2024年の振り返りと2025年のゐのすビール
はじめに
あけましておめでとうございます。この文章は、松尾大社に初詣に行った帰りに書いています。松尾大社は京都にある神社で、酒の神を祀っています。今年も美味しいお酒を作れるようにと願ってきました。
毎年同じようなことを書いていますが、まずはゐのすビールに関わってくれたみんなへの感謝です。コラボビールを一緒に作ってくれたBeerBar MIYAMAと蜃気楼珈琲。ゐのすビールを売ってくれたお店。そしてもちろん、飲んでくれたお客さま!
みんなに助けてもらいながら、今年も1年間活動できました。ありがとう。
ちなみに、2024年初に書いたものはこちら。
2024年に作ったビール
2024年は3作のビールを作りました。とても少ないけど、いい3作だったと思います。
怖そう、だけどやわらかい
京都にある仲良しのバー・ミヤマのBeer Jamboree出店に合わせて作りました。昨年からアメリカ西海岸に頻繁に通い、自分の中に見えてきた理想のWC IPA像を表現してみました。
Beer Jamboreeはビアバーが出店するビアフェス。通常ビアフェスにはブルワリーが出店することが多いですが、バーの方がメインのフェスは珍しい。どのビアバーも馴染みのブルワリーと一緒に作ったコラボビールを引っさげて臨んでおり、ブルワリーの代理戦争の様相でした。すごく楽しいフェスだったので、2025年も楽しみ(2025年もゐのすビールは代理戦争に参戦するつもりです!)
魅惑 3rd batch
こちらも仲良し、蜃気楼コーヒーとのコラボビールシリーズ。3作目にして好き嫌いが大きく分かれるビールになりました。フィリーサワーに嫌気発酵のスペシャルティコーヒーを漬け込んだSour IPA。お酒や飲み物に詳しいプロからはとてもよくほめてもらいましたが、ただ酸っぱくてよく分からない、とも何度も言われました。あるビアバーの店主から「僕は大好きだしすごいと思う、でもこれを売れる自信は無いよ」と言われたのは、良くも悪くもそのまま受け取っています。
思い返せば、このあたりからわたしは、副原料を通した表現がゐのすビールの独自性になるのかもしれないと思っています。来年も副原料系のビールが続きます。
降る秋
仲良しのミヤマが新店を出すというのでまたも作らせてもらった、お祝いビール。個人的に黒ビールが好きではないのに黒ビールを作るリクエストをもらったので、悶えながら、自分も飲みたくなる黒ビールを作りました。
Black IPAというスタイルです。黒いのに軽くてホッピーで飲みやすい、と書くと聞こえはよいですが、モルトを味わう黒なのか、ホップを楽しむIPAなのか、実にハッキリしない、よく分からないスタイルだと思います。それでも秋らしい黒を感じつつホップを前面に楽しめる、自分が飲んで美味しいと思えるビールになったし、一部の方からはゐのすビールで一番美味しかったとさえ言ってもらえたので、自信になりました。ゐのすビールから黒ビールが発売されることは当面無いと思うけど、一つ美味しい黒ビールを作れてよかったです。
イベント
今年もたくさんイベントに出ました。
自分たちが作ったものではないビールや、ビール以外のカクテルでの出店も行いました。
特に印象深いイベントが二つ。
一つは、Far Yeast Taiwanでのイベント。昨年作った「東京の泥棒猫」というビールを台湾に持って行って、現地のビアバーで開催させてもらいました。ビールを通じて台湾にたくさんの友達ができたことがとても嬉しかったです。
詳しくはこちら。
もう一つは、七夕の日に行われた「Free windandwindows Flea」への出店。自分たちのビールはほぼ無し、ゲストビールを売るという、ビール屋台としての出店でした。ゐのすビールはファントムブルワリーとしてやっていて、作ることが最も大きい表現ですが、それ以外にもビールとの関わり方はあるし、けっこう楽しい、ということを体感しました。
これからもゐのすビールはブルワリーでありつつ、作るに限らず、ビールに関することは何でもやる所存。いろいろな場所でいろいろなことをやりたいです。
2025年のゐのすビール
作る量を増やす
作る量を増やすには、2つの方向があります。
まず、1回あたりのバッチサイズを大きくする。
バッチサイズが大きくなると、せっかく作ったお酒がすぐに売り切れ、ということがなくなり、飲みたいと思ってくれた方に広く飲んでもらえます。また、作れる醸造所の選択肢が増えて、大きい醸造所でもビールを作れるようになるので、より多様なビール作りに繋がります。
2つ目が、リリース頻度を増やすこと。もっとたくさんのビールを、高い頻度で作ろう、ということです。さまざまなスタイルを作れるので、お客さんが好みのものに出会える確率が上がります。また、作り手としてもより速く知見がたまり、より成長できます。
自前の醸造所も店舗も在庫設備も持たない兼業ファントムブルワリー、という形態で活動しているゐのすビールにとって、どちらも非常にチャレンジングな取り組みですが、少しずつ増やしていけたらいいと思っています。
ビール以外の飲み物
ビール以外のお酒への関心が(ゐのすスタッフ内で)高まっています。
発酵を突き詰めると、他のお酒から学べる内容が増えていきます。例えば、ワイルドエールは自然の酵母で野生発酵をしますが、最近復活しつつある酵母無添加の日本酒と似た作り方です。また、ビールに果物を足して再発酵・熟成させることがありますが、ワインで果皮についた酵母で発酵させるプロセスは共通しています。
お酒以外にも学べる飲み物は多いです。ゐのすビールのコーヒーIPA「魅惑」はもともと、バーテンダー兼ロースターのりんたろうさんという人が作るエスプレッソトニックが美味しくて、その味のバランスをビールで再現しようと始めた取り組みでした。
お酒もそれ以外も、あらゆる飲み物から学んで、美味しいビール作りに活かしたいです。
より自由に、フットワーク軽く
兼業ファントムブルワリーはたくさんの活動制約がありますが、強みとして活かしたいことでもあります。もっと日本の外に出て、たくさんの作り手・飲み手と乾杯すること。ビールもビール以外の飲み物も、全て繋ぎ合わせて、とにかく美味しいものを作ること。ブルワリーやビアバーにはできない、ハッとするようなことをしたいです。
(なおこれについて具体的なことは何もありません。これから考える!)
最後に
やりたいことはたくさんありますが、ゐのすビールに関わる人がみんな笑顔で、健康で楽しく乾杯できることが一番嬉しいです。
2025年も、あらゆる時代性も商業性も帯びず、純粋なビールへの愛を共有できますように。