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デ・キリコ展(東京都美術館)
美術展を訪れるまで、デ・キリコについて私はほとんど知らなかった。美術の教科書で見たことがあるという程度の知識だ。
美術展があることを知ってからもしばらく迷い、やっと事前購入のチケットを購入した後も財布の中に入れたまま。
20時まで開場している金曜日の仕事終わりに行こうと日を定め、Googleカレンダーに予定を書き込み、東京都美術館でようやくチケットを提示できたのが19:15。
駆け足の鑑賞だったが、それでも閉館までの45分間は非常に有意義なものとなった。
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展示はデ・キリコの初期から晩年の作品100点以上を集めた回顧展だ。
回顧展に行くと実感するのが、教科書に載っているような代表作はあくまで代表作であり、画家は彼らのキャリアの追求の過程で「自分が描ける最高の絵」を模索するために様々な手法や場面設定を試行錯誤しているということだ。
至極当然のことのように思えるが、私はいつもこのことを忘れている。画家というのは名画を「描けてしまう」と錯覚してしまうのだ。
デ・キリコというと、私は展覧会タイトルのような、室内と室外が混じり合った、主に人工物をテーマとした絵をイメージしていた。
しかし、当然ながらデ・キリコも生涯そればかり描いていたわけではない。ルノワールらから影響を受けた淡い色彩とタッチの作品や、動物や人を主題とした作品も展示されており、それらは私の目には新鮮に写った。画家というキャリアと、探究心・追求心を持って真剣に向き合った人物だったようだ。
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展覧会HP展示作品ページより
展示されていたデ・キリコ自身の言葉で、私の心に響いたものがある。
世界に住むとは、奇妙なもので溢れた巨大な美術館にいるようなことだ。
デ・キリコの一見不思議な絵も、要素ごとに分解すると自身の実生活の体験が元となっている。(と今回の展示で学んだ。)
画家に限った話ではないが、「アーティスト」と呼ばれる人々は、日常生活を切り取る様々な刃型のナイフを持ち合わせている人間だと私は感じている。名画を描く技量はないものの、私もそのような目線だけは持っていたいと常々考えているのだが、世界を「面白い」と思える角度を大切にしていきたいと改めて感じた。
本展示は写真撮影NGだったが、壁もオレンジや緑などのビビッドカラーで彩られ、内装も含めてデ・キリコの世界観を表していた。平日夜だったので観客もまばらで、好きな絵画の前で存分に立ち止まることができた。解説を読み込む時間はなかったので、図録を購入した。こちらも大変読み応えがありそうで楽しみにしている。
東京都美術館での会期は8月29日まで。もし迷っている方がいたらぜひ足を運んでほしい。