれしかったのは事実だ
バカな人たちが次に何を撮るのか楽しみでならない