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Lamp / SHE'S

 アルバム詳細が公開されてはじめて『Lamp』という曲名を見たとき、私は穏やかで優しくて、ささやかだけどきらきらとあたたかい灯りを想像した。それこそ『Tonight』のMVや『aru hikari』から受ける印象に近いような。

 でも、実際に曲を聴いたときの『Lamp』には、もっと切実な感じがあった。世界中で起きているいろいろな問題を受けて書かれた曲だというこの曲には、確かに「救いのないくらい汚れた現実」「形のないくらい歪んだ現実」といった、シリアスな印象を残す歌詞も多い。でも、それだけではないような気がする。

 ではなぜ、私は『Lamp』に切実な感じを受けたのか。それは、『Lamp』で歌われている内容を、SHE'Sというバンドの姿と重ねてしまったからだ。

 SHE'Sは、そのときの流行りや世間へのウケの良さには靡かず、ピアノロックバンドという肩書きに縛られることもせず、基本的にはその時に自分たちがやりたい音楽を丹精込めて作る人たちだ。また、人を攻撃したり貶したりするのではなく、大事な人を守れるような優しくあたたかい音楽を、と活動し続けている人たちだ。私はこのスタンスが大好きで心から尊敬しているし、私もこういうマインドを忘れない人間でいたいなと思う。でも、それを続けるのはきっと簡単ではないと思っていたから、「作って歌って 希望が見えないと 腐りそうだけれど」という歌詞はやっぱり沁みた。
 それでも、多くの人にとっての灯りであるSHE'Sという場所を、13年間守り続けてくれている。決して明るいだけじゃない人生のなかで、道に迷ったときに明るく輝いて目印となる場所として、心が折れそうなときにふらっと寄り道できる場所として、私たちのことをいつでも待っていてくれる。
 思い返せば、SHE'Sが歌う”光”も、いつもそうだった。『Voice』の「無限に思える時間の流れと その中で光る灯台のように」や『Night Owl』の「一つの消えない街の光 霧がかってく絶望に踏み出したら 君がいてくれた」などがそうだ。これらの歌詞を聴くたびに、果てしなく長い一本道に立つひとりの人間と、その道の先で待っている小さな灯りを想像した。私の人生に大きな歓びをくれる、SHE'Sという灯りのことを想った。だからこそ、「暗い世界にも歓びを与え 人を愛している 灯となって」という『Lamp』の歌詞を聴いたときには、自然と彼ら自身の姿が浮かんだのだ。作詞の意図とは違うかもしれないけれど、そう感じずにはいられなかった。

それでも愛して
あなたの事 この世界も
それでも愛して
綺麗事だけど 心から願うの

『Lamp』


 あなたには、煌々と輝いてはあなたの人生に歓びを与える、灯のような存在があるだろうか。もし思い当たらないとしたら、この『Lamp』という曲を聴いてほしい。かつて私がそうだったように、SHE'Sの鳴らす音楽はあなたのためだけの灯になってくれるはずだから。


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