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I'm into You / SHE'S

 アルバム『Memories』に起承転結があるとすれば、これまでの2曲が「起」としてアルバム全体の印象を伝える導入部分で、そこからの広がりと深まりを見せてくれる「承」の入り口がこの『I'm into You』だと思う。

 個人的には、今作の中で最も「頭をからっぽにしたまま聴ける曲」がこの『I'm into You』だと感じている。なぜなら、耳に飛び込んでくる全ての音が楽しすぎて、反射的にノリノリになってしまうからだ。そのため、「時間も手間もかけられないのでとりあえずアルバムの中でも間違いない1曲だけ聴きたい」という人がいるなら、私はこの曲をおすすめする。きっとあなたにとってヘビロテしたくなるお気に入りの一曲になるし、そのうち他の曲も聴きたくてウズウズしてくるはずだ。

 高速のドラムから始まるこの曲は、イントロからすでに思わず踊りだしたくなるような疾走感に溢れている。ギターやシンセベースの音の動きも聞こえやすいため、全体的に楽器がそれぞれにしゃべっているかのようなにぎやかで楽しい印象になっていると思う。そんな様々な音がサビで揃い、ひとつになって歌っているような感じも好きだ。楽器の音だけではない。目覚まし時計のアラーム音やクラップ、コーラスも左右から次から次へと飛び込んでくるので、これらのワクワクする音たちはイヤホンやヘッドホンで堪能することを全力でおすすめする。

 もちろんボーカルも素晴らしい。英詞の割合が多く韻が踏まれている部分もあることで、耳への馴染み方がとにかく良い。音の響きを重視した作曲がなされるSHE'S楽曲の特長が、これでもかというほどに表れている。例えば、1番のBメロでは「何にもない(nai)」「笑っていたい(tai)」「高い(kai)」「硬い(tai)」「持てない(nai)」と、たった数秒だけでこの数の韻が踏まれている。英詞部分にも、1番と2番で「Take up」「Wake up」というような韻がいくつもみられる。ひとつひとつのフレーズを丁寧に置いて詞を聴かせるような歌い方もできるボーカルの竜馬さんが、この曲では音の気持ちよさを味わわせるような歌い方に振り切っているのも良い。

 80'sのアメリカやイギリスの音楽を表現した(https://spice.eplus.jp/articles/331412/amp より)というが、確かに洋楽に全く詳しくない私が聴いても、メンバーの好きそうな洋楽の風味を感じた。そんな80'sの感じは存分に味わえつつ、普段洋楽に馴染みのない人でも抵抗感なく楽しめるポップさもあり、しっかりとSHE'Sの音楽として昇華されているのが『I'm into You』だと思う。

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