業界情報 半導体
業界情報 半導体
⚫️2021.11.8日本経済新聞🗞
【サマリー】
政府、半導体の生産企業を支援
補助金検討 第一号は熊本に新設するTSMCの工場
【思ったこと】
5G関連はじめ、半導体は10年は需要がある!
との予測
ただ波があるのは間違いないので
補助金で設備投資の一部を賄えると投資としては楽
【記事全文】
政府は先端半導体の生産企業を支援する法制度を整える。需給逼迫時に増産に応じることなどを条件に国内での工場建設に補助金を出す枠組みを定める。台湾積体電路製造(TSMC)が熊本県に新設する工場が認定第1号になる見通しだ。経済安全保障上の重要性が増す半導体を国として安定して確保できるようにする。
高速通信規格「5G」の開発企業を対象とする関連法に新たな重要分野として半導体の追加を検討する。改正法案は12月にも開く臨時国会への提出をめざす。
財源として2021年度補正予算案で数千億円を確保し、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)に基金を設ける方針だ。補助金を支給する前提として、先端半導体の工場建設を認定するルールを定める。
稼働後の安定的な生産や投資、技術開発の継続などを条件に想定する。需給逼迫時には増産に応じてもらうことも視野に入れる。技術流出の防止を目的とした関連法の順守なども求める。
事業者が提出した計画書を関係省庁で協議して経済産業相が認定する。要件に違反した場合は補助金の返還を求める。
TSMCの熊本県内の新工場が最初の認定対象になる公算が大きい。「総額1兆円規模」(岸田文雄首相)の投資額の最大半額を補助する。国内外の他の半導体メーカーも認定を受ければ支援対象になる。
TSMCは22年から工場建設を始め、24年に量産を始める。自動車で主流の22~28ナノ(ナノは10億分の1)メートル品を製造する。スマホなどで開発競争が進む「最先端」の半導体ではないものの、自動車だけでなく家電など用途は幅広い。
世界貿易機関(WTO)は公正な貿易の支障にならないように政府の産業補助金にルールを設けている。
輸出支援を目的とする輸出補助金と、国産の部品や材料の使用を条件に支給する国内産品補助金が協定違反と即刻みなされる「レッド補助金」であるのに対し、今回の半導体向け補助金はケース・バイ・ケースで違法性を判定する「イエロー補助金」に該当するとの見方が強い。運用次第では外国からWTOに提訴されるリスクもゼロではない。
⚫️2021.10.26日本経済新聞🗞
世界の研究機関や巨大企業が覇を競う人工知能(AI)向けの専用半導体。その研究開発のトップグループに、日本から食い込んでいるのが東京工業大学の本村真人教授だ。NEC在籍時から続けてきた半導体の基本構造の研究を、AI半導体向けに発展させ、世界初の研究成果を次々に発表している。
1987年に入社したNECの中央研究所で集積回路の研究に取り組んだのをきっかけに、半導体を研究開発する道を歩み始めた。専門分野のアーキテクチャーは回路設計の前提となるシステムの基本構造を指す。かつては世界一を誇った「日の丸半導体」が長期衰退をたどるなか、「輝きを取り戻そうとの思いにかられながら研究をしていた」。
最大の成果は、用途に応じて動的に演算の仕組みを再構成できる半導体の開発だ。同時期に多くのスタートアップが生まれては消えていくなか、実用化を確実にするためチームごと社内の事業部門へ移籍。デジタルカメラ向けなどで実用化を果たした。この技術は業界再編を経て、現在はルネサスエレクトロニクスに受け継がれている。
大学教授に転身して3年がたった2014年、ある研究会で脳の働きを模したAI計算の仕組みであるニューラルネットワークに出合った時に直感する。「(自分の研究と)似た世界だな」。すぐさまAI半導体開発にかじを切り、「半導体技術のオリンピック」と称される国際固体素子回路会議(ISSCC)などで高い評価を受けた。
8月には独自のアルゴリズムによって消費電力を抑制し、スマートフォンやロボットなどの「エッジ端末」でリアルタイムのAI処理を実現する技術を発表した。「世界の土俵で頑張っている日本のグループは他にほとんどない」と胸を張る。
学生・院生時代に学んだ物性物理学が発想の指針となっている。少し遠い分野に思える物理現象と半導体アーキテクチャーだが、「規則的な構造から不思議な現象が起きる点で相通じるものがある」。物理学と情報処理の交差点から次世代のコンピューティングを紡ぎ出す。
⚫️2021.10.20日本経済新聞📰
【サマリー】
半導体製造の原料の価格高騰
半導体供給にさらなる影
【思ったこと】
供給に影響出ると、半導体不足!でさらに経済停滞への懸念強まる、、、
【記事全文】
半導体製造に不可欠な化学品の原料になる「黄リン」の取引価格が急騰している。主力のベトナム品は年初比でおよそ7割高い。主要生産国の中国で電力制限により供給が不足し、価格を押し上げた。国内の化学品メーカーは高値での調達を強いられ、加工品への転嫁値上げの動きも出ている。取引価格の上昇が続けば、半導体のコストアップ要因になる。
黄リンから精製する高純度のリン酸は半導体製造時の「エッチング工程」で表面処理用に使う。日本の商社の輸入価格(ベトナム産)は、10~12月期が1トン5000ドル程度。1~3月期の同3000ドル程度から7割弱高い。
貿易統計によると黄リンが大半を占めるとみられる「りん」の輸入単価は、8月に1トン32万9780円(3002ドル)。ドル建てでは2019年8月以来2年ぶりの高値をつけており、そこからさらに値上がりしたようだ。
最大生産国の中国は雲南省や四川省、貴州省、湖北省を中心に年間でおよそ80万トンの黄リンを生産する。ほぼ全量を自国内で消費するため、輸出市場に出回るのはカザフスタン産(9万トン程度)とベトナム産(8万5千トン程度)に限られる。
主産地の雲南省では9月上旬、政府当局が現地の黄リンメーカーに対して、電力消費量の削減へ9~12月の生産量を8月の実績値から9割減らすよう通達したもよう。供給がしぼられた結果、中国で急速に品不足になっている。1トン3万元程度だった中国の国内価格は、足元では同6万元台で推移している。
中国の化学品メーカーなどは9月以降、地理的に近いベトナム品の代替調達に動いた。ベトナム産の価格は1トン3000ドル程度から同6000ドル程度に跳ね上がり、日本の輸入価格も連れ高となった。日本の需要家は調達の大部分をベトナム産に頼っており、「当面は高値をのむしかない」(大手商社)と話す。
黄リンの急激な値上がりで半導体の生産工程にもしわ寄せが及ぶ。原料高に伴う採算の悪化から化学品メーカーは高純度リン酸の値上げを買い手の半導体メーカーに求めている。黄リンの上昇率には及ばないものの、それに迫る上げ幅とみられる。
黄リンから作る高純度リン酸の年間生産量は世界全体でおよそ14万トン。このうち3割(約4万トン)を日本国内で生産する。韓国や台湾の現地法人の生産分を含めると、全体の6割にあたる8万トン程度を日系の化学品メーカーが手掛けている。
精緻な品質管理が求められる半導体の製造工程では、不純物が少ない日系メーカーの製品が不可欠とされる。値上がりしても急な代替は難しい。安定調達を優先するため半導体メーカーが値上げを一定水準受け入れる、との見方が出ている。値上げが浸透すれば半導体の製造コストの上昇要因になる。
現時点では高値を受け入れることで黄リンを調達できている。一方である化学品メーカーの担当者は「日本向けの現実的な供給国はベトナムに限られており、代替調達のルートの確保は難しい」と指摘する。
中国の黄リン生産は速やかな回復が見込まれていない。価格の一段の上昇や供給不足でベトナム産の購入が難しくなると、半導体供給の新たなボトルネックになる可能性がある。
⚫️2021.10.19日本経済新聞📰
先端半導体の回路を描くために不可欠な「露光技術」で日本企業に逆転の目が出てきた。キオクシア、キヤノン、大日本印刷はハンコを押すように回路を形成する「ナノインプリント」を2025年にも実用化する。一部の工程が不要になり、設備投資を数百億円、対象工程の製造コストを最大4割減らせる見込み。露光分野でシェアを奪われてきた日本勢が再び存在感を高められそうだ。
3社は17年からキオクシアの四日市工場(三重県四日市市)でナノインプリントの試作装置を稼働させており、このほど実用化に向け技術面でメドをつけた。同社のプロセス技術開発第二部の河野拓也部長は「技術の基本的な課題は解決し、量産を想定した運用の検討に入った」と話す。
半導体の土台であるシリコンウエハーに回路をつくるための露光工程では通常、回路の設計図を形成した原版(マスク)越しに光をウエハーに当てて2次元の回路パターンを転写する。複雑な回路を形成する場合、様々な種類のマスクで何度も転写して徐々に目的の形状にする。
一方、ナノインプリントは3次元のパターンを形成したマスクをウエハー上にある感光材の液体樹脂に押しつけながら光を当てて、パターンを一度で転写する。記憶素子を立体的に積み重ねる複雑な構造をした、データ記憶に使うNANDフラッシュメモリーなどにも対応しやすい。現時点で線幅が15ナノ(ナノは10億分の1)メートル相当に対応するが、3社は今後さらなる微細化も狙う。
半導体の製造装置を手がけるキヤノンはナノインプリントについて、一時的にデータを記録するDRAMや、パソコンのCPU(中央演算処理装置)など演算を手掛けるロジック半導体への展開も想定。幅広く半導体メーカーに働きかける考えだ。将来はスマートフォンのCPUなどに使われる先端半導体への応用も期待する。
一方、キオクシアはナノインプリントを自社のフラッシュメモリーの製造ラインに導入することを目指す。将来、15ナノメートルよりも微細な半導体を新たに手がける際に活用する可能性がある。
ナノインプリントは海外半導体メーカーも注目するが、装置や材料など幅広い技術が必要なため日本が先行している。実用化されれば、世界で初めてとなるという。
線幅が微細な先端半導体は「極端紫外線(EUV)」と呼ばれる技術を用いた装置を露光工程に使っており、世界でオランダのASMLのみが手がけている。同装置は高額なもので1台200億円程度とされ、専用の検査装置や多くの電力も必要。ナノインプリントを導入すると、高額な装置の一部が不要になり、大規模工場では、設備投資額を数百億円規模で抑えられると期待される。
米インテルは3月、米アリゾナ州で200億ドル(約2兆2000億円)を投じて工場を建設すると発表した。半導体受託生産の世界最大手、台湾積体電路製造(TSMC)も120億ドルで同州に工場を建設する計画だ。半導体大手は兆円単位の巨額な設備投資がネックとなっている。
ナノインプリントはコストがかさむ露光工程の一部を省けるため、EUVに比べて同工程の製造コストを4割、消費電力も9割削減できる。
電気料金が他国より高い日本や、電力不足が深刻な国・地域で導入しやすいうえ、二酸化炭素(CO2)の排出削減を求める半導体メーカーの需要にも応えられる。足元では投資家などからも製造段階のCO2排出量の削減を求める声が高まっている。
20年後半に表面化した世界的な半導体不足は足元でさらに深刻化しており、増産に向けた半導体メーカーの投資意欲が高まっている。現状で供給が不足している半導体の大半はナノインプリントを活用できるため、幅広い半導体の生産で引き合いが期待できる。
本格普及には課題もある。一つが細かいゴミの影響だ。ナノインプリントはマスクをウエハーに直接押しつけるため、ゴミの付着による不良品の発生率が高くなる。製造時のゴミの発生を減らすため、装置・素材メーカーと連携して改良に取り組む必要があるという。
▼ナノインプリント 半導体の土台であるシリコンウエハーの表面に感光樹脂を塗布し、凹凸を付けた原版(マスク)を押しつけて電子回路パターンを転写する半導体の製造技術。マスクにお手本となる回路形状を作っておけば、複雑な構造でも一度に形成できる。従来の露光技術よりも省電力で、製造時のランニングコストや設備投資も抑えられる利点がある。
一方、現状の半導体の製造方法と比べて生産性が低下する恐れがある。ウエハーとマスクが直接接触するため、回路に細かいゴミやほこりが入るなど不良品が出やすいといった課題があり、実用化に向けて製造技術や運用面の改良が欠かせない。
⚫️2021.10.12日本経済新聞🗞
岸田文雄首相は11日夜のテレビ東京番組で、国内で半導体の生産拠点を確保する企業への支援を年内につくる経済対策に盛り込むと述べた。台湾積体電路製造(TSMC)とソニーグループの熊本県の新工場建設計画を「経済安全保障にとって大変重要だ」と評価した。
⚫️2021.10.5日本経済新聞📰
【サマリー】
新政権
半導体供給基盤強化の方針
中国、台湾に依存した供給体制はリスク
【思ったこと】
半導体は好不況の波が激しいとされている
パソコン、スマフォ、自動車、あらゆるものに必要不可欠
だから、景況感に大きな影響を受ける
研究開発費や設備投資にも資金が必要なため景気の波にもまれやすい
一気に盛り上がれば、一気に盛り下がる
三年サイクルくらい
たとえば、米中貿易摩擦で世界経済が落ち込めば一気に落ち込むなど
今の供給不足は2030年までは続くとされているが(EV普及などで)
今過剰な供給体制構築はリスク?
【記事全文】
岸田文雄首相は4日発足の新内閣で経済安全保障の閣僚ポストを新設した。バイデン米政権が中国との対立の深まりを受けて主軸に置くのが半導体のサプライチェーン(供給網)構築だ。同盟国などとの連携拡大に政権をあげて呼応する。
首相は自民党総裁選で「経済安全保障推進法」の策定を公約に掲げた。中国を念頭に先端技術の国外流出の阻止や重要物資の供給網を広げる。4日の記者会見で「戦略技術や物資の確保、技術流出の防止に向けた取り組みを進める」と力説した。
中心で担うのは経済安保の専任閣僚となる小林鷹之氏だ。当選3回の46歳で、首相が党政調会長時代に経済安保を議論した新国際秩序創造戦略本部の事務局長を務める。この座長を務めたのが先に党幹事長に就いた甘利明氏で、小林氏が実務面で支えた間柄にある。
戦略本部が5月にまとめた提言で、半導体産業の基盤強化について米中などが巨額の支援措置を講じているのを踏まえ、他国に匹敵する規模の支援を政府に求めた。
党の戦略本部も来年の通常国会に提出する法案準備を始めている。甘利氏を中心に作ったたたき台が政府案として具体化していく見通しだ。
経済安保は軍事分野に転用できる技術の流出防止や輸出管理など経済と安保が密接に絡む分野を指す。人工知能(AI)や高速通信規格5Gは兵器にも使え、技術の進化が軍事的な脅威になる。
近年は中国が軍事面で強権的な対応に傾斜して米国との対立を深める。米国はトランプ前政権時代に中国の華為技術(ファーウェイ)の機器に情報漏洩のリスクがあると主張し、同社など中国企業の製品を米政府機関が調達するのを禁じた。
半導体は様々なデジタル機器に欠かせない戦略部品で各国が供給網の確保を急ぐ。受託生産(ファウンドリー)を担う企業は中国に集積しており、その影響力を懸念すれば同国を外した形での供給網の構築が必要になる。
台湾にもファウンドリー企業はあるが、中台の対立が激しくなっており安定調達には脆弱性を抱える。新型コロナウイルスの感染拡大で半導体不足が深刻になり、自動車生産をはじめ日本の産業に影響がでている。
日本にとっては米国に加え、欧州、オーストラリア、インドも連携の対象となる可能性がある。9月末に初めて対面で開いた日米豪印の4カ国首脳会議では、世界的に不足している半導体の供給能力や脆弱性の点検で協力する方針を打ち出した。
米国と欧州連合(EU)も半導体の安定調達で手を組んでいる。岸田政権は日米を中心に欧州やアジア各国との協調関係づくりが急務となる。
政権の布陣は外交・安保で継続性を印象づけた。外相の茂木敏充氏、防衛相の岸信夫氏がいずれも続投した。茂木氏は首相から「外交は非常に継続が大事だ」との話があったと明かす。
首相は記者会見で新型コロナウイルス対応、経済政策について触れた後に「外交・安全保障は第3の重点政策だ」と語った。
バイデン政権は世界的な米軍の態勢を見直しており、中国への対処に重点を移そうとしている。
日米でも調整が欠かせない局面を迎える。日本にも中距離ミサイルの配備などで米国が協力を求めてくる可能性がある。
⚫️2021.9.22日本経済新聞📰
【サマリー】
半導体製造の90パーセント超が台湾に集中
【思ったこと】
ここにも世界的リスク
コロナ感染拡大
中国落ち込み
中東の不安定化
そして台湾への半導体集中
世界を見渡すと、リスクが潜んでいる
景気が落ち込む準備は、しておくべき
個人は人の役に立てる方法を見直す
法人は財務基盤、経営基盤見直し
【記事全文】
「TSMC(台湾積体電路製造)に部材を供給する我々サプライヤーに今、気が休まる時はない。毎日50ページにわたる資料を書き上げ、毎晩午後10時からTSMCとの会議で報告している。それを見て、歩留まりや装置の状況などの改善策を先方から詰められる。もうたまらない」
半導体産業の集積地、台湾北部・新竹地区。関連企業が軒を連ねるこの街で、日系企業に勤める30代の台湾人男性、蘇家慶(仮名)は連日の疲労で眠そうな目をこすりながら、こう続けた。「こうして我々がどうにかTSMCの工場を支え、操業が続いている。土日も関係ない。夜12時、朝6時だってTSMCから電話が来る。枕元にスマートフォンを置いて寝る毎日だ」
だがそれでも「まだマシだ」と蘇は話す。「TSMCの幹部の今の緊張感は想像を絶する。サプライヤーに少しでも甘い顔をすればすぐに左遷される」
TSMCの最先端工場に勤める50代の男性幹部、李大中(仮名)。工場で部門長を務める彼にも今、休みはない。昨秋来、異常ともいえる繁忙期に突入した。帰宅は毎晩、深夜3時すぎ。会社で寝泊まりするようにもなった。そうしてようやく工場はギリギリ操業が続く状態だ。
そんな李の唯一の支えは、年3000万台湾ドル(約1億2千万円)の報酬だ。中堅クラスでも年収数千万円のTSMCが過去1年間、賞与とは別に支払った特別報酬は社員平均で約560万円に達した。200万円台の台湾の平均年収をはるかに上回り、未曽有の繁忙を破格の待遇で応えるが、限界も近づく。
世界の先端半導体の生産は今、92%が台湾に集中する異常ぶりだ。TSMC経営トップの劉徳音董事長も「世界が台湾を誤解しないことを願う」と語るほど、世界中から顧客が殺到し、奪い合い、業界は完全にバランスを失った。当局も異例の対応で支援するのがやっとだ。
台湾は現在、新型コロナウイルス対応で全てのビザ発給を止めたが、半導体は特別扱い。ある日系企業は、数百人の技術者を台湾に送り、急拡大するTSMCの生産を綱渡りで支える。
だが、現場からは悲鳴に近い声が上がる。「米国に日本、ドイツ、台湾でも新竹、台南、高雄……。彼らは一体いくつ工場を造る気だ。人がいなくてこのままでは必ずパンクする。TSMCの工場に何かあれば世界経済への衝撃は相当だ。世界はまだその現実の恐ろしさを知らないんだろう」(日系幹部)
⚫️2021.9.9日本経済新聞🗞
【サマリー】
半導体「装置」の販売額前年比役50%増加
中国が中心🇨🇳
【思ったこと】
半導体、しばらく加熱🔥
外部環境を適切に認識する上で
こういう数値データは意識しておくべき👓📝
半導体業界の国際団体SEMIは8日、2021年4~6月期の半導体製造装置の世界販売額が前年同期比48%増の248億7000万ドル(約2兆7300億円)になったと発表した。最大市場である中国を中心に販売が伸びた。世界的に半導体不足が深刻化するなか、増産に向けた設備投資が活発化している。
中国向けの装置販売額は79%増の82億2000万ドルだった。ファウンドリー(受託生産会社)などが生産体制を増強した。韓国サムスン電子など大手半導体メーカーも中国拠点の設備投資を続けている。米政府が20年に先端半導体に対応した製造装置の中国向け輸出を規制したが、家電や自動車に使われる汎用の半導体向けでは依然として活発な投資が続いた。
韓国や台湾も販売が好調だった。韓国ではデータを一時的に保存する半導体メモリーの増産などを受け、装置販売額は48%増の66億2000万ドルになった。台湾は44%増の50億4000万ドルで、最先端半導体向けの増産投資やファウンドリー投資が活発だった。
⚫️2021.9.7日本経済新聞🗞
【サマリー】
半導体、新素材
機能性向上へ
現在主力はシリコン→ダイヤモンド等
【思ったこと】
変化、変革、新技術
スピード社会
技術の変化スピードに負けないよう、
自分も変化していかなきゃ淘汰される
【記事全文】
シリコンが長く使われてきた半導体の基板材料で新素材の開発・導入が進んできた。電気自動車(EV)では米テスラによる採用を皮切りに、炭化ケイ素(SiC)を基板に用いた半導体の導入が相次ぐ。SiCや窒化ガリウム(GaN)を用いた化合物半導体に加えて、ダイヤモンドなどの研究開発も進む。回路の微細化に限界が見える中、新素材でさらなる性能向上を目指す。
スマートフォンやパソコンなどの電子機器はCPU(中央演算処理装置)やメモリーなど様々な半導体を使うが、現在は大半が基板材料にシリコンを用いて製造されている。1947年に米ベル研究所が半導体トランジスタを発明してしばらくはゲルマニウムが使われたが、60年代以降は入手しやすく、加工も容易なシリコンが主流だ。
その絶対的優位が近年、EV向けのパワー半導体で崩れつつある。きっかけはテスラだ。同社は主力EV「モデル3」の一部で、モーターの制御などを担うインバーターに量産車として初めてSiC基板を用いた半導体を採用し始めた。
SiCは炭素化合物の一種で、シリコンに比べ原子と原子の結合が強く、ダイヤモンド、炭化ホウ素に次ぐ世界で3番目に硬い物質とされる。量産に高度な技術を要する半面、いったん結晶になれば特性が安定しているため、半導体の消費電力のロスを半分以下にできる。
放熱効果も高くインバーターの小型化につながる。名古屋大学の山本真義教授は「モデル3の空気抵抗値はスポーツカー並みに低い。インバーターの小型化で流線形のデザインを実現している」と話す。
テスラをきっかけに、EVでの採用機運が高まっている。独半導体大手のインフィニオンテクノロジーズは6月、EVのインバーター向けSiCモジュールを投入した。日本法人の神津岳泉氏は「SiCの普及のタイミングは以前の想定に比べ明らかに早まった」と話す。韓国の現代自動車は次世代EVにインフィニオン製SiCの採用を決めた。消費電力のロスを抑えた分、シリコンに比べ航続距離を5%以上延ばせるという。
仏ルノーは6月、半導体大手のSTマイクロエレクトロニクス(スイス)と2026年以降のSiCやGaN半導体の供給で提携を結んだ。トヨタ自動車は20年末に発売した燃料電池車「MIRAI(ミライ)」の新モデルにデンソー製のSiCを採用した。
調査会社の仏ヨールはSiCを用いたパワー半導体の市場が26年に20年比6倍超の44億7820万ドル(約4900億円)に拡大すると予測する。
普及の壁だったシリコンとの価格差も縮小している。名古屋大の山本教授は市場の立ち上がりに伴う量産効果などで「5年前まで10倍前後あった差が足元では2倍ほどに縮小している」と指摘する。SiC製基板の大口径化に取り組むメーカーも出ており、コストが一段と下がる余地がある。
日本勢ではロームが25年度までにSiCを用いた半導体で世界シェア3割を握る目標を掲げる。同社は10年にSiC製のトランジスタを世界で初めて量産し、実用化を主導してきた。09年に買収した独サイクリスタルはSiC基板を手掛けており、材料から一貫生産体制を築いている。
ロームは生産能力を19年度比で5倍以上に引き上げる計画で、このほど福岡県の主力工場で新棟が完成した。今後発売が予定されているEVへの採用もいくつか決まっているという。中国自動車大手の吉利汽車とも次世代半導体分野で技術提携した。伊野和英取締役は「これまではSiC市場の立ち上げに向けて半導体メーカー各社が協力してきたが、ついにメーカー同士が競う段階に入った」と話す。
SiCを追うように様々な新素材の応用開発が進んでいる。有力株の一つがGaNだ。青色発光ダイオード(LED)の基板として開発された日本発の技術で、パワー半導体基板に応用すればシリコンに比べ電力損失を10分の1程度に削減することが期待できる。SiCとの比較でも高速動作などに対応できる強みがある。
すでに充電器など一部の用途では実用化が進んでいるが、シリコンなど別の素材と組み合わせた製品がほとんどで、素材本来の性能を十分に発揮できていなかった。大阪大学の森勇介教授らの研究グループは豊田合成などと共同でGaNのみで直径6インチのウエハーを安定量産する技術の開発を進めている。
⚫️2021.9.2日本経済新聞🗞
「サマリー」
大手
半導体の供給力強化
「思ったこと」
そんなに投資するほど、半導体の需要見込めるのか😳
しばらく半導体業界は忙しいかな😳
「記事全文」
ルネサスエレクトロニクスの柴田英利社長は1日、日本経済新聞の取材に応じ、半導体の安定供給へ向けて積極投資する方針を明らかにした。短期では災害時などに備えた設備強化に100億円超を、今後3年間では生産能力の増強に大規模な資金を投じる。ここ数年抑えてきた投資を拡大する。8月の英企業買収では工場の自動化など「IoT」を強める。相乗効果は製品群の組み合わせなどで約360億円の利益貢献を見込む。
インタビューに答えるルネサスの柴田社長
ルネサスの主力製品である、動作制御を担う「マイコン」をはじめ、半導体需給は逼迫した状態が続いている。柴田社長は需給が落ち着くのは2022年上半期になるとの想定に立つ。「在庫を一定程度積み増さないと、需要家のオペレーション(事業運営)は元に戻らない」といい、メーカーなどの半導体の在庫水準は一段と増えるとみている。
ルネサスは、すでに3月の火災前を上回る水準まで出荷量を回復させているが、受注残は今後も増える見通しで、安定供給への備えが欠かせない。火災やサプライチェーンの混乱などを受け自前の供給能力を強化する。
まず、災害などの非常時でも工場の稼働を継続したり、被害を少なくしたりできるような対応に「3ケタ億円の資金を投じる」。予備の設備を増やしたりすることなどが想定される。
生産能力の引き上げについても「今後3年で思い切った投資」をする。同社は売上高に占める設備投資の比率の目安を5%程度(前期の投資額は約220億円で投資比率は約3%)としているが、今後はこれを上回る水準になるとみられる。
中長期的なサプライチェーンの安定化には「より予見可能性が高い生産計画にシフトする必要がある」と指摘。業界全体で、確定受注や納期の長期化が進んでいくとの見通しを示した。
また8月末には英半導体ダイアログ・セミコンダクターを約6200億円で買収した。同社はスマートフォン「iPhone」の電源管理でも採用実績を持つ。柴田社長は「ダイアログの電力を効率よく使う技術、無線でつながる技術はIoTに不可欠」と語った。両社の製品群や販売網の組み合わせにより、約360億円の収益貢献を想定している。内訳は売上高成長で約220億円、コスト削減で137億円という。
ルネサスは、17年に米インターシル、19年に米インテグレーテッド・デバイス・テクノロジー(IDT)を買収。英ダイアログとあわせ約1兆6000億円を投じている。一貫して電圧や電流、周波数などのアナログ信号を処理する半導体分野に注力し、主力のマイコンと合わせた用途提案につなげている。
31日、買収用途として、6月末の有利子負債(約6500億円)の約4割にあたる2700億円を借り入れた。財務負担は増しているが、足元の稼ぐ力は高まっている。実際、米2社を買収した効果も出はじめ、21年1~6月期の売上高営業利益率は16%(前年同期は9%弱)に高まった。
本業で稼ぐ資金を元手に2年程度で負債を圧縮する方針だ。EBITDA(利払い・税引き・償却前利益)に対する純有利子負債の比率は1倍(20年12月末で2.1倍)へ引き下げる。安定供給への投資拡大は、負債を圧縮しながら投資に回せる現金を創出できるようになったことの裏返しでもある。
ルネサスのアナログに重心を置いた戦略は、海外勢に対して技術的な優位性を保持しやすいという長所もある。パワー半導体や、メモリーなどの分野では中国勢が大きく追い上げているが、アナログ信号の処理には、技術やノウハウの蓄積が重要となり「他の半導体に比べても(追いつくのが)難しい」(柴田社長)。
アナログや車載分野の半導体は、日本の半導体メーカーが強みを発揮できる分野であり、国の半導体戦略でも重要分野の1つになっている。日立製作所、三菱電機、NECの半導体事業が合流したルネサスは、半導体を巡る供給網の要の1つになっており、世界市場で戦える数少ない日本企業でもある。生産体制の地盤を固めながら、アナログ分野への成長戦略をどれだけ加速できるか。今後も正念場が続くことになる。
⚫️2021.9.1日本経済新聞📰
「サマリー」
半導体供給不足で企業活動に影
「思ったこと」
まいにちすごいな半導体関連
ちと加熱気味か🔥
「記事全文」
半導体不足など供給網の混乱が企業の生産活動に影を落としている。7月の鉱工業生産指数は前月比1.5%低下と2カ月ぶりのマイナスになった。自動車だけでなくエアコンなどの生産も落ち込んだ。部品不足などから一部自動車メーカーが8~9月に国内で減産を予定しており、先行きも下振れ懸念が強い。
半導体不足が大きく影響した自動車の生産指数は前月に比べ3.1%低下した。乗用車だけでなく、ハンドルなどの駆動伝導・操縦装置部品の生産が振るわなかった。電気・情報通信機械も3.4%低下した。エアコンのほかリチウムイオン蓄電池などが落ち込んだ。他方、需要が強い半導体製造装置がけん引し、生産用機械は1.6%上昇した。
7月の鉱工業生産指数の水準(2015年=100)は98.1となり、新型コロナウイルス流行前のピーク(20年1月の99.1)を再び下回った。統計を作成する経済産業省は「生産は持ち直している」との基調判断を据え置いたが、供給制約などから製造業の生産活動はここにきて一部に一服感が出てきた。
⚫️2021.8.31日本経済新聞🗞
「サマリー」
半導体、在宅勤務の浸透等を背景に、パソコン等の需要増→半導体需要増👓
「思ったこと」
半導体、、、波が激しい気がする
生産のために新規設備投資とか、大丈夫なんだろうか、、、
一年で需要収束くらいで考えていた方が無難?🧐
「記事全文」
――半導体の需給が引き締まっています。
「新型コロナウイルス禍が始まった2020年前半は実需が冷え込んだが、年半ばから在宅勤務の普及でパソコンやテレビなどの需要が伸び、自動車生産の急回復なども重なった。需給は非常にタイトな状況が続いている」
――半導体流通の現場は調達難が続いていますか。
「豊田通商子会社で自動車向けなどの半導体を扱う専門商社である当社では昨秋以降、製品確保が恒常的に難しい状況に変わりはない。顧客の生産を止めないよう必死に調達を続けている。今も製品によっては1~2週後の在庫がなく、次の入荷のメドも立たないものもある」
「顧客である半導体の需要家には納期の理解を求めている。これまで数カ月だった納期も、今は当社も半導体メーカーに年単位のスパンで発注せざるを得ない状況だ」
――メモリーのDRAMでみると、大口取引価格は年初から急騰しました。一方、パソコン・テレビ向け需要の過熱が落ち着き、相場も頭打ちとの見方もあります。
「(旧世代品である)DDR3型のDRAMは品薄感が強く上昇が続いている。自動車のカーナビゲーションなどの引き合いが強い半面、メモリーメーカーの生産は現行の主流品であるDDR4型などが中心のため、DDR3型は供給制約が大きい」
「6~7月ごろから上昇に一服感が出始めたのは(最新のパソコンなどに使われる)DDR4型だ。DDR4型も品薄で年初から急騰してきたが、メーカーの増産が進んだ」
――当面の見通しは。
「需要家側には、目先の生産に必要な分のほか、コロナをきっかけにBCP(事業継続計画)の観点から多めの部品在庫を確保しておく動きもある。データセンターやスマートフォン向けも堅調で、半導体の需要は根強いだろう」
「半導体の需給を示す『BBレシオ』をみると、直近は(需要が供給を上回る状態を示す)1を超える半導体メーカーが多い。市場でいつ需給の均衡がとれるのかは見極めづらいが、少なくとも年内はバランスするのは難しいとみている」
(随時掲載)
来年以降の相場、評価が分かれる
半導体不足は続くが、相場の過熱感はピークを過ぎたとの見方も出ている。例えばDRAMの大口取引価格について、市場では「10~12月は横ばいで推移するのではないか」(半導体商社)との声が強い。
その先をどう読むかは評価が分かれる。「22年初めにも下落する可能性がある」(英調査会社オムディアの南川明氏)という声の一方、相場維持の予想もある。半導体相場は動き出せば速いだけに需要家は注意が必要だ。
(松本桃香)
210820日経
世界の半導体メーカーが供給不足の解消へ増産準備を急ピッチで進めている。自動車業界などで深刻な不足に陥っており、19日にはトヨタ自動車が半導体を含む部品不足を理由に大幅な生産調整を発表した。半導体大手は需要に応じるため原材料などの積み増しに動いており、大手9社が抱える直近四半期の棚卸し資産は過去最高に達した。ただ顧客が必要量以上の発注を出す動きもあり、実需が読みづらくなっている。(1面参照)
自動車や家電のデジタル化、5G通信の普及で半導体の搭載量は急増した。さらに自動車向けの半導体を手掛ける大手メーカーでは、東南アジアの新型コロナウイルスの感染拡大で製造が相次ぎ一時停止。各社は増産対応をとるが、なお需要を充当できていない。
自動車向け不足
「高性能コンピューターや自動車向けの需要が予想を上回った」。台湾積体電路製造(TSMC)の魏哲家・最高経営責任者(CEO)は、棚卸し資産が増加した理由を説明する。2021年1~6月には製造ラインの配分を見直し、車載用半導体の生産量を前年同期から30%増やした。
足元では増産のための製造装置に必要な半導体まで不足している。受託生産会社(ファウンドリー)に生産委託する米エヌビディアのジェンスン・ファンCEOは18日、決算発表の電話会見で「来年にかけても供給が制限される」と述べた。
増産体制は財務指標にも表れる。ファブレス(工場なし)を除くメーカーのうち主要なロジック、メモリー、車載半導体を手がけるTSMCや米インテルなど9社の棚卸し資産(完成品・仕掛かり品・原材料)を合計すると、6月末(一部5月末含む)は647億ドル(約7兆円)と歴史的な水準に高まっていた。デジタル機器の中核部品となるロジックと車載の増加が目立つ。
生産に備えるための原材料を積み増していることが要因だ。棚卸し資産に占める原材料の比率を継続比較が可能な7社でみると3月末で24%超と19年3月末以降、右肩上がりで上昇している。
つくり込みを急ぐ一方で、完成した製品は瞬く間に売れていく。売上高が在庫の何倍かを示す棚卸し資産回転率は4~6月期、7.8回と1年半ぶりの高水準だ。
一方、棚卸し資産の増加は顧客の実需以上の発注を反映している可能性もある。
「半導体の供給元を増やすなど在庫の持ち方を変えていく可能性がある」。ホンダの倉石誠司副社長は半導体不足への対応を語る。自動車業界では部品在庫を必要最小限に抑える「ジャストインタイム」から調達難に備える「ジャストインケース」に移りつつある。
富士通ゼネラルの半導体を含む原材料は6月末時点で3カ月前に比べ2割増えた。庭山弘副社長は「半導体不足の長期化に備え、部品は棚卸し資産が増えても確保している」と話す。
半導体各社は市中在庫のだぶつきを警戒する。独インフィニオンテクノロジーズのヘルムート・ガッセル最高マーケティング責任者は「受注残高は売上高の約2年分に相当する。二重発注があることも想定しているが、定量化は不可能だ」と話す。
メモリーでは変調の兆しも出ている。米マイクロン・テクノロジーや韓国SKハイニックスなど大手3社合計の棚卸し資産は減少している。
パソコンなどに多く使うDRAMの7月の大口取引価格は、指標となるDDR4型の4ギガ(ギガは10億)ビット品が1個3.2ドル前後と、2カ月連続で横ばいだ。高騰が続いていた市況に頭打ち感が出ている。
足元で業績好調
半導体を使う最終製品について4~6月の世界出荷・販売台数を見ると、スマホで落ち込みが目立ち始めた。
調査会社オムディアの南川明氏は「メモリーは22年前半に供給が需要を上回り価格が下がるだろう」と指摘する。株式市場は市況のピークアウトをにらみはじめており、8月中旬には韓国サムスン電子やマイクロンなどの株価が急落した。
足元では半導体大手の業績は好調だ。エヌビディアやTSMCなど世界の時価総額上位10社の4~6月期(一部5~7月期など、市場予想含む)の純利益は合計303億ドルで、前年同期比6割増えた。増益は6四半期連続で18年以来、3年ぶりの高水準だ。
大手はロジックを中心に積極的な設備投資計画を打ち出す。TSMCは21年から3年間で1000億ドルの投資を見込む。インテルは200億ドルを投じたアリゾナ州での半導体工場新設などを発表した。
ただ、半導体の市況は大きな変動を繰り返してきた。過去にも好況期の増産投資が完成した際に市況が悪化し、生産能力の余剰としてはね返ってきた。足元の能力増強も体制が整うのは2~3年後。市況によっては重荷となる可能性もある。
製品により需要に濃淡が出てきたなか、大きな反動がいつどのような形で表れるのか、業界は警戒感を強めている。
210803日経
【シリコンバレー=奥平和行】米グーグルが独自半導体の利用を広げる。新たにスマートフォン向けを開発し、年内に発売する旗艦モデル2機種に搭載する。画像や音声を処理する人工知能(AI)の能力を高める。スマホのOS(基本ソフト)市場を米アップルと二分する同社が半導体開発でもアップルの後を追うことで、スマホでの両社の技術優位が強まる。
英アーム・ホールディングスの設計技術を活用して開発した。CPU(中央演算処理装置)や画像処理半導体などの機能を組み合わせ、生産はアジアの受託生産会社(ファウンドリー)に委託するとみられる。
グーグルは2016年に独自ブランドのスマホ「ピクセル」を発売し、AIを活用した画像処理機能などを売り物にしてきた。従来は米クアルコムの半導体を使ってきたが、リック・オステロー上級副社長は日本経済新聞などの取材で「AIの活用が増えるなか、市販の半導体では不十分になりつつある」と独自開発の理由を説明した。
新半導体はAIやAIの中核技術のひとつである機械学習に最適化する。消費電力を抑えながら情報の高速処理が可能になるという。具体的には画像や音声の処理に活用し、高機能スマホで先行するアップルや韓国サムスン電子を追う。
画像では手ぶれの補正機能を強化し、室内など暗い場所で写真を撮影しても鮮明な画像を得られるようにする。AIを活用し、スマホに内蔵した複数のカメラで撮影した露出の異なる画像を合成する仕組みだ。動画の画質も高める。
すでに実用化している音声の文字起こし機能を強化し、翻訳もできるようにする。インターネットにつながなくてもスマホだけで処理を可能にするという。データセンターに情報を送らないためプライバシー保護の流れにも合うとみる。
AIの活用やセキュリティー強化を目的として、大手を中心に独自開発の半導体を搭載する流れが強まっている。設計でアームの支援を受けたり、生産でファウンドリーに委託したりできるようになったことが追い風だ。アップルは10年からスマホに独自開発の半導体を搭載している。
グーグルは独自開発したサーバー向けの半導体「テンソル・プロセシング・ユニット(TPU)」の利用を15年に始め、スマホ向けはこれに続く動きとなる。ただ同社は基本ソフト(OS)「アンドロイド」を他社に供給しており、自社がスマホを強化すると提供先と摩擦を生む可能性がある。従来は限定的に事業を展開し、世界シェアは1%以下にとどまっていた。
210729日経
世界的な半導体不足の解消が2022年以降に遠のく公算が大きくなっている。自動車や家電など広範な産業に影響が及び、米アップルも27日、スマートフォン「iPhone」の生産に支障が出る見通しを明らかにした。ただ足元の半導体の発注量が実需以上に膨らんでいる可能性もある。
21年初め、半導体工場が多い米テキサス州を寒波が襲い、ルネサスエレクトロニクスの茨城県の工場で火災が起きるなど供給ショックが相次いだ。これらはほぼ復旧したにもかかわらず、年内とされていた正常化の時期が後退している。
世界半導体市場統計によると、20年の世界市場は4403億ドル(約48兆円)と10年前の1.5倍近くになった。車や家電のデジタル化、5G通信の普及などで搭載する半導体が増加。新型コロナウイルス禍の「巣ごもり」でゲーム機など向け需要も増える。21、22年も市場は年1~2割増のペースで膨らみ、過去最高を更新する見通しだ。
過去数年、半導体各社が先端技術の開発を優先。世界の生産能力は17~19年に足踏みした。20年から拡大に転じたが需要増に追い付かない。
車などに使う旧世代の半導体が特に不足している。半導体各社は足元で車向けの供給割り当てを増やし始めた。そのあおりで「産業機器では半導体の不足感がむしろ強まった」(オムディアの南川明氏)。エアコンやカーナビなどの生産も一部で滞っている。楽天モバイルでは基地局整備に遅れが生じている。
アップルも頭脳にあたる最先端半導体の周辺に置く従来型の半導体の確保に苦戦。パソコンなどを作りきれず、4~6月期の逸失売上高が30億ドル弱(約3千億円)に達した。スマホにも影響が出る7~9月期の逸失売上高はさらに拡大する。
半導体各社は増産を急ぐ。業界団体のSEMIは14日、半導体製造装置の22年の世界販売額が1013億ドル以上と3年連続で最高を更新しそうだと発表した。20年末予想比33%の上方修正だ。
それでも、米インテルのパット・ゲルシンガー最高経営責任者(CEO)は「正常化まで1~2年かかる」とみる。現在は増産のための製造装置に使う半導体まで不足しかねない異常事態だ。
多重発注などの広がりが問題を複雑にする。ある半導体メーカー幹部は「注文の一定割合は断らざるをえない。顧客はそれを見越して多めに発注してくる」と話す。
実需の見極めは難しいうえ、経済活動の再開が進むと巣ごもり特需の反動が起きる可能性もある。半導体業界は過去に積極投資と市況悪化を繰り返し経験してきた。今回も同じ道をたどらないとはいえない。
210719日経
半導体産業を強化する議論が盛り上がっている。自民党では甘利明氏を会長とする議員連盟が発足した。今年の「骨太の方針」にも、中長期的な資金拠出のあり方を検討することが盛り込まれた。
半導体は急に重要性を増したわけではない。1990年代半ば以降、インターネットが世界を大きく変える中で産業競争力に半導体が大きな役割を果たすようになったのは明白だった。しかしわが国は一貫して「産業のコメ」を失い続け、最近まで深刻な問題として取り上げられることもなかった。
半導体が政策論議の中心に返り咲いたのは第一に、戦略技術産品の生産を一部の国・地域に任せておくことが国際政治的に不可能となったためだ。第二に、あらゆるモノがネットにつながるなかで、データを処理して記憶する半導体の機能が全ての産業で不可欠となったという事情がある。
そして第三の理由は、人工知能(AI)革命で勝つにはソフトだけでなく、半導体の段階から設計に工夫を凝らさなくてはならないからである。だからこそ米国の巨大IT(情報技術)企業はこぞって独自の半導体開発に着手した。
わが国は開発力を軸に半導体戦略を組み立てる必要がある。思考を担当するロジックICなら、スパコン「富岳」で得た世界一の開発力を次世代CPU(中央演算処理装置)に結実させる。高性能サーバーなどに組み込み、AIにデータを収集・分析させ、多様なサービス展開を可能とする「成長のコメ」とすべきだ。
CPUの量産や拡販は、米国企業との連携が有効だろう。またメモリーICの場合、わが国には世界最先端の開発力がある。国内勢同士の協力で世界を主導する新型モジュールを開発し、量産・輸出につなげるべきだ。
先端半導体のユーザー候補との連携も開発段階から重要になる。複数省庁で技術開発のプロジェクトが別々に進むが、各省庁が一体となって成果を活用しあうべきだ。同盟国・友好国との間で適切な貿易管理ルールを機動的に定め、米国などの大口ユーザー候補に積極的にアプローチすることも必要だろう。開発力を軸とした戦略は、素材・製造機器メーカーの競争力強化に直結するはずである。
210716日経
台北=中村裕】半導体大手の台湾積体電路製造(TSMC)の魏哲家・最高経営責任者(CEO)は15日、オンラインで開いた決算発表会見で、日本で初となる新工場建設の可能性について「現在検討している段階だ」と述べた。今後、顧客の需要に基づいて最終判断するという。世界的に需給が逼迫する半導体不足は「年末まで続き、2022年にも影響が及ぶ」との見方を示した。(関連記事国際・アジア面に)
同日発表した21年4~6月期決算は、純利益が前年同期比11%増の1343億台湾ドル(約5300億円)だった。売上高は20%増の3721億台湾ドルとなり、四半期ベースで過去最高となった。
スマートフォン向けなどの旺盛な需要が下支えした。売上高の内訳はスマホ向け42%、パソコンやサーバー向け39%と合計で8割強に達した。純利益は為替差損などが発生し、四半期ベースで過去最高に届かなかった。売上高純利益率は36%と高水準を維持した。
210713日経
半導体不足の影響が住宅向けの太陽光発電システムにも及び始めた。パナソニックは近く一部の基幹装置の生産を停止する。住宅に発電システムを取り付ける施工会社などは代替品の調達を急いでおり、半導体不足が長期化すれば、太陽光発電の普及の足かせにもなりかねない。
生産を停止するのはパワーコンディショナー(電力変換装置)と呼ばれる装置で、太陽光パネルでつくった直流の電気を交流に変換するために使う。
パナソニックは6月下旬、パワコンの一部製品で供給に遅れが出るとの文書を取引先に出した。半導体大手のルネサスエレクトロニクスの工場火災の影響でパワコン向け半導体の調達が滞り、7月中にも生産が止まる製品が出るもようだ。2022年1月までに正常化するとしているが、最大で生産が2~3割程度落ちこむとみられる。
コンサルティング会社の資源総合システム(東京・中央)によると、国内では20年に約680万キロワット分の変換能力に相当するパワコンが販売された。大規模な太陽光発電施設に強い中国の華為技術(ファーウェイ)が2割のシェアを持つ最大手だ。
住宅用は変換能力ベースで全体の3割前後とみられるが、住宅に取り付けるため台数が多い。パナソニックが約3割のシェアを持つ最大手で、オムロンや田淵電機などが続く。
田淵電機も一部でルネサス製の半導体を使用しているとみられ、同社は「置き換えは難しい」と話す。在庫品を使って生産を続けているが、他にも在庫量の少ない電子部品があり、取引先には供給に遅れが出る可能性も示しているという。オムロンは具体的な影響を明らかにしていないが「世界的な半導体不足の影響は受けている」(同社)としている。
ルネサスは6月24日、半導体の生産が火災前の水準に回復した。ただ、出荷量は火災前に戻っておらず、供給も自動車向けなどが優先されているとみられる。
太陽光発電メーカーや住宅会社は代替品の確保に動いている。代替品を使う場合は耐久性の試験や認証に時間がかかる。「仕入れコストも各社の取り合いで上がっている」(施工会社幹部)。台湾のパワコン大手、デルタ電子は「代替調達と思われる引き合いが日本メーカーから来ている」と明かす。
半導体不足の影響は様々な最終製品に及んでいる。自動車に加えて、カーナビやエアコン、テレビなど幅広い消費者向け製品の生産が滞る。影響は消費者が購入する店頭に波及しており、新型コロナウイルス下での消費に影を落としている
210706日経
半導体再興戦略 経済産業省
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO73595660V00C21A7TB0000
半導体」
180912日経
半導体大手のルネサスエレクトロニクスは11日、米同業インテグレーテッド・デバイス・テクノロジー(IDT)を約67億ドル(約7330億円)で買収すると発表した。同社の強みはカメラなどを通して集めた情報をデジタルの世界に橋渡しする半導体だ。「つながる車」などから収集する情報が付加価値を生む時代。データ経済を支える半導体は市場の評価も高く争奪戦は
「中長期で高い対価を受け取れる領域である車載用半導体で伸びる」。ルネサスの呉文精社長は11日の記者会見でこう強調した。カメラなどを使って車外の情報を取り込むつながる車や、あらゆるモノがネットにつながる「IoT」機器の頭脳や神経を押さえ、データ経済を支える黒子として勝ち残る戦略を示した。
同社は車の基本機能を制御するマイコンと呼ばれる半導体で世界首位。だが、これだけではつながる車などの需要増に対応できない。そこで車載カメラなどで集めた情報をプロセッサーが処理、分析しやすいように変換する技術を持つIDTの買収に打って出た。
つながる車などの普及で集まる膨大な情報は企業にとって新たな「宝」となる。情報伝達の神経を担う半導体メーカーの役割も大きく変わる。
半導体業界では得意分野によって個別企業の市場での評価にばらつきがでている。高度な技術が必要な演算・処理向けや、需要増が期待される「つながる車」などの車載向けに強い企業は市場での評価が総じて高い。
半導体企業で最大の時価総額を誇るのが韓国のサムスン電子で約31兆円。日本最大のトヨタ自動車(約21兆円)を大きく上回る。ただサムスンが手掛ける記憶分野は技術革新のサイクルが短く、大規模な設備投資も必要で収益のぶれが大きい。
このため「市場からみた将来の成長期待」を示すPER(株価収益率=株価が1株利益の何倍になっているか)は1ケタ台にとどまる。米マイクロン・テクノロジーなども含め記憶分野のPERは軒並み1ケタ台だ。
一方、演算・処理や製造、設計開発に特化している企業は軒並みPERが2ケタ台と高く、時価総額も大きめだ。例えば、世界中の半導体メーカーから製造を受託する台湾積体電路製造(TSMC)の時価総額は約24兆円で、PERは19倍だ。
ルネサスを含め車載向けの分野が得意な企業は時価総額が小さめで、PERは2ケタ台と高い。ルネサスが買収するIDTのPERも8月末までの1カ月間で19~20倍で推移していた。車載半導体を必要とする運転の自動化やネット化などはまだ本格普及していないため現時点で販売量などが限られる一方、将来の成長期待は高いためだ。
車載向けは顧客ごと細かなカスタマイズが必要で、コストがかさみやすい問題がある。ルネサスは売上高総利益率が60%を超えるIDTの買収をテコに、高付加価値化と採算改善を同時に進める考えだ。
ルネサスの戦略は市場で前向きに受け止められた。11日午前に買収を発表すると、東京株式市場ではルネサス株に買いが殺到。一時前日比8%高の778円まで上昇する場面があった。
ただルネサスが狙う分野には半導体業界の強豪も攻勢を強める可能性が高い。また安全保障を理由に企業買収への介入傾向を強める対米外国投資委員会(CFIUS)や、中国の独占禁止法当局の反応次第で買収計画が停滞する懸念も残る。
ルネサスが目指すのは19年上半期中の手続き完了だ。日本の半導体メーカーとして過去最大の買収という大勝負は始まったばかりだ。
181109日経
スマートフォン(スマホ)世界最大手の韓国サムスン電子は7日、画面を2つに折り畳める有機ELパネルを米国で発表した。広げると7.3インチのタブレット、折り畳むと4.6インチのスマホとして使える端末を2019年に発売する見通しだ。世界で普及が一巡し成熟化したスマホ市場の起爆剤にしたい考えだ。
折り畳み可能なスマホは「フォルダブル」と呼ばれ、次世代スマホの本命の一つとされる。中国の華為技術(ファーウェイ)は19年半ばの発売を計画する。同国のベンチャー、柔宇科技もこのほど予約販売を始めた。フォルダブルの市場規模を英IHSマークイットは19年に約140万台、20年に約520万台まで拡大するとみている。
サムスン米国法人のジャスティン・デニソン氏は7日の開発者向け会議で「数十万回の折り畳みに耐えられる」有機ELパネルを搭載した試作機を初めて公開した。表裏両面に表示部があり、折り畳んだときは外側を使う。内側の折り目の部分に縁がないのが特徴だ。
広げたときは最大で3つのアプリを同時に使えるという。画面の一部はディスプレー、残る部分はタッチパネル方式のキーボードとして使えばビジネスでの利用場面が増えそうだ。会場では「いくらになりそうか」「開いたときも小さい方の画面はついたままなのか」と次々と質問が飛んだ。電池の容量や耐久性を問う声も出た。
スマホ市場は17年に世界出荷台数が初めて前年を下回った。18年も減少が続くとの見方がある。メモリーやカメラなどの高機能化により端末価格は高くなっており、買い替えサイクルが長期化しているためだ。
端末は数カ月以内に量産を始める計画だという。フォルダブルがスマホとタブレットの良さを組み合わせた新しいカテゴリーになれば、市場活性化につながる可能性がある。ただ1台18万~20万円になるとの見方が多い価格が普及のネックにもなりそうだ。
181129日経
急ピッチの成長が続いた世界の半導体市場が転換点を迎える。2019年に約4%の拡大が見込まれたメモリー市場は、直近の調査で0.3%の減少予測に転じた。スマートフォン(スマホ)市場の縮小や米中貿易戦争が影を落としており、需給バランスの悪化が価格下落も招いている。17年に初めて40兆円を超えた半導体市場の変調は、一時的な調整局面なのか、さらに落ち込む入り口なのか。世界で拡大するデータ経済圏が市場の行方を左右する。
主要半導体メーカーが見通しをまとめる世界半導体市場統計(WSTS)は27日、19年の半導体メモリーの成長率予想を6月時点の3.7%増から0.3%減に引き下げた。半導体全体の予想も4.4%増から2.6%増に引き下げた。全体の3割を占めるメモリーの不振が足を引っ張った。
米中摩擦も影
最大の要因は半導体メモリーの4割を使うスマホ市場の変調と、米中を軸に収まる気配を見せない貿易摩擦への懸念だ。
世界のスマホ出荷台数は18年1~9月に前年同期比で4%減った。07年に米アップルが「iPhone」を発売して以降、急拡大してきたが、目を見張るような技術革新が薄れ市場も飽和するなか、今後の大きな伸びは期待できない。
貿易戦争の影響で中国が米国に輸出する半導体には追加関税が課された。南米も含む米州市場の19年の成長率は4.6%から1%台に下方修正された。さらに北米を中心としたデータセンター向け投資の成長鈍化も影響したとみられる。
16年まで3千億ドル(約34兆円)前後で推移した半導体市場は17年に2割伸び、4千億ドルを突破した。18年も15%程度の成長を維持する見通しだ。
半導体産業には、パソコンの世代交代や半導体の機能向上に合わせ好不況が繰り返される2~3年周期の「シリコンサイクル」があった。だがグーグルなど米IT大手がけん引するデータ経済圏が拡大。あらゆるモノがネットにつながる「IoT」の進展もあり、近年は高成長が長期間持続する新段階に入ったとの見方も広がっていた。
その「スーパーサイクル」論が試練を迎えるなか、半導体大手は戦略の転換を迫られる。
英調査会社IHSマークイットによると、世界の半導体工場全体の稼働率は足元で90%を超える高水準を維持している。今後、需要の減少で稼働率が下がれば、収益の悪化につながる。
3割値下がり
半導体世界首位、韓国サムスン電子の李明振(イ・ミョンジン)副社長は10月末、「10~12月期の業績は7~9月期に比べて悪化する」と約3年ぶりに収益が悪化するとの見通しを示した。18年の半導体向け設備投資を前年に比べ9%減らす。
東芝メモリを買収した日米韓連合を主導する米ベインキャピタルの杉本勇次日本代表は「メモリー需要は中長期で伸びる」としつつも、「短期的な調整局面がいつまで続くか東芝メモリと議論を進めている」と話す。
需給バランスの悪化を受け、データの長期記憶に使うフラッシュメモリーは年初に比べ3割以上値下がりした。さらに中国が半導体の国産化に動いており、19年以降、メモリーの本格量産が始まる。鉄鋼や造船産業と同様に、中国の過剰供給が市況の波乱要因となる事態も想定される。
今月末にはアルゼンチンで20カ国・地域(G20)首脳会議が始まる。貿易摩擦の激化を懸念し「投資判断を先送りしている顧客企業が多い」(半導体大手首脳)といい、G20の議論も今後の半導体市場を占うことになる。
(龍元秀明、ソウル=山田健一、シリコンバレー=佐藤浩実)
181212日経
半導体製造装置の世界市場が2019年、踊り場を迎える。国際半導体製造装置材料協会(SEMI)は11日、製造装置の販売額が19年、4年ぶりに4%減に転じるとの市場予測を発表した。これまで好調だった装置市場の減速で、半導体の長期的な成長が続くとする「スーパーサイクル」論への試練が強まる。半導体関連メーカーは戦略の見直しを迫られそうだ。
世界の半導体製造装置販売額は18年に前年比9.7%増の621億ドル(約7兆円)と過去最高を達成する見通しだ。19年は一転して減少し、前年割れの596億ドルになる予測だ。
DRAMやNAND型フラッシュメモリーの増産を続けてきた韓国や、半導体の国産化を進めてきた中国で投資が減速するためだ。最大市場である韓国の装置販売額は18年比で22.9%減になる見込みという。
米中貿易摩擦も市場予測に悪影響を及ぼした。SEMIは「米中貿易摩擦や輸出制限などの政策が半導体産業に大きなリスクになった」と懸念を示す。影響が長期化すれば半導体市場全体の減速につながりかねない。
半導体市場は17年以降、スマートフォンやデータセンターで使う半導体メモリーが成長をけん引し、異例の高成長を遂げた。半導体メーカーは投資を増やし、英調査会社IHSマークイットによると世界の半導体市場は同年に22%成長した。
18年に入ると半導体の供給量が増え、需給バランスの緩みが顕著になった。フラッシュメモリーの価格は年初から3割以上値下がりした。半導体メーカー各社は増産計画の見直しに動き出した。
東京エレクトロンの河合利樹社長は「メモリーメーカーの生産性改善や需給バランスのため、投資が遅れている」と分析する。同社は10月末、19年3月期の通期業績予想を下方修正した。SEMIのクラーク・ツェン市場調査統計部門ディレクターも「韓国や中国で投資抑制が働き、メーカーが20年以降に投資を先送りする」と指摘する。
市場予想では20年に再び装置需要が高まり、19年比20.7%増の719億ドルに増加する見込み。19年後半にメモリー価格の下落が落ち着き、投資抑制の反動もあり、販売が増える見通しだ。
190104日経
米アップルは2日、2018年10~12月期の売上高を下方修正した。世界最大のスマートフォン(スマホ)市場の中国での販売減が響いた。高級機種が中心のアップルの中国市場での苦戦は、色濃くなってきた中国の景気減速を市場関係者に改めて意識させることになった。今後は部品や設備の供給を担う日本やアジアの企業への影響にも、関心が集まりそうだ。(1面参照)
3日の米株式市場でアップル株は取引開始後に一時、前日終値比で10%下げた。2日の発表内容は18年10~12月期の売上高が当初見通しを6~10%下回る840億ドル(約9兆円)になったとするもの。慎重な見通しを立てる同社の下方修正は異例だ。売り上げの約6割を占めるスマホ「iPhone」が最新機種の「XR」を中心に振るわなかった。
ティム・クック最高経営責任者(CEO)は投資家向けの声明で「新興国での一定の厳しさは予測していたが、中華圏(中国と香港、台湾)は経済減速の規模感を想定できなかった」と釈明した。
中国のスマホ市場の減速自体は、17年から続いている。米調査会社のIDCによると中国のスマホ出荷台数は通年で17年に初めて減少し、18年7~9月(前年同期比10.2%減)まで6四半期連続で前年割れ。もともと飽和感があった。
市場の縮小に加え、アップルが景気の影響をより強く受けた可能性もある。XR(128ギガバイト)の中国での価格は6999元(約10万9千円)。華為技術(ファーウェイ)など中国企業の最新機種は3000~4000元台から購入できる。消費者の財布のひもが固くなり「競争力が落ちている」(台湾の電子機器大手幹部)との指摘が聞かれ、実際にシェアも低下傾向だった。
中国での苦戦に加え先進国での買い替えが滞るなどアップル固有の理由も見え隠れするが、クックCEOは投資家向けのメッセージで中国の景気要因を強調。景気減速の要因に米中の緊張を挙げ「最初は金融市場への不透明感だったが、消費者にも影響が出てきた」と説明した。中国景気に警戒感を強めていた市場はこれに反応した。
スマホ市場とアップルの減速は、部品や設備を供給してきた日本やアジアの企業にとって打撃だ。台湾では3日、関係する企業の株価が軒並み下げた。iPhoneのケースを手掛ける可成科技(キャッチャー・テクノロジー)は約6%安となり、組み立ての台湾・鴻海(ホンハイ)精密工業も一時、約2%安になった。
既に日本企業への影響も出ている。経営再建中のジャパンディスプレイは売上高の過半をアップル向けが占め、XRに液晶パネルを供給。同社は18年11月、「モバイルの振れ幅を慎重に見極める」(月崎義幸社長)と、19年3月期の売上高見通しを引き下げた。
スマホの売れ行きは、本体の加工に使う日本製の工作機械の需要も左右する。日本工作機械工業会(東京・港)によると、スマホなど電気・精密向けで中国からの18年11月の受注額は、前年同月比90.6%減だった。
18年に一時1兆ドルを超えたアップル株の時価総額は年末時点で約7500億ドルとピークから2割以上減った。時価総額が世界最大規模のアップル株は米欧の公的年金からヘッジファンドまで多くの投資家が保有、株価の下落は運用成績の悪化に直結する。世界景気の減速懸念も強まるなか、投資マネーのさらなるリスクオフを招く可能性もある。
190110日経
アップルはスマートフォン(スマホ)「iPhone」の新型3機種の生産台数を1~3月に当初計画から10%程度減らす。その余波が電子部品メーカーなど取引先企業に広がってきた。日本企業を含む関連銘柄の株価は昨年10月から軒並み下落し、工作機械受注にも影を落とす。世界最大の中国のスマホ市場(総合2面きょうのことば)での販売減が、iPhoneの売上高だけで年間約18兆円に上る「アップル経済圏」を揺るがしている。(関連記事企業2面に)
アップルは2018年秋に発売した「XR」など3機種の生産調整を部品メーカーなどに通知した。端末販売の2割を占める中国で18年10~12月期の売上高が6四半期ぶりに減少に転じ、全体でも9四半期ぶりの減収となる見通しだ。
最高約19万円の新型iPhoneの高級路線が消費者に敬遠されている。日本や米国でも割安の旧機種と比べて新機種の販売は低調で、買い替え期間の長期化が進む。
アップル株は18年10月の最高値から35%下げ、時価総額は8日時点で7154億ドルと、ピーク時(1兆1000億ドル強)から4000億ドル近く目減りした。
投資家の売りは電子部品など関連銘柄にも広がる。米マイクロン・テクノロジーなどアップルとの取引による業績への影響が大きいとされる世界の10社の時価総額は、同期間に合計で6900億ドルから5400億ドルと約2割減った。
「アップルの不振は、米国や中国経済の先行きへの警告とみるべきだ」(米バンクオブアメリカ・メリルリンチのエコノミスト、イーサン・ハリス氏)との指摘もある。
影響は日本企業に波及する。日本工作機械工業会(東京・港)の飯村幸生会長(東芝機械会長)は9日、19年の年間受注額が前年比約12%減の1兆6000億円になるとの見通しを発表した。輸出の2~3割を占める中国景気の失速が要因で、主に日本製の工作機械が使われるiPhoneの不振も痛手となる。
村田製作所の村田恒夫会長兼社長は「スマホ向け需要は昨年秋ごろから鈍化した」と話す。液晶パネルを供給するジャパンディスプレイ(JDI)は「1~3月の工場稼働はかなり厳しくなる」(国内アナリスト)とみられ、経営再建の行方は一段と不透明になる。
組み立て拠点である中国では雇用調整が本格化している。鴻海(ホンハイ)精密工業は昨年秋以降、10万人規模の人員削減を実施。和碩聯合科技(ペガトロン)の上海工場は12月末から新規雇用をやめ、1000人以上が退職したという。
「一時的なものだと信じている」。アップルのティム・クック最高経営責任者(CEO)は8日、米経済番組で販売不振について発言した。
米調査会社の中国でのブランド力調査では17年に5位だったアップルが18年は11位に後退した。アップルは高速通信「5G」に対応する20年には端末を大きく刷新し、動画配信など新サービスで巻き返しを図る戦略とみられる。
190124日経
中国でハイテク製品の生産が急減している。日本からの半導体製造装置の輸出は2018年12月に前年同月比34%減と大幅に落ち込んだ。韓国からの半導体輸出も減少が鮮明だ。ハイテク製品の「世界の工場」である中国での生産減は、世界の半導体市場(総合2面きょうのことば)やハイテク景気の冷え込みを示す。関連する企業の業績は悪化しており、グローバル経済の重荷となる恐れがある。(関連記事企業1面に)
中国のハイテク景気の変調は日本を含む各国の統計に表れている。日本から中国への半導体製造装置の輸出額は18年12月に692億円と直近ピークの8月(1274億円)の半分程度の水準となった。12月は韓国の半導体輸出(香港含む)も前年同月比で19%減り、台湾から中国への輸出総額(同)も9.9%減少した。ハイテクが主力の台湾は輸出の4割が中国向けだ。
スマートフォン(スマホ)製造などに使う工作機械も中国向けの落ち込みが大きい。日本工作機械工業会は23日、中国向け工作機械の受注額が18年12月に56.4%減少したと発表した。マイナスは10カ月連続。「底だとは思っていない」と飯村幸生会長(東芝機械会長)は述べた。
スマホは世界的な市場の飽和が指摘されているうえ、中国では景気減速で需要が低迷している面もある。実際、中国でのスマホの生産量は18年9月からマイナスが続き、12月には10%近く減少。台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業はスマホ製造の最大拠点である中国河南省鄭州の工場で従業員を5万人規模で減らした。
米IT(情報技術)大手などによるデータセンターの建設ラッシュが一巡した影響もある。データセンターに必要なメモリーは中国にも生産拠点が多い。米グーグル、アップル、アマゾン・ドット・コム、マイクロソフト、フェイスブックの5社による設備投資は18年4~6月期、7~9月期と連続で減少した。
中国を震源地とするハイテク景気の悪化は、世界の企業に打撃を与え始めている。村田製作所、TDK、京セラ、日本電産、アルプスアルパイン、日東電工の6社の電子部品の受注額(一部は受注額に近い売上高)を日本経済新聞が独自集計したところ、10~12月期は約1兆5300億円と前年同期比で3%減り、9四半期ぶりのマイナスとなったことが明らかになった。自動車向けは堅調だが、スマホ向けなどの落ち込みが大きく、16年10~12月期から続く成長トレンドが途切れた。
韓国サムスン電子は18年10~12月期決算が2年ぶりの営業減益になると発表。台湾積体電路製造(TSMC)も19年1~3月期は営業減益だとの見通しを示す。日本でも半導体製造装置の東京エレクトロンなどが業績予想を下方修正した。中国でもハイテク企業が打撃を受け、雇用情勢の悪化などを通じて個人消費が鈍り、さらにハイテク製品の需要が落ち込むといった悪循環が生じる可能性もある。
半導体需要はデータエコノミーの拡大などを支えに長期的には拡大が続くとみられる。ただ、米中摩擦などの不確実な要因も絡むため、「今回のダウンサイクルは通常より長引く可能性がある」(SMBC日興証券の花屋武アナリスト)との慎重な見方が出ている。
190131日経
シリコンバレー=白石武志、広州=川上尚志】米アップルのスマートフォン(スマホ)「iPhone」の成長が壁に突き当たった。29日に発表した2018年10~12月期決算は中国での販売不振が響き、減収減益となった。今後は端末上のサービス開発に軸足を移して再成長を目指す構えだが、iPhoneに並ぶ収益源に育つかどうかはまだ不透明だ。
中国経済の減速が米アップルの業績に響いている
10~12月期の売上高は5%減の843億1千万ドル(約9兆2千億円)、純利益は0.5%減の199億6500万ドルだった。アップルの減収は16年7~9月期以来、9四半期ぶり。減益は8四半期ぶりだ。稼ぎ頭のiPhoneの売上高が15%減となり、足を引っ張った。地域別では香港と台湾を含む中華圏が27%減と大きく落ちこんだ。
ティム・クック最高経営責任者(CEO)は電話会見で「とりわけ中国の経済環境は、我々の当初の予想よりも著しく厳しかった」と振り返った。
中国景気の減速で高価格帯のスマホへの買い替え需要が失速した格好だが、販売不振の理由はそれだけではない。ライバルの中国メーカーの台頭だ。かつて首位を競っていたアップルのシェアは5位に低迷し、華為技術(ファーウェイ)など中国勢が上位を独占する。
実際に中国勢は一部の機能でiPhoneを上回る評価を得ている。ファーウェイの最近の機種では3~4つのカメラを搭載し、解像度や望遠性能などを高めた。人工知能(AI)を使った画像処理にも強みを持つ。
アプリの豊富さも中国勢の強みの一つだ。中国では米グーグルの「グーグルプレイ」が使えないため、検索サイト大手の百度(バイドゥ)やスマホ大手の小米(シャオミ)が独自のアプリストアを開設。動画投稿など世界的なヒットアプリが登場する土壌になっている。
アップルはiPhoneの世界販売が頭打ちとなった3年前から単価引き上げで収益を最大化する戦略を進める。一方、ファーウェイなどの最新機種の価格はiPhoneの半分程度のものもある。インドなど他の新興国でも低価格スマホが人気だ。iPhoneに売上高の6割超を依存するビジネスモデルは限界を迎えつつある。
クック氏が次の収益源に期待するのがアプリ配信の「アップストア」やクラウド上にデータを保管する「iCloud」などのサービス部門だ。
18年10~12月期に同部門の売上高は19%増の109億ドルとなり、売上高全体の13%を占めた。今回の決算から初めて開示を始めた事業部門ごとの粗利益率でも、サービス部門は63%と、iPhoneなどの製品部門(34%)を大きく上回った。
今後は成長に向けた投資やサービス開発がカギを握る。アップルは潤沢な手元資金を抱えるが、これまで自社株買いなどに費やしてきた。米アマゾン・ドット・コムがクラウド事業に、米グーグルが自動運転やAIに大きく投資するなか、アップルは次の成長投資に出遅れていた。
アップルは米ロサンゼルス近郊にコンテンツ制作拠点を建設中とされ、年間10億ドルを投じて19年後半にも動画配信サービスに参入すると噂される。ただ、動画配信では米ネットフリックスが18年に少なくとも80億ドルをコンテンツ関連に費やすなど先行している。
またクック氏は「消費者は無責任に膨大な利用者情報を集める企業や、制御不能な情報漏洩を容認する必要はない」と述べ、個人情報を使ったデータビジネスに否定的だ。今後、アップルがどのような収益モデルを構築するかが焦点になる。
190702日経
政府は1日、韓国への輸出規制を厳しくするため、半導体材料(総合2面きょうのことば)の審査を厳密にし、安全保障上の友好国の指定も取り消すと発表した。韓国政府は対抗措置の検討を表明し、半導体大手SKハイニックスは工場の操業継続への懸念に言及した。半導体メモリー市場で5~7割のシェアを持つ韓国からの出荷が滞れば、世界に影響が広がる可能性がある。(関連記事総合1面に)
韓国への輸出規制は2段階で強化する。まず4日から、フッ化ポリイミド、レジスト(感光材)、エッチングガス(フッ化水素)の3品目で個別の審査や許可を必要とする。さらに8月をメドに、韓国を安全保障上の友好国である「ホワイト国」の指定からはずす。
米国やドイツ、フランスなど27カ国を指定しており、取り消しは韓国が初めて。軍事転用の恐れがある製品の輸出は許可が必要になる。
今回の規制についてデロイトトーマツコンサルティングの羽生田慶介執行役員は「日本が自主的に判断していい分野なので、世界貿易機関(WTO)ルールには抵触しないだろう」とする。一方、「WTO協定違反の疑いもあるグレーな措置」(早稲田大学の福永有夏教授)との指摘もある。
韓国の産業通商資源省は「WTOへの提訴など必要な措置をとる」と表明。成允模(ソン・ユンモ)産業通商資源相は「(今回の日本の措置を)韓国の技術力を高める契機にする」とした。
日本の輸出審査にかかる時間は約3カ月が標準で、これが韓国勢の生産に影響を及ぼす可能性がある。材料の在庫量は通常、1~2カ月分という。SK関係者は日本経済新聞の取材に対し、同社の在庫量は「3カ月は無い」とした。
「追加調達ができず3カ月が過ぎれば、工場の稼働は停止するのか」との質問に対しては、「そうだ」と答えた。
規制対象の3品目は日本企業の世界シェアが高く、フッ化水素は8~9割に達する。調達先を変更しようとしても代替品が見つからない可能性が高い。サムスン電子は「状況を精査している」と具体的な説明を避けた。
韓国企業は半導体で高いシェアを持ち、半導体売上高はサムスンが世界で首位、SKが3位だ。データを保存するメモリー半導体に強く、DRAMは韓国勢が世界シェアの7割、NAND型フラッシュメモリーは5割を握る。スマートフォンやテレビ、パソコンなど幅広い電子機器に搭載されている。
ある日本の電機大手は「韓国からメモリーなどの供給が滞ってアップルのiPhoneの生産が減れば、自社の部品供給にも影響する可能性がある」としている。
210125日経
台北=中村裕】自動車を中心に世界で半導体が足りないなか、独米日など各国政府が台湾当局に半導体増産などの協力を要請していることが、24日わかった。米国による対中制裁や自動車市場の急回復による半導体需給(総合・経済面きょうのことば)の逼迫ぶりを裏づけた。半導体不足による自動車の減産が長引けば、世界経済の波乱要因にもなりかねない。
台湾当局の関係者は24日、「自動車用の半導体が世界で不足しており、昨年末から各国の外交ルートを通じて(台湾からの半導体供給を増やすように)要請を受けている」と語った。自動車の生産が盛んなドイツ、米国、日本などから協力要請を受けているという。製造業の部材不足を理由に、各国が特定の国や地域に対し、増産などの協力を求めるのは異例だ。
台湾で製造業を所管する経済部(経済省)はすでに半導体の生産に強い企業に増産などを求めたという。半導体受託生産で世界最大手の台湾積体電路製造(TSMC)や、同世界4位の聯華電子(UMC)などに、車用半導体の増産対応を急ぐよう促した。
TSMCの広報責任者は24日、日本経済新聞に「(世界で今最も不足する)車用の半導体の需要に応えることが、当社の最優先事項である。我々は引き続き、自動車関連企業と緊密に協力し、需要に応えられるように支援していく」とコメントした。
半導体不足は昨秋、あらわになった。新型コロナウイルスの影響でテレワークが世界で広がり、パソコンに使う電源管理用の半導体がまず足りなくなった。さらに世界最大の中国の自動車市場の回復を受け、車でも半導体が不足し始めた。
米国が中国最大の半導体受託生産企業、中芯国際集成電路製造(SMIC)に制裁を科したことが問題に拍車をかけた。SMICが生産する半導体は技術水準は高くないものの、車や家電に数多く搭載する。こうした半導体を生産する企業は世界でも少ないため、最先端から汎用品まで幅広く半導体を製造する台湾勢に世界中から多くの生産依頼が舞いこむ。
半導体の生産量をすぐに増やすのは難しい。車用の半導体は利幅が薄いうえ、需給が緩むとすぐに値段が下がる恐れもあり、増産のために急いで投資をすれば無駄になりかねない。半導体各社が車メーカーに対し、半導体の1~2割の値上げを要請する動きもあるが、半導体不足はすぐに解消されない。
影響は世界の自動車大手に広がる。独フォルクスワーゲン(VW)は中国や北米、欧州での生産調整を発表。米フォード・モーターも北米の一部工場の停止を表明した。三菱UFJモルガン・スタンレー証券は減産規模は1~6月を中心に世界で150万台前後とみる。日本の経済産業省幹部は「自動車など逼迫している業界からの増産要請は強い。半導体不足は少なくとも数カ月は続きそうだ」と語った。
国内でもホンダは1月、小型車「フィット」など約4000台を減産する見通し。日産自動車は国内で主力の小型車「ノート」の減産に入った。トヨタ自動車も米国などで生産調整を余儀なくされ、スバルは群馬製作所(群馬県太田市)の稼働が止まる日も出てきた。
車向け半導体では20年10月に宮崎県にある旭化成のグループ会社の工場で火災が発生し、一部製品の供給が滞っている。火災の影響が長引けば車生産をさらに下押ししかねない。
210511NewsPicks
10年で市場が倍!100兆円市場のカギを握る日本企業の秘密
3.5.18日経
政府が6月にも決定する成長戦略の骨子案が分かった。先端的な半導体や蓄電池の国内生産拡大へ集中投資を促す方針を明記した。「経済安全保障の確保」を掲げ、製造技術の開発支援に充てる予算を積み増し、企業の工場新設を後押しする。米国の有力メーカーを誘致し、日米連合でサプライチェーン(供給網)の強化をめざす。
与党との調整を経て閣議決定する。世界的な半導体不足を受け、米国や中国は巨額の資金支援で生産拠点の誘致合戦を繰り広げる。日本にも総額2000億円の基金などがある。支援策を大幅に拡充し、先端半導体や蓄電池の国内生産拡大に充てられるようにする。
電気自動車に使う次世代パワー半導体の世界シェアを2030年に4割にする目標を掲げる。25年までを設備投資の集中期間とし、先端半導体の製造拠点の立地計画をつくる。海外勢を誘致し、日本企業との共同研究や開発・生産を想定する。
蓄電池は30年までに車載用の高性能化や大容量の実現をめざす。新型コロナウイルス禍を念頭に国内でのワクチン生産も推進する。
210521NewsPicks
4月の輸出、38%増 自動車、半導体装置伸び | 共同通信
210526日経
【台北=中村裕】半導体や米アップルのスマートフォン「iPhone」を世界に供給する台湾企業を「8重苦」が襲っている。56年ぶりの干ばつで水不足が深刻化し、大量に水を使う半導体工場の操業を脅かす。電力不足で大規模停電が続き、新型コロナウイルス感染者の急増も影を落とす。世界で半導体不足が深刻になるなか、最大の供給源の台湾の停滞は、世界的なリスクにもなりかねない状況だ。
水も電力も人手も
まず台湾の頭を悩ませるのが一段と深刻化している水不足だ。当局である干ばつ対策本部の「干ばつ中央災害対策センター」は19日、今後も雨が降らない状況が続けば、6月1日から台湾北部の新竹市周辺で、取水制限を現行の15%から17%に引き上げると発表した。
新竹市は半導体大手の台湾積体電路製造(TSMC)の本社や主力工場、聯発科技(メディアテック)などが拠点を置く、台湾を代表する半導体の集積地だ。半導体生産への影響を極力避けるため、この地区は17%の取水制限にとどめるが、市内のその他の地域では1週間に2日間の断水を予定する深刻な状況だ。
中部の台中市でも同様の措置が取られる予定だ。台湾の半導体企業幹部は「こんな事態はかつてない。もし半導体生産が停止したら一大事になる」と話しており、緊張感が一気に高まってきた。
半導体は製造工程で大量の水が必要だ。TSMCの台湾域内の半導体工場では1日20万トン弱の水を使う。競技用の50メートルプールなら約80杯分に相当する量だ。台湾では昨夏から降雨量が極端に少なく、台中市で最大のダム「徳基水庫」の貯水率は現在1%。あと数日間で水が底を突く状況だ。
「まるでロックダウン」
ここにきて台湾企業を襲ったさらなる誤算は、新型コロナウイルスの感染者の急増だ。5月中旬以降、歯止めがかからなくなっている。台湾ではこれまで域内で感染者が1人見つかるのも珍しかったが、最近は8日間連続で300~500人(24日現在)の感染者が確認されている。
極端ともいえる感染急増に台湾人の警戒は強く、街は一気に静まり返った。台北市中心部で「台北晶華酒店(リージェント台北)」を運営するホテル大手、晶華国際酒店集団の潘思亮董事長は現在の状況について「台湾全土はすでにロックダウン(都市封鎖)のような状態だ。観光業や飲食業は瀕死(ひんし)の状況にある」と訴える。
コロナ感染の急増で、人の動きや物流が制限されることで、企業側は大きなダメージを被る。テレワークが急速に進み、連日30度を超える酷暑も重なり、家庭内の電力消費が急速に進んだ。もともと不安視された電力不足問題が、ここにきて一気に顕在化している。
感染者が急増した今月13日と17日、台湾全土は突然の大規模停電に見舞われた。17日には蔡英文(ツァイ・インウェン)総統も「非常に申し訳ない」と釈明に追われた。
ただ足元の状況も深刻で、25日も予備電力の当局予測は8.06%しかない。10%以下で点灯する「黄色信号」が連日続き、綱渡りの状況だ。現在、台湾で電力事業をほぼ独占する台湾電力の主力の火力発電所のうち4基が定期点検中。水不足で水力発電も制限されるなか、火力に約8割を頼る台湾では何かあれば再び大規模停電は免れない。
特に半導体業界は水だけではなく、電力消費も大きい。製造はすべて、空気清浄度を高めた「クリーンルーム」で行われており、多くの電力が必要なためだ。もし仮に電力供給が滞れば工場はすぐに停止し、世界の6割強の半導体製造を担う台湾からの出荷がストップし、世界に大きな打撃を与えかねない構図だ。
世界の旺盛な半導体などの需要に支えられ、台湾ではこの1年でも新工場や能力増強が相次ぎ、電力需要は格段に増えた。だが、肝心の電力インフラの整備が追いついていない。2025年までに稼働中の原子力発電所(実質稼働は4基)を完全停止させることをすでに決めてはいるが、事業者の間には不安視する声が少なくない状況だ。
世界各国から半導体の増産要請が舞い込み、業界の人材は足りず、人手不足も顕著になっている。TSMCは年内に過去最高の9000人の採用を予定するが、優秀な技術者を狙って欧米勢も参戦しており、台湾勢を苦しめる。半導体製造装置で世界大手の米アプライドマテリアルズ、オランダ大手ASMLも今年、台湾で数百人の採用を予定している。
台湾は半導体やサーバーなど輸出主導型の経済だけに、コンテナ不足や輸送価格の高騰も深刻になっている。足元で、コンテナ船の混載輸送(LCL)は欧州、米州向けともに1万ドルを突破し、価格は前年比で4~8倍に跳ね上がる異常ぶり。納期も遅れが目立つ。
進まぬワクチン確保
昨年来の経済好調から、ここにきてコロナ感染の急増など、何重にも重なるマイナス要因に台湾のムードは一気に暗転した。復活のカギはやはりワクチンだが、人口2360万人に対し現時点で確保できたのはわずか70万回分にとどまる。現在の接種率は世界最低レベルの1%だ。今後もワクチンの大量確保の正確な時期、調達の見通しは立っていない。
蔡総統は4月27日、水不足が最も深刻な台中市を視察し「非常に厳しい状況だ」と述べ、危機感をあらわにした。有効な手立てはまだ見つかっていないのが実情だ。
半導体など、世界があまりに依存しすぎたと警鐘が鳴らされる台湾。半導体のハイテクイメージとは裏腹に、脆弱なインフラという弱みもあぶり出された。今の台湾は「恵みの雨」をひたすら待つ、瀬戸際の状況に追い込まれている。
210603日経
政府は2日、月内に決める成長戦略の原案を公表した。経済安全保障の観点から半導体産業の国内誘致を進めるため政策を総動員する方針を示した。半導体は国際的な誘致合戦となっている。海外メーカーの誘致には半導体の国内需要づくりも不可欠で、幅広い戦略が必要だ。
同日の成長戦略会議(議長・加藤勝信官房長官)で提示した。与党との調整を経て、月内に閣議決定する。
原案では先端半導体の製造拠点について「他国に匹敵する取り組みを早急に進め、日本への立地を推進して確実な供給体制を構築する」とした。
政府によると、日本の半導体は6割超を輸入に依存する。特に台湾や中国への依存度が高い。米中対立などで国際的な供給網が滞り、必要な半導体が供給できなくなる事態を懸念する。
米半導体工業会によると、回路線幅が10ナノ(ナノは10億分の1)メートル未満でスマートフォンなどに使う先端半導体の製造能力は台湾が世界全体の9割超を占める。半導体は回路の線幅を細くするほど性能が高まる。
自動車の制御に使うマイコンは28ナノメートル品の普及が進むが、大手のルネサスエレクトロニクスが日本国内に持つ半導体工場が量産できるのは40ナノメートル品まで。このまま手を打たなければ半導体の海外依存は一段と強まる。
デジタル化の基盤となる半導体を経済安保の観点からも重視する米欧は先端半導体産業の振興に躍起だ。
米国は議会上院で審議中の「米国イノベーション・競争法案」で、米国内に工場や研究開発拠点を設ける企業に5年間で計390億ドル(約4.3兆円)の補助金を出すことを検討している。欧州連合(EU)は半導体を含むデジタル分野に今後2~3年で1450億ユーロ(約19兆円)を投資する方針を打ち出した。
日本にも半導体の開発などを後押しする基金があるが、規模は2000億円にとどまる。政府は成長戦略を踏まえ、資金支援を大幅に拡充する方針だ。政府・与党内には数兆円規模の巨額基金を求める声があり、今後調整を本格化させる。経済産業省幹部は「半導体はもはや食料やエネルギーと同じだ」と指摘する。日本の産業基盤を支える「国際戦略物資」と位置づけ、手厚く政策支援する。
国内立地を軌道に乗せるには、半導体の需要家となるデジタル産業の育成も欠かせない。半導体生産の自国回帰を進める米国では、アップルやマイクロソフトなど自国の巨大需要家の存在が半導体の供給網の立て直しへ下支えとなっている。
日本政府内からは「シリコンバレーのない日本に最先端品(ハイエンド)の半導体製造拠点は誘致しにくい。中級品(ミドルエンド)が限界かもしれない」との声も漏れる。
政府は需要創出のため、先端半導体を使う産業も育てる。高速通信規格「5G」や自動走行、スマートシティー、医療ロボットといった分野のデジタル化投資を後押しする計画だ。
日本の半導体メーカーには先端工場を運営するノウハウがない。英調査会社オムディアの杉山和弘氏は「日本政府の支援策はこれまで国内の企業や研究機関に閉じることが多かったが、海外勢を取り込む戦略が必要だ」と指摘する。
内閣官房幹部も「日本企業単独ではなく、海外企業との連合をめざしていく」と話す。経産省を中心に海外メーカーとも接触し、日本企業との連携を求めていく。経済安全保障上の観点から、米国など共通の価値観を持つ国や地域と政府間で調整し、一部の工程を日本に置くよう働きかけもする方針だ。
原案では半導体のほか、蓄電池、次世代データセンターの国内生産や拠点拡大に向けた集中投資を促す方針も示した。
同時に2050年の脱炭素社会の実現に向けた「グリーン成長戦略」の見直し案もまとめ、小型商用車の新車を40年までに全て電動車などに切り替える目標を盛り込んだ。
210614日経
2021年6月13日 2:00 [有料会員限定]
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世界最大の半導体受託製造会社(ファウンドリー)、台湾積体電路製造(TSMC)が米アリゾナ州の半導体工場建設に着手した。120億ドル(約1.3兆円)を投じるという計画を発表してから1年、魏哲家・最高経営責任者(CEO)が明らかにした。同社が米国に工場を設けるのは、この20年なかったことだ。
世界最大の半導体受託製造会社TSMCは米国工場に約120億ドルを投じる=ロイター
TSMCだけではない。米インテルも3月に、200億ドルを投じてアリゾナ州に2つの半導体工場を新設すると発表した。同社はすでに同州で大規模な工場を運営している。
TSMCとインテルの発表は、米国政府が中国への対抗策として、自前で半導体サプライチェーン(供給網)の構築を進めるさなかに行われた。自動車や電子機器における世界的な半導体不足も、これらの取り組みの背景にある。
大量の水を使用する半導体産業にとって、グランドキャニオンや不毛の砂漠で知られるアリゾナ州は、奇妙な選択に見えるかもしれない。しかし、水は最も懸念されていない条件の一つである。マッキンゼーのシニアパートナー、ビル・ワイズマン氏は「インフラで最も重要なのは、何をおいても電力だ。水が大きなコストになったことはない」と語る。
半導体メーカーは、長年にわたって効率的な水の使い方も学んできた。現在、インテルはアリゾナ州の工場で毎日900万ガロン(約3400万リットル)以上の水を再利用している。
専門家は、半導体関連企業の相互補完的な集積があることがより重要だ、と指摘する。ワイズマン氏は「半導体製造でコストの最適化を目指すなら、大きなエコシステム(生態系)が欠かせない。世界で競争するには、自社以外に10~15社の集積が必要だろう」と述べる。これには製造装置の更新や保守を行うメーカーから、化学薬品などの素材を供給する企業まで幅広い会社を含む。
TSMCの工場は、中国に小規模な工場が2カ所と、インテルの大規模な研究開発拠点に近いワシントン州キャマスにある以外は、すべて台湾だったのは、そういう理由だ。
アリゾナ州に半導体のサプライチェーンが存在しているのは、少なからずインテルのおかげである。
インテルは1980年にマイクロコントローラー製造をアリゾナ州チャンドラーの工場で始め、現在では同社にとって世界最大の工場になった。「アリゾナ州への投資は40年以上前からで、300億ドル以上だ」とインテルの広報は答えた。
アリゾナ通商局のデータによれば、同州では2万2千人以上が半導体製造で働いており、同分野の雇用数で全米4位だ。インテル以外にも、NXPセミコンダクターズ、オン・セミコンダクター、クアルコム、マイクロチップ、ブロードコムなど主要な半導体メーカーが州内に工場を持つ。
地政学もアリゾナ州に有利に働いた。TSMCが米工場の建設を決めたのは、トランプ政権下で米中の緊張が高まり、ハイテク産業のデカップリング(分断)が最高潮だったころだ。共和党の知事、ダグ・デューシー氏は、トランプ氏を2回の大統領選のいずれでも盟友として支持した。
バイデン大統領も中国依存を減らすという前政権の方針を引き継いでいる。ホワイトハウスで4月に開かれた半導体サミットで、バイデン氏は米国が半導体産業に「積極的に」投資し、「再び世界をリードする」つもりだ、と述べた。
それでも米国での半導体工場建設は、台湾より少なくとも2.5~3倍費用がかかるとみられる。そのため、補助金が重要になる。VLSIリサーチの半導体アナリスト、ダン・ハチソン氏は「過去30~40年間に半導体製造が米国外に流出し、半導体受託製造会社が非常に成功した理由は、半導体企業が米国で製造する経済的な動機がなかったからだ」と解説する。
台湾と韓国で半導体産業が成功したのは、多額の投資を行い、工場の建設手続きを企業のために整備した政府支援のおかげだ、とハチソン氏は付け加えた。アリゾナ州を米国の次の半導体の中心地にするためには、連邦や地方政府の支援が必要不可欠になる。
TSMCが半導体新工場を建設するアリゾナ州の州都フェニックスでは、市がTSMCのため、公共インフラ改善に2億500万ドルを投資すると20年末に発表した。これには、道路や歩道、街灯の設置など環境整備に投じる6100万ドルを含む。市によれば、さらに3700万ドルを水インフラの改善に、1億700万ドルは下水道と排水処理システムに使われるという。ただ、州との補助金に関する交渉はこれからだ。
また、米国がTSMCのような企業が必要とする労働力を供給できるかどうかという問題もある。過去数十年、半導体製造がアジアに移ったため、半導体工学に関連する米国の大卒者は減少した。TSMCの創業者、張忠謀(モリス・チャン)氏も4月に台北で開かれた業界の討論会で「米国は専門の人材が不足しており、製造人員を大規模に集める能力にも欠ける」と語っている。
210615日経
対中国、台湾・インフラで結束 途上国の信頼が課題に
2021年6月15日 2:00 [有料会員限定]
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主要7カ国首脳会議(G7サミット)は13日、共同宣言を出して閉幕した。台湾の重要性を明記し、新しいインフラ支援の枠組みを創設するなど「対中国」で結束した。トランプ前政権下で傷ついた自由主義や資本主義への信頼を取り戻すため、民主主義諸国のG7が再起動する。(関連記事総合2、政治・外交、経済・政策、国際面に)
宣言は1975年のランブイエ以来、サミットの歴史で初めて「台湾海峡の平和と安定」と記した。日本政府関係者によると、菅義偉首相とバイデン米大統領が欧州諸国の慎重論を押し切って盛り込んだという。
日米がこだわったのは香港の先例があるからだ。中国は2020年6月末に、香港国家安全維持法を施行し、民主化デモを抑え込んだ。米国が「自国第一主義」を掲げるトランプ前政権で、国際秩序への関与が乏しかった時期にあたる。
米インド太平洋軍の幹部は米議会で「6年以内に中国が台湾に侵攻する可能性がある」と言及している。香港に続き台湾まで力による統合を許せば、自由や民主主義の世界秩序は崩壊しかねない。
バイデン氏は宣言を出した後の記者会見で「米国が戻ってきたと熱狂を感じた。私たちは専制主義の政府と競争している」と語った。
19年のサミットはトランプ氏と欧州首脳に亀裂が入り、宣言はわずか1枚だった。今回は25枚に上る本格的な宣言だ。
中国への言及は台湾だけではない。「公正や透明性を損なう」「非市場主義」と表現し、中国の広域経済圏構想「一帯一路」に対抗するインフラ支援策を発表した。新疆ウイグル自治区や香港の人権や自由の尊重も求めた。
国際社会や経済への責任も明確になった。新型コロナウイルス禍にはワクチンを10億回供与して、22年までにパンデミック(世界的流行)を終息させると約束した。米大統領がバイデン氏になり「対中国」でG7がまとまった。
G7は旧ソ連を仮想敵に西側の民主主義国家で発足した。東西冷戦に西側が勝利すると、一時はロシアも加えた。
世界経済でG7が占める割合は1987年の7割からいまは4割。中国の2020年の名目国内総生産(GDP)は14.7兆ドルと米国の7割に迫る。理念は薄れ、経済力も落ち「G7不要論」も出た。
スウェーデンの調査機関によると19年に民主主義国・地域は87で、非民主主義が92と18年ぶりに上回った。G7は経済でも理念でも、世界の多数派とはいえない。
かつては非民主的な統治をすればG7を中心とする国際社会の制裁を受けた。いまは巨大な経済力を持つ中国が後押しし、権威主義や国家資本主義が世界に広がる。
5月に日本経済新聞社が主催して開いた第26回国際交流会議「アジアの未来」。カンボジアのフン・セン首相は途上国へのワクチンの供与に関して「米国から反応はない。中国から支援を受けているが他の国は送ってくれたか」と訴えた。
新型コロナ禍ではワクチン外交でもマスク外交でも中国が先行し、G7各国は自国内の接種を優先して後れをとった。今回の宣言でG7が国際貢献を約束しても、途上国や新興国からの信頼を回復するのはこれからだ。
冷戦下のソ連とは違い、中国はG7各国とも密接な経済関係があり、切り離すことはできない。
中国は14日、大使館報道官の談話で「米国など少数の国が陰険であくどいことがあらわになった。人為的に対立をつくり時代の流れに逆行している」と批判した。
G7以外を巻き込むなら、20カ国・地域(G20)や世界貿易機関(WTO)などで賛同者を広げる必要がある。国際舞台で自由や民主主義、資本主義の再生を示せるか。G7が試されている。
210616日経
衆院の9月解散をにらみ、政府は経済を下支えする追加策の検討に入る。新型コロナウイルス禍の長期化で打撃を受けている事業者への支援が軸となる見通しだ。脱炭素に向けた事業やデジタル化など成長分野を支援する政策も想定している。ワクチンの普及が遅れ、先進国間で出遅れた経済回復を急ぐ。(1面参照)
菅義偉首相は夏にも経済政策をとりまとめ、衆院選の選挙公約として訴える。各省庁は18日に閣議決定する成長戦略に向けて今後必要な政策を整理しており、一部が盛り込まれる可能性もある。
新型コロナ禍では飲食や宿泊など特定の業種で業績の悪化が目立つ。追加策は事業を継続したり、業態を転換したりする際の支援策が軸になりそうだ。移動制限などで苦境にあえぐ観光業界では政府の支援策「Go Toトラベル」の早期再開を求める声が強い。ワクチン接種が広がり、再開に見通しがつけば旅行需要喚起とあわせた観光のてこ入れ対策も想定される。
2020年の日本人の泊まりがけの国内旅行者はのべ1億6070万人で、前年より48%減少した。観光業界の経営は厳しさを増している。Go To関連予算は20年度補正予算などで計2.7兆円を計上。このうち県内旅行支援など追加策に振り向けた額を除いても約1兆円が残る。国土交通省はワクチン接種の進捗を踏まえ、20年12月以降停止しているトラベル事業の再開時期を探る。
デジタル分野では半導体産業の国内誘致策が検討されそうだ。半導体はスマートフォンや自動運転車などデジタル時代の製品に不可欠となっている。その供給網の強化は主要先進国の喫緊の課題になっており、中国は10兆円規模、米国は4兆円を超える支援を検討している。日本の基金は2000億円規模にとどまっており、政府・与党内には「兆円規模」の支援を求める意見がある。先端半導体の製造ノウハウを持つ海外メーカーの国内誘致のほか、日本企業との連携も進める。
情報を処理・保存するサーバーなどの通信機器を集約したデータセンターの国内誘致策も課題だ。国内外の事業者による新設を資金支援で後押しする案もある。企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)の加速や高速通信規格「5G」の普及をにらみ、インフラとして整備を急ぐ。
脱炭素に向けた支援策では燃料電池車や電気自動車(EV)の普及拡大に向け、インフラ整備を検討する。成長戦略の原案は30年までに1000基程度の水素ステーションを、電気自動車向けでは急速充電設備を3万基設置するとした。再生可能エネルギーの導入拡大に向けた送電網の増強なども盛り込まれた。
政府は4月、30年度までに温暖化ガスを13年度比で46%以上削減する目標を決めた。従来の対策だけでは達成できない。電力の脱炭素化はもちろん、家庭やオフィスで省エネ性能を高めるための体制づくりが急務だ。
こうした経済回復策の土台となるのが、ワクチンの確保や医療体制の強化といった感染症への基本的な対策だ。
新たな変異ウイルスや将来の感染症に備え、政府は国産ワクチン開発への支援を強化する。アジア各国と協力して国内外での治験の枠組みを整備する。同時に治験結果をもとに迅速に承認できる制度や、製薬会社が投資を回収できるように政府がワクチンを買い上げる仕組みも検討する。
病床の確保は現在も課題で、新型コロナの感染の波が拡大する度に逼迫が深刻な問題となった。感染者を受け入れる医療機関の経営リスクを軽減するために、診療報酬や補助金などを含めて病床確保を引き続き支援する。コロナと闘いながら、出遅れを取り戻すためにやるべきことはたくさんある。
210616日経
日本の半導体の実装技術が脚光を浴びている。半導体素子の微細化が難しくなるなか、半導体チップを積み重ねて性能を高める「3次元積層技術」の重要性が高まっているためだ。日本にはイビデンや芝浦メカトロニクス、JSRなど高度な技術力を持つ装置・素材メーカーが集う。台湾積体電路製造(TSMC)も日本で最先端の積層技術の共同開発に乗り出した。
TSMC子会社、TSMCジャパン3DIC研究開発センター(横浜市)は、イビデンやJSR、ディスコなど日本の半導体関連の有力企業21社を中心とした共同開発体制を整えた。5月31日、TSMCの誘致を後押ししてきた経済産業省がパートナー企業を公表すると、株式市場で関連企業の株価が軒並み上昇した。
茨城県つくば市で共同開発するのは、新しい3次元積層技術だ。半導体チップを立体的に接続し、高速通信や省電力化を実現する。2次元的に設計を工夫する微細化の限界を超えて、性能を高められる。
チップ間のデータ移動に必要なエネルギーを約1000分の1に減らせ、システム全体の消費電力を大幅に削減できる。データセンターの省電力化や、人工知能(AI)の性能向上が期待される。TSMCをはじめ、米インテルや韓国サムスン電子など世界の名だたる半導体メーカーが開発にしのぎを削る分野だ。
3次元積層に必要な要素技術の多くを持つのが日本企業だ。「後工程」といわれる製造プロセスで求められる技術領域で、ウエハーに回路を形成する「前工程」を経て、チップに切り分け、電極と接続し、樹脂で封止する技術などを指す。
TSMCは日本での研究開発拠点の設立を2月に発表したが、経産省幹部は「イビデンがいなければTSMCを日本に呼べなかった」と振り返る。半導体受託製造(ファウンドリー)世界最大手のTSMCですら、最先端の3次元積層技術の実現には日本企業の後工程の技術が欠かせない。
半導体のチップや基板を3次元に積層して直接接続する必要がある。チップや基板の細かい端子を高い精度で位置合わせし、さらに生産性や排熱性を高めるといった総合的なものづくり力が求められる。TSMCがパートナーに選んだのは、半導体の実装や材料技術でトップ級の実力をもつ企業ばかりだ。
チップを切り分けるダイサーでディスコは約7割のシェアを占める。チップと基板を接続する組み立て機(ボンダー)では、芝浦メカトロニクスが先端パッケージ向けの装置を手掛ける。
半導体チップを実装する高機能なパッケージ基板はイビデンや新光電気工業の独壇場で、インテルと長期にわたる研究開発(R&D)の実績がある。製造工程で使う感光剤では、JSRや東京応化工業など日本勢が世界シェアの大半を占める。
TSMCが日本に研究拠点を構えることで、新型コロナウイルスによる移動制限や、国境をまたぐ材料の輸送手続きが不要になる。中小企業の材料メーカーとの協業も進めやすくなり、R&Dを底上げできる。
3次元積層技術が注目されるのは、微細化技術の伸び悩みがある。回路の集積度を高めて性能を上げる微細化は改善の余地が限られ、投資に見合う成果を得にくくなった。集積度が18カ月で2倍になるという「ムーアの法則」は過去のものとなり、インテルなどは微細化のロードマップを何度も先延ばししている。
一方で注目されるのが、3次元積層やセンサー融合など微細化以外の方法で性能を高めようという「モア・ザン・ムーア」の考え。実現のカギを握るのが後工程だ。東京理科大大学院の若林秀樹教授は「後工程の付加価値はこれから高まり、日本は潜在能力を生かせる」と語る。
ひとつは、半導体需要が拡大する自動車やロボット産業が集積している点だ。これらの分野では用途に最適化した専用半導体が求められる。顧客ニーズに応じて素早く開発できる地の利がある。
3次元積層技術の第一人者である東京大学の黒田忠広教授は、後工程の技術が高度化すれば、「前工程であるウエハー加工の段階へ展開できる」と語り、日本が半導体製造で復活する足掛かりになると期待する。
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【徹底図解】超・半導体時代を制する「東京エレクトロン」の大戦略
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半導体不足の影響 自動車だけでなくカーナビなどにも | NHKニュース
210610日経
経済産業省は高速通信規格「5G」の性能をさらに高めた「ポスト5G」向けの半導体開発のため、キオクシアとソシオネクスト(横浜市)に計100億円を拠出する。工場のセンサーなどから集めた膨大なデータを記憶する大容量の半導体メモリーの開発を後押しする。政府は重要性が高まる先端半導体を国内で製造する体制づくりを急いでいる。
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次世代半導体素材「窒化ガリウム」は社会をどう変えるか|ニュースイッチ by 日刊工業新聞社
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7月の輸出、37.0%増 自動車や半導体関連が好調 | 共同通信