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No Gravity / SHE'S

 前曲『I'm into You』に続いて片思いのもどかしさが歌われているが、前曲よりも大人なお洒落さやほろ苦さが増しており、夜が似合う楽曲になっている。前曲『I'm into You』がパキっとした手触りのある音なのに対して、『No Gravity』はタイトルの通り無重力を感じさせるようなふわふわとした音。
 聴いていると、海に浮かびながらぷかぷかと漂っているような浮遊感や、薄い膜に包まれて自分の輪郭がぼんやりとしていくような気分になる。夢、シャボン玉、惑星…というような、少し不思議で曖昧な印象のある単語が似合う曲だと思う。

 高音と低音を行き来するサビが聴いていてとても心地よい。竜馬さんのハイトーンボイスは柔らかく透き通っていて、すっと聞き手の耳に入り込んでは全身へと染みわたっていく。

 一番の聴きどころはなんといっても落ちサビだ。幾重にも重なる主旋律のハーモニーとクラップ、のびやかなコーラスが、ゴスペルの空気感を醸し出している。この楽曲で歌われているのは、相手に対して素直になれない自分自身やそれでもありのままの自分で相手と通じ合いたいという願い、その現実と理想とのギャップから生じる葛藤だろう。そんな主人公の心の動きの全てを讃えるような曲の終盤には、ミュージカルのような壮大さやハッピーなオーラがある。

 片思いの感情を歌った曲やお洒落な雰囲気が特徴的な曲はもちろん山ほど存在する。しかしそうした曲の中で、正体の掴めないような不思議な雰囲気から視界が鮮明になり世界が広がっていくような壮大な雰囲気へと展開していく楽曲は、なかなか見かけないのではないだろうか。多くの人が共感できる歌詞とお洒落な曲調の中に、キラっと光るSHE'Sらしさを感じられる一曲になっている。


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